同名書(双葉社、2002/双葉文庫、2004)所収。昨年(2006年)にTVドラマ化されたものをたまたま見たけれども、全体的に薄暗いうえに“朝顔”の謎がわかりにくいしで、ちょっとひどい出来だったような。映画でもTVドラマでも原作を先に読んでいると、たいていがっかりするものだから、この場合も仕方がないのかもしれないけれど。原作は語り口にユーモアもあるし、もっとずっと面白いです。えーと、広い意味でミステリー小説なので、以下、ネタバレにはいつも以上に気をつけてください(わずかでも内容を書かないと感想が書けないので…)。

ひと言で言ってしまうと、ボーイ・ミーツ・ガールな青春小説、という感じ? 大学に落ちて予備校が始まるまでのちゅうぶらりんの時期、ジョギングの途中、主人公の三浦信也は、土手で絵を描いている蘇芳紅美子(ガールというよりは女性)を見かけるようになる。ある日――よくある話かもしれないけれど、風に飛ばされた彼女の絵を拾ったさいに軽い怪我をし、その手当てをするために近くにある彼女のアパートへ連れて行かれる。それで、なんだかんだで、最後には青春小説の常として(?)失恋、ということになる。

信也は、紅美子の下の部屋を借りるのだけれど、いくら老人ばかりが暮らす格安おんぼろアパート(火災保険にも入っていない)であっても、自宅の近くに勉強部屋というのはちょっとうらやましいかな。予備校って(もちろん学校によるだろうけれど)自習室が席取り合戦みたいなことになっている場合があって、友達とか知り合いとかがあまりいないと、取っておいてもらうこともできないし、1人では気楽に利用できないことも多いような(少なくとも私の場合はそうでした)。でも、信也くん、もったいないな、ぜんぜん勉強していない(汗)。あと、お姉さんが出産のために実家に戻っている、というのは、浪人生が主人公の小説を読んでいるとたまに見かける気がする(新井素子『ハッピー・バースディ』とか)。18歳、19歳くらいだから、上のきょうだい(兄/姉)がいると時期的に重なりやすいのかもしれない。

あと、信也くんは心理学が志望らしいのだけれど、これも小説を読んでいるとときどき見かける(ゆくゆく取りあげられたら取りあげたい)。最近はそうでもないような気がするけれど、はやりの学問というか、そういうことなのか、心理学。ほかにパターン的なものとしては、紅美子はフリーのデザイナーらしいのだけれど、キャラクターを描き分けやすいからなのか、主人公以外の主な登場人物が広い意味で美術系の人、というのは、浪人生小説に限らずよくあるケース。主人公自身が本当は画家になりたい(美大に進みたい)みたいなことも、よくある。
 

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