アルファポリス文庫、2006。『Separation』(アルファポリス、2002)に収録されていたものが、文庫化のさいに独立したものらしい。時間的にいえば、高校生から社会人になって数年くらいが描かれている。いちおうページ数的には浪人生の部分がいちばん長い。なんていうか、涙を誘うような湿っぽい小説です。(読んだことがないけれど、同じ作者の『いま、会いにゆきます』とか『恋愛写真』とかもそうなのかな。)

「ぼく」(井上悟)には彼女(五十嵐裕子)の心の声が聞こえる。一方的に聞こえるのはちょっとフェアではない気がするけれど、それはそれとして。よく受験生どうしで付き合っていると、男の子は落ちて女の子だけが受かるみたいな話を聞くけれど、この小説ではそうなっている。彼女だけが街を離れて東京へ行ってしまう。というか、「ぼく」が大学に落ちなければ(もちろん結果論だけれど)この2人の運命は全く違ったものになっていたはず。たかが大学受験、されど大学受験(?)。

この小説の場合、相手の声が聞こえたりするので、たんなる遠距離恋愛がうまくいかない、みたいな話とも違っているのだけれど、でも、そういう感じと言えばそういう感じかもしれない。だんだんと気持ちが離れていく。恋敵というか、ライバル的な存在として、向こうのサークルやアルバイト先の先輩が出てくるのも(現実と小説とを問わず?)パターンか。この小説ではバイト先(フィットネスクラブ)の会員になっている大学3年生(高沢さん)が登場。浪人生から見ると大学生はひとまず、ちょっと大人に見える、のか。

受験勉強については、地元にも予備校はあるらしいけれど、通ってはいないようだ(いわゆる宅浪)。あと、精神的なことだけではなくて、体に病気を抱えていたりすると、勉強も大変そう。ちなみに、主人公は結局、地元の新設校に補欠合格。
 

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