宮本輝 「星々の悲しみ」
2007年2月17日 読書
同名書(文藝春秋、1981/文春文庫、1984)所収。
4月の半ば、予備校が始まってまだ4日目、図書館へと足を運ぶ。そこにいた女子大生がきっかけの1つになるのだけれど、「ぼく」(志水)は、ロシア文学(とフランス文学)の棚のすべての本を読もうと計画する。もちろん受験勉強なんて放擲(ほうてき)である(まだ4日目なのにね…)。その同じ図書館にいたことから、同じ予備校に通う2人の男の子(有吉・草間)と仲良くなる。喫茶店に掛かっていた20歳で亡くなった画家の描いた絵「星々の悲しみ」を盗み出したり、……というか、あらすじはこれくらいでいいでしょうか。
志水くん、3ヶ月くらい経ってから夜は勉強するようにはなるのだけれど、それでもふつうの受験生にありがちな(あるはずの?)必死さがあまり感じられない。医学部志望の友人2人はちゃんと勉強しているのに。
<勉強をしなければならないときがくると、きまってどうしようもなく小説を読みたくなったし、読書に疲れてくると、単語集や数学の参考書に心を移してしまうのである。つまりノルマから絶えず逃げていたい人間で、努力するための努力すらできない性格であるらしかった。>(文庫、p.43)
私もそうだったけれど、中学・高校のとき、定期テストの前になると、巻数がけっこうある漫画を1巻から読み始めてしまうとか、机のあたりの掃除をし始めてしまって、それが終わったころには勉強する気力がなくなっているとか、……まぁ、よくある話といえばよくある話かもしれない。ただ、この人の場合、読書がノルマ(自分が立てた計画)になっていて、それにいきづまったらまた勉強に戻ってこれるのだから、むしろハッピーなことかもしれない。努力うんぬんのほうは、心身ともに健康であれば、本来、意志の力でどうにでもなるものではないだろうか(と、言えるのはやっぱり他人事だからだろうか)。
主人公たちが通っているのは(主人公はほとんど通っていないわけだけど)、大阪の梅田にある予備校とのこと。1965年の話らしいけれど、それほど昔な感じはしない。ややゆるめな語り口が逆に今風なのかなんなのか。物語は最後、12月くらいまで進む。
4月の半ば、予備校が始まってまだ4日目、図書館へと足を運ぶ。そこにいた女子大生がきっかけの1つになるのだけれど、「ぼく」(志水)は、ロシア文学(とフランス文学)の棚のすべての本を読もうと計画する。もちろん受験勉強なんて放擲(ほうてき)である(まだ4日目なのにね…)。その同じ図書館にいたことから、同じ予備校に通う2人の男の子(有吉・草間)と仲良くなる。喫茶店に掛かっていた20歳で亡くなった画家の描いた絵「星々の悲しみ」を盗み出したり、……というか、あらすじはこれくらいでいいでしょうか。
志水くん、3ヶ月くらい経ってから夜は勉強するようにはなるのだけれど、それでもふつうの受験生にありがちな(あるはずの?)必死さがあまり感じられない。医学部志望の友人2人はちゃんと勉強しているのに。
<勉強をしなければならないときがくると、きまってどうしようもなく小説を読みたくなったし、読書に疲れてくると、単語集や数学の参考書に心を移してしまうのである。つまりノルマから絶えず逃げていたい人間で、努力するための努力すらできない性格であるらしかった。>(文庫、p.43)
私もそうだったけれど、中学・高校のとき、定期テストの前になると、巻数がけっこうある漫画を1巻から読み始めてしまうとか、机のあたりの掃除をし始めてしまって、それが終わったころには勉強する気力がなくなっているとか、……まぁ、よくある話といえばよくある話かもしれない。ただ、この人の場合、読書がノルマ(自分が立てた計画)になっていて、それにいきづまったらまた勉強に戻ってこれるのだから、むしろハッピーなことかもしれない。努力うんぬんのほうは、心身ともに健康であれば、本来、意志の力でどうにでもなるものではないだろうか(と、言えるのはやっぱり他人事だからだろうか)。
主人公たちが通っているのは(主人公はほとんど通っていないわけだけど)、大阪の梅田にある予備校とのこと。1965年の話らしいけれど、それほど昔な感じはしない。ややゆるめな語り口が逆に今風なのかなんなのか。物語は最後、12月くらいまで進む。
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