中央公論社、1977/中公文庫、1980。<薫くんシリーズ>(赤白黒青4部作)の4作目。主人公の「ぼく」(庄司薫)が浪人生であるようなないような、そんな感じなので、自殺した(いま病院で生死の境をさまよっている)高校のときの同級生、高橋くんのほうも、浪人生であるような、ないような……そんな状態なのかもしれない。それゆえ(?)浪人生が自殺する小説、としてはあまり典型的な例にはならないかもしれないけれど、いちおう取りあげておきます。

時は1969年7月20日、場所は東京の新宿。物語は、薫くんがいろいろな人と会って(向こうからやってきたり、こちらから出向いたりして)高橋くんの自殺の原因というか、自殺に至るまでの過程を知っていく、というような感じ。「青髭」って誰なのか、という謎もあったりする。←こう書き方をすると推理小説にありがちなストーリーみたいだけれど、たぶんそうではなくて。なんていうか、主人公の話自体もそうだけれど、抽象的なことをながながと語る登場人物が多くて、個人的には何を言っているのやら難しくて、さっぱり理解できないことも多かったです、読み終わってしばらくしてみたら、自殺の原因って結局、どんなだったっけ? みたいな状態に(涙)。文章自体は読みやすくていいのだけれど、言いたい、ことみたいなことは、論文調で書いてもらったほうがまだ理解できるかもしれない。……それ(=私の頭の悪さ)は措いておいて。

高橋くんのケースも結局、複雑であったわけだし、最初のあたりで「浪人した東大受験生の自殺ってことならわりと平凡な話だけれど」(古いのほうの文庫、p.11)みたいなことが言われているけれど(本当かよ?)、それがデータ的に本当であったとしても、「受験勉強(過剰なそれ、成績の伸び悩み、合格への不安など)→受験ノイローゼ→自殺」みたいな、単純なケースというか短絡思考的なケースは、小説と現実とを問わず、あまりないのではないかと思う。少なくとも、小説のほうではあまり見かけないかな。
 

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

この日記について

日記内を検索