川西蘭 「春一番が吹くまで」
2007年3月27日 読書
同名書(河出書房新社、1979/河出文庫、1984)所収。ボーイ・ミーツ・ガールな青春小説というか、そんな感じである。小説としてはいまいち面白くない気がするけれど(主人公の頭の悪い皮肉っぽさ(?)とか、人を馬鹿にした感じがちょっと癪に障る)、予備校についてはけっこう具体的に書いてあって興味深いというか。
「僕」(ケン=藤村健)は高校3年生。母親から夏休みくらい予備校に通ったら、みたいなことを言われて、上京して予備校(有名なところらしい)に通うことに。わざわざ下宿を借りてで20日近くも、らしい。それで日程の半分を消化した日、午後の授業が始まるのを屋上のベンチで座って待っていたところ(自殺防止のために入れないとかではないようである、屋上)寝てしまい、慌てて授業がある別の校舎へ行き、エレベーターに飛び乗って、そこで女の子(ユウコ=縞崎夕子)と出会う、みたいな感じ。そのユウコの元カレとして出てくるのが、浪人生の佐藤くん。やっぱり3浪ともなると、医学部志望に設定しないと(小説としては)ダメなのかな、家は「でかい病院」とのこと。アパートというよりもマンションのようなところで1人暮らししている。伊井直行『草のかんむり』の主人公がわりと明るかったのに対して、こちらのほうがふつうだろうか、暗いというか内省的な感じである。でも、自分のことをわかってくれているらしい今カノのような存在(弥生、不思議系?)がいたりもする。
ここは「小説にみる浪人生」というテーマのブログなので(嘘)、浪人生以外はどうでもいいのだけれど、大学受験に関係してもう少し。高校生のケンくん、知り合ったその日にもうやっちゃってる(言葉を選んだほうがよかったかな)わけだけれど、その前に連れ込んだ下宿でのユウコとの会話(レコードは実家から送って置いてある)、
<「(略)ところで、変な話だけれど、ブラームスの方にもう一曲入ってるんだ。何だと思う」/「何なの?」/「大学祝典序曲」/「大学祝典序曲ってあの」/「そう、ラジオ講座のテーマソング。参ってるんだよ、それで」>(文庫、pp.55-6)
。どう参っているのかわからないけれど、パブロフの犬みたいな感じかな、勉強せねばという気分になるのかも。ちなみに、志望大学は、ケンくんはいちおう国立の法学部、ユウコは私立の理系らしい。
あと、授業については、「予備校の授業は、僕の想像どおり事務的、よく言えば合理的に進められた」(同、p.12)と「僕」は語っていて、特に感慨もないようだ。後半のほう、浪人生どうし(弥生と佐藤)の会話がちょっと面白いかな(pp.85-6のへん)。大学と掛け持ちしている、世界史のおじいちゃん先生の(夏期講習の)最後の授業で、生徒が机の上にアイスティーを置いておいたら、感激してすごかった、みたいな話を弥生が言い出して、
<「(略)君たちの実力は手に取るように分る。君たちのような人材なくして何の大学か。明日の日本は君たちが作るんだ、って。すごい勢いだったよ」/「そりゃ、あれじゃないかな。学生運動が華やかだった頃にさんざんつるし上げられて、優しさに飢えているんだよ」>(同、p.86)
20年以上も前に書かれた小説、ちょっと時代を感じるというか。学生運動で嫌な思いをした大学教師で、現在も予備校の教壇に立っている人はかなり少なくなっているのではないかと思う。
「僕」(ケン=藤村健)は高校3年生。母親から夏休みくらい予備校に通ったら、みたいなことを言われて、上京して予備校(有名なところらしい)に通うことに。わざわざ下宿を借りてで20日近くも、らしい。それで日程の半分を消化した日、午後の授業が始まるのを屋上のベンチで座って待っていたところ(自殺防止のために入れないとかではないようである、屋上)寝てしまい、慌てて授業がある別の校舎へ行き、エレベーターに飛び乗って、そこで女の子(ユウコ=縞崎夕子)と出会う、みたいな感じ。そのユウコの元カレとして出てくるのが、浪人生の佐藤くん。やっぱり3浪ともなると、医学部志望に設定しないと(小説としては)ダメなのかな、家は「でかい病院」とのこと。アパートというよりもマンションのようなところで1人暮らししている。伊井直行『草のかんむり』の主人公がわりと明るかったのに対して、こちらのほうがふつうだろうか、暗いというか内省的な感じである。でも、自分のことをわかってくれているらしい今カノのような存在(弥生、不思議系?)がいたりもする。
ここは「小説にみる浪人生」というテーマのブログなので(嘘)、浪人生以外はどうでもいいのだけれど、大学受験に関係してもう少し。高校生のケンくん、知り合ったその日にもうやっちゃってる(言葉を選んだほうがよかったかな)わけだけれど、その前に連れ込んだ下宿でのユウコとの会話(レコードは実家から送って置いてある)、
<「(略)ところで、変な話だけれど、ブラームスの方にもう一曲入ってるんだ。何だと思う」/「何なの?」/「大学祝典序曲」/「大学祝典序曲ってあの」/「そう、ラジオ講座のテーマソング。参ってるんだよ、それで」>(文庫、pp.55-6)
。どう参っているのかわからないけれど、パブロフの犬みたいな感じかな、勉強せねばという気分になるのかも。ちなみに、志望大学は、ケンくんはいちおう国立の法学部、ユウコは私立の理系らしい。
あと、授業については、「予備校の授業は、僕の想像どおり事務的、よく言えば合理的に進められた」(同、p.12)と「僕」は語っていて、特に感慨もないようだ。後半のほう、浪人生どうし(弥生と佐藤)の会話がちょっと面白いかな(pp.85-6のへん)。大学と掛け持ちしている、世界史のおじいちゃん先生の(夏期講習の)最後の授業で、生徒が机の上にアイスティーを置いておいたら、感激してすごかった、みたいな話を弥生が言い出して、
<「(略)君たちの実力は手に取るように分る。君たちのような人材なくして何の大学か。明日の日本は君たちが作るんだ、って。すごい勢いだったよ」/「そりゃ、あれじゃないかな。学生運動が華やかだった頃にさんざんつるし上げられて、優しさに飢えているんだよ」>(同、p.86)
20年以上も前に書かれた小説、ちょっと時代を感じるというか。学生運動で嫌な思いをした大学教師で、現在も予備校の教壇に立っている人はかなり少なくなっているのではないかと思う。
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