タイトル通り11作収録されている短篇集『イレブン殺人事件』(ジョイ・ノベルズ、1982/角川文庫、1986)のちょうど真ん中の1篇。よくわからないけれど、熾烈さみたいなものは、受験競争<受験戦争<受験地獄、という感じ? ……まぁそれはそれとして。※以下、ネタバレしているので気をつけてください。手元にあるのがたぶん装丁の古い文庫版なのだけれど、表紙カバーの折り返しのところに紹介文があって。そこから引用すると、

 <昌彦はすでに二年間浪人している受験生である。今年こそと思っていたが、目標のT大受験の日に、寝坊してしまった。だが神は彼を見捨てなかった。苦しまぎれの絶妙の方法が浮かんだのだ! だがその為に、姿なき脅迫者が……。(略)>

試験の当日から描かれていて、結局、受かってしまうので(主人公がT大/東大に合格する小説は珍しいかも)、あまり浪人生小説とは言えないわけだけれど(別に言えなくて困ることもないけれど)、あらびっくり(?)そのあとT大ひとすじ5浪の男性が出てくる。5浪くらいになると“万年浪人生”(死語?)と呼んでもかまわないか。というか、現実(大学受験の実態)がどうかはともかく、個人的には小説では3浪くらいが限界である、と思う。志望が東大であろうと医学部であろうと。なので、この小説はちょっと例外っぽく、あるいはやや漫画っぽく感じてしまう。

[追記]『一千万人誘拐計画』という本(文庫は角川文庫)にも収録されているらしく、そちらのほうが手に入れやすいかもしれない(いや、探している方がいるようなので)。初出は『週刊小説』1979年3月30日号らしい。あー、時期的には赤川次郎「駈け落ちは死体とともに」(『週刊プレイボーイ』1979年3月13日号)や式貴士「窓鴉」(『奇想天外』1979年4月号)などと近いのか。
[追記2]『殺人偏差値70』(角川文庫、2014.5)という短篇集が出ていて、その1篇目にも収録されているようです。
 

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