『消滅飛行機雲』(新潮社、2001/新潮文庫、2005)所収。鈴木清剛って中村航っぽいな。あ、逆か、中村航が鈴木清剛っぽいのか。というか、どっちでも同じ。

直接告白する勇気はなかった食器洗いマシン担当の「オレ」が、癒し系というかほのぼの系というか不思議系というか「ふんわりしていてあったかい」(同、p.43)周りの誰もが認めるビールバーのアイドル、ウェイトレスの咲月ちゃんといかにして付き合うことができるようになったか、というような話。――それはいいのだけれど。

 <今年の春、オレはあっけなく大学に落ち、浪人生活をできるだけ有意義に過ごそうと、駅ビルの中にあるビールバーでアルバイトを始めた。>(文庫、p.41)

アルバイトをするとどうして有意義に過ごせるのかわからない。たった(?)5時間でも動きっぱなし立ちっぱなしでけっこう大変、とのことで、勉強する時間はちゃんとあるのだろうか、この人。でも、昼間、予備校へはちゃんと通っているようだ。あと、「オレ」(並木くん)は、浪人生の定番アイテム(?)原付でバイト先へ通っている。

アルバイトかぁ…。あまり長続きはしなかったけれど、大学のときに塾講師のアルバイトで高校生を教えていると、無限に勉強時間が必要なんじゃないか、と疑える生徒にかぎって「バイト始めたんで、時間をどうにか(ずらしてくれ)」みたいなことを言ってくることが多くて。家にお金がないとか借金があるとかというなら話は別だけれど、遊ぶためのお金がほしい(お金だけではなく時間もかかるよ?)とか、何だかよくわからない「有意義さ」を求めてとか、理由としてどうなんだろうね、もちろん本人しだいだとは思うし、他人事ではあるけれど。

(あとで取りあげると思うけれど、アルバイトをしていても、村山由佳『天使の卵』みたいなのなら好感がもてるかな。家計というか、1人で居酒屋で働いている母親のことを考えて、春休みとか夏休みとかに集中して土方のアルバイトをしている。好感がもてないけれど、あと予備校生がアルバイトをしている小説としては、久間十義『海で三番目につよいもの』とか、主人公ではないけれど、立松和平『光の雨』とか。あと、アルバイトというイメージではないけれど、中上健次「十九歳の地図」とか。早瀬乱『三年坂 火の夢』はバイトは始めるけれど……やっぱり違うな、浪人時ではない。)
 

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