連作短篇集『ファイブ・ソングス』(CBSソニー出版、1988/角川文庫、1991)に収録されている1篇(5篇中の2篇目)。各篇のタイトルはそこから取っているらしいのだけれど、作詞家でもある作者が手がけている、TM NETWORK(TMN)の歌の詩(歌詞)と内容的にどう関係しているのか、もとの歌を(もちろん歌詞も)知らないので、個人的にはわからない。TMNだからたぶん世代的に耳にしていたとは思うのだけれど、ちゃんと聴いたことがない。※以下、いちおうネタバレにはご注意ください。これも、短めの話なので、私が内容を説明するよりも読んでもらったほうが早い気がするけれど、一応。

ロックシンガーの有藤奈緒(19歳)が、ライブ(ツアーの最終日)が終わったあと、高校のときの同級生で恋人でもあるらしい浪人生、シンと1ヶ月ぶりに会う、みたいな話。季節は……9月か。特に何が起きるわけでもなく、待ち合わせは、渋谷のはずれのゲームセンター、ラーメンを食べて、そのあとオートバイで、夜でなければ飛行機の離着陸が見える海の近くへ行く。――恋人どうしというよりは、気心の知れた友達どうし、みたいな感じかもしれない。表紙の印象のせいか、もっとクールな小説かと思っていたら、意外と温かめの小説でした。なんか最近(昔からという気もするけれど)ちょっといい話とか、性格的にいい人が出てくる話に弱いみたいで(汗)、そういう意味では悪くない話です。

よくある、高校を卒業して環境が変わって気持ちが離れてしまう、みたいな小説の逆をいくものとして――おおげさに言えば別れの危機を乗り越える話として、無理に読めばそう読めるかな。でも、思うに、奈緒が歌手になっている(周りは大人ばかりで、同年代のアイドルとは話が合わないらしい)からこの2人はうまくいくのであって(うまくいきそうなのであって)、もし彼女が大学生とかになっていたら、浪人中のシンくんとはうまくいっていたかな、とはちょっと考えてしまう。もちろん仮の話をしてもしかたがないけれど。

ちなみに、シンくんは酒屋の次男らしい。お父さんは、お兄さんが酒屋を継ぐから、「ちゃんと大学に入って、いいところに就職しなくちゃいけない」(p.48)と思っているらしい。次男も楽じゃないよね(?)。
 

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