高野和明 『幽霊人命救助隊』
2007年4月29日 読書
文藝春秋、2004/文春文庫、2007。
<浪人生の高岡裕一は、奇妙な断崖の上で3人の男女に出会った。老ヤクザ、気弱な中年男、アンニュイな若い女。そこへ神が現れ、天国行きの条件に、自殺志願者100人の命を救えと命令する。裕一たちは自殺した幽霊だったのだ。地上に戻った彼らが繰り広げる怒濤の救助作戦。傑作エンタテインメント、遂に文庫化! (略)>(文庫カバーより)
帯には「涙と笑いの」という文句もあって、読んでいて面白いことは面白いです。ページをどんどんめくりたくなる感じではなかったけれど、7週間という時間制限もあるし、100人という数値目標(数値条件)もあるし、けっこう飽きずに読めました。文章自体も読みやすいと思う。でも、ちょっとゆるいような気はするかな、子ども向けというか。読みどころは自殺志願者の救助だろうから、あまり文句を言ってもしかたがないのかもしれないけれど(書き忘れたけれど、※ネタバレ注意です)、あと、世界がどういう仕組みになっているのか、とかももう少し説明して欲しい。日本だけで年間約3万人もの人が自殺しているのに、どうしてこの4人でレスキュー隊を組むことになるのか、神(というより仙人っぽいな)の意図がなんなのかがよくわからない。そう、ありがちな疑問かもしれないけれど、人間は通り抜けられるのに(かさなれるのに)物体は無理、ということは、洋服はどうなっているの? ――あげあしとりか(汗)。
浪人生小説としては、自殺した浪人生の死後を描いている貴重な一品というか。正確には「元浪人生」だけれど。小説として面白いから許せてしまえるかもしれないけれど、でも、けっこうステレオタイプである、人物造形が。自殺をテーマにした(暗くならない)小説を書くに当たって、(元)浪人生を主役にするあたりからして、どうなのか? とはちらっと思う。裕一くんは、両親から「東大東大、勉強勉強」と言われていたらしく、でも、1浪しても結局、受からずに(心を打ち明けられるような、相談相手もおらず)、家(西荻窪の一軒家)の近所の公園で首吊り自殺したらしい。小説としては安易な(ステレオタイプな)行動に走ってしまった感じがしなくもない(けれど、こちらのほうが現実を反映しているのかなんなのか)。大学に受からなかっただけでなく、意中の異性(同性でもいいか)にふられるとか、ちょっと入り組んだ家族関係があるとか、スリの癖が治らない(笑っちゃいけない)とか、小説における浪人生の自殺の動機としては、何かプラスアルファがあってもいいような。
父親が息子に東大に入って欲しいと考えている(いた)理由も、例によって例のごとくな感じ(遠藤周作『ただいま浪人』など参照)。あと、やっぱりというか、自殺してしまうと残された家族(この小説では両親と妹)はかわいそうだよね。この小説ではそのへんがフォローされているからいいかもしれないけれど。
<浪人生の高岡裕一は、奇妙な断崖の上で3人の男女に出会った。老ヤクザ、気弱な中年男、アンニュイな若い女。そこへ神が現れ、天国行きの条件に、自殺志願者100人の命を救えと命令する。裕一たちは自殺した幽霊だったのだ。地上に戻った彼らが繰り広げる怒濤の救助作戦。傑作エンタテインメント、遂に文庫化! (略)>(文庫カバーより)
帯には「涙と笑いの」という文句もあって、読んでいて面白いことは面白いです。ページをどんどんめくりたくなる感じではなかったけれど、7週間という時間制限もあるし、100人という数値目標(数値条件)もあるし、けっこう飽きずに読めました。文章自体も読みやすいと思う。でも、ちょっとゆるいような気はするかな、子ども向けというか。読みどころは自殺志願者の救助だろうから、あまり文句を言ってもしかたがないのかもしれないけれど(書き忘れたけれど、※ネタバレ注意です)、あと、世界がどういう仕組みになっているのか、とかももう少し説明して欲しい。日本だけで年間約3万人もの人が自殺しているのに、どうしてこの4人でレスキュー隊を組むことになるのか、神(というより仙人っぽいな)の意図がなんなのかがよくわからない。そう、ありがちな疑問かもしれないけれど、人間は通り抜けられるのに(かさなれるのに)物体は無理、ということは、洋服はどうなっているの? ――あげあしとりか(汗)。
浪人生小説としては、自殺した浪人生の死後を描いている貴重な一品というか。正確には「元浪人生」だけれど。小説として面白いから許せてしまえるかもしれないけれど、でも、けっこうステレオタイプである、人物造形が。自殺をテーマにした(暗くならない)小説を書くに当たって、(元)浪人生を主役にするあたりからして、どうなのか? とはちらっと思う。裕一くんは、両親から「東大東大、勉強勉強」と言われていたらしく、でも、1浪しても結局、受からずに(心を打ち明けられるような、相談相手もおらず)、家(西荻窪の一軒家)の近所の公園で首吊り自殺したらしい。小説としては安易な(ステレオタイプな)行動に走ってしまった感じがしなくもない(けれど、こちらのほうが現実を反映しているのかなんなのか)。大学に受からなかっただけでなく、意中の異性(同性でもいいか)にふられるとか、ちょっと入り組んだ家族関係があるとか、スリの癖が治らない(笑っちゃいけない)とか、小説における浪人生の自殺の動機としては、何かプラスアルファがあってもいいような。
父親が息子に東大に入って欲しいと考えている(いた)理由も、例によって例のごとくな感じ(遠藤周作『ただいま浪人』など参照)。あと、やっぱりというか、自殺してしまうと残された家族(この小説では両親と妹)はかわいそうだよね。この小説ではそのへんがフォローされているからいいかもしれないけれど。
コメント