河出書房新社、1999/河出文庫、2002。ほのぼのした小説のようで、ほのぼのしていないというか、読んでいるとちょっと落ち着かなくなる気もする。どうでもいいけれど、女の子=サワ(サワコシ)の話し方が、なんとなくアイドル・タレントの安田美沙子に似ているような気がして、頭の中で声を当てはめて読んでみたのだけれど、かえって違和感が大、失敗しました(涙)。内容は、

 <男の子と女の子――つなげれば即席の永遠ができあがる。美大の予備校に通うイツオとサワ。その二人の日常に突如現れた年上の女性、ナカツカハルミ。三島賞受賞第一作のキュートでせつない長篇恋愛小説。>(文庫カバー)。

だそうです。夢(たぶん)とか、ノイズ的な文章が挟まれていたりもするのだけれど、基本的には男の子=イツオ(ツオちゃん)の視点で書かれている。「美大の予備校」とあるけれど、本文中では「画塾」と呼ばれている。目白にあるらしい。授業というか、デッサンをしている場面は出てくる。2人はサワのアパートで、半同棲状態にある。アパートがあるのは、高円寺(貧乏ではないけれど、“中央線沿いアパート小説”みたいな感じ?)。なんていうか、2人の会話は、噛み合っていないのだけれど、1つのところに収斂していくような、ちょっと不思議な感じがする。相性がいいのかよくないのか、よくわからない…。私は男なのでわからないけれど(と言い訳をしつつ)、女性が読むとふつう、イツオはサワの気持ちをわかってねーな、みたいなことを思うのかな、この小説? 2人の前に現れるナカツカハルミ(ハルミねーさん)は、「解説」(湯山玲子)では、「一般的な尺度で言えば、“不思議ちゃん”のなれの果てのような、変わった人物」(p.240)と言われているけれど、電波というかちょっとSFが入っているのかな。クラインの壷とか宇宙とか、川端康成の「片腕」とか。

受験に関係しそうなことでは、イツオくんは2浪らしいのだけれど、ハルミとの会話で、出遅れた、と言っている。「普通はみんな、高校一年ぐらいから美術学校に行ったり、個人授業を受けたりするみたいなんですけど、そんなこと全然知らな」(pp.61-2)かったらしい。本当にそうなのかな、小説では(デッサンとかも含めて)1年くらい勉強しただけで、美大に合格しているケースがあるけれど。でも、遅れをとっているわりには、ふつうの(?)浪人生と同じように、あまり勉強していない様子。ちなみに、イツオは「将来はグラフィックデザイナーになって、レコード会社のデザインルームに勤めたい」(同ページ)らしい。

あれ、ツオちゃんの家はどこだっけ? ――忘れちゃったよ(川崎だっけ?)。サワの実家は(これは見つかった)和歌山らしい。そういえば、サワって何浪なのかな、イツオと同じ? あと、サワってアルバイトをしているけれど、イツオってしていたっけ?(読み直さないとわからない、というか、最近もの忘れが早すぎ…)。

※スピンオフというか、『消滅飛行機雲』(新潮社、2001/新潮文庫、2005)に、続編(前編?)のようなもの(「パーマネントボンボン」)が収録されている。
 

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