NHK出版、2004。手元にあるのは図書館から借りてきた本。この本、とても欲しいのだけれど、えーと、1600円もするのか…(うーん)。文庫化されないかな。NHK出版は無理だろうから(?)清水作品が得意そうな講談社文庫が拾うとか。というか、どこでもいいので文庫化して欲しい。それとは別に、図書館の本について触れるのはどうも気が引ける、みたいなこともあって。脱税しているとかではないけれど。※以下、例によってネタバレ注意です。

途中、『ウルルン滞在記』が挟まっている(『世界タリラン滞在記』)。パスティーシュ作家、清水義範の本領が発揮されているというか、うまいです。でもこの小説、全体的に何かTVで見たことのあるような話が多いかな。冒頭が主人公の竹沢遥祐(18歳)がゲーム・センターで時間を潰している場面なのだけれど、そのあと駅のホームで線路に落ちた男性を助けたことから、3ヶ月で1億円を使いきるという、その人=瀬戸川忠(55歳)が提案するリアルなゲームを実行することに。これは『黄金伝説』の、1ヶ月1万円で生活する、みたいなものの逆っぽい(そうでもないか)。そもそも、瀬戸川以外に登場する主な人物が、上京してきたばかり、かけだしのアイドルというか、女優の卵みたいな女の子であるし。その子=笹沢真由(遥祐と同じ歳)は、ウルルンならぬタリランしているだけでなく、描かれてはいないけれど、NHK朝ドラマのオーディションも受けている(関係ないけれど、これは、人気が翳ってきたタレントを描いた小説『スタア』の逆っぽい?)。

ひと言でいえば、成長小説なのだけれど、今回は細かいことは省かせてもらって(読んでください……と言ってしまうと、感想ブログとして元も子もない(汗))。冒頭あたりというか、主に第一章の、予備校生遥祐の心理の描かれ方も、実際の浪人生が読んでどう思うかは別として、やっぱりうまいと思う。ちょっとわかりやすすぎるきらいはあるかもしれないけれど。遥祐くん、たんに将来なりたいこと、したいことがないというだけでなく、両親が2月に離婚していて(母親と妹の久美は浜松に)そのショックが尾を引いている。そのために勉強に身が入っていない状態。「ゲーム」が始まってからは受験勉強はお休みに。舞台はほとんど東京で、描かれているのは7月から……最後は時間が飛んだりして12月か。入試までは描かれていないけれど、今年というか年が明けて来年の入試は、落ちてもしかたがない、みたいなことを本人は言っている。

派手なことが起こったりしないので(ゲームの結果もちょっとうやむやな感じ?)、もの足りなく感じる人もいるかもしれないけれど、個人的にお薦めはお薦めです。5段階評価なら(個人的に清水義範が好きなので)ちょっとおまけして3.2くらいで。(やっぱり手に入れて、もう1度ちゃんと読み直したいな。感想をもう少し詳しく書き直したい。というか、どうしてNHK出版から出ているの? ――ラジオ講座のテキスト『新基礎英語』の2と3に連載されていたらしい、けれど、そんな所への小説連載のきっかけっていったい?)
 

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