サンプラザ中野 『小説 大きな玉ネギの下で』
2007年6月2日 読書
講談社文庫、2007。単行本『大きな玉ネギの下で〜story of 85’〜』(講談社、2005)が若干改題されたものらしい。ロックバンド(なのか?)爆風スランプのヴォーカルを(最近ではTVでワイドショーのコメンテーターなども)つとめるサンプラザ中野による「小説ほぼデビュー作」。※以下、例によってネタバレには注意してください。
<一九八五年、北関東の県立高校3年生木島夕子は、都内の予備校生・辻島衆二と文通を始めた。手紙の言葉だけを頼りに純真な恋を育てた二人は、共通のファンであるロックバンドの武道館公演の席で初めての待ち合わせをするが――。爆風スランプの名曲「大きな玉ねぎの下で」に秘められたせつなさあふれる物語。>(文庫の後ろより。「辻」は点がもう1つ。)
亡くなった母が箱にしまっていた手紙の束が出てきて、それについて「私」(伽耶)が叔母から話を聞く、という外枠というか外側の話があるのだけれど、叔母(たち)によって語られる内側の物語(1985年4月〜)は上の説明のような感じ。亡くなった母親が木島夕子。あと、前半の盛り上がりどころは、歌やラジオを聴いてファンになったロックバンド「爆pスタンプ」が初の武道館コンサートをすると聞いて、それを宣伝するために文化祭で、クラスメートで友達の雅子と、雅子が想いを寄せている隣のクラスの飛田くん(トビー)たちと一緒にコピーバンドをするところ。
20年も前の1985年が主な舞台であるにしても、オーソドックスというか、かなり古風な小説かもしれない。個人的には明るい小説が好きなので嫌いではないけれど、ちょっと牧歌的な感じ、もする。“悪意”がほとんどない小説なので、講談社文庫ではなくて、講談社青い鳥文庫に入れて小中学生に読んでもらうといいような小説かも。(あまり関係ないけれど、世代的には……どうなるのかな、自分はたぶん「私」(夕子)たちではなく、夕子の8つ歳下の妹、美智と同じくらいの世代。なので、わかるようなわからないような…。小学生くらいからTBSの音楽番組「ベストテン」はなんとなく見ていたけれど、爆風スランプといえば記憶が、♪走るー、走るー、俺たち(「RUNNER」)からかな、やっぱり。光GENJIが出てきたのっていつだっけ? ――それはそれとして。)
本題。上で引用した文庫カバーの宣伝文を読むと、浪人生が出てくる…と思えるけれど――ネタバレしてしまうけれど、残念ながら出てこないっす。伏線みたいなものもわかりやすい小説なので、わりと早めに、こりゃ出てこないな、と知れてしまう(涙)。浪人生が出てこない小説をとりあげてもしかたがないのだけれど、ただ、この小説は高校3年生たちが主役だから、卒業にあたって、受験の結果、浪人する人も出てきている。これもネタバレしてしまうけれど、美術大学志望だったトビー飛田くんは、家庭の事情から歯学部を目指さなくてはいけなくなって、勉強がとても大変に。小説では(歯学部志望じたい珍しいかな)医学部志望から美大志望に変えるケースはけっこう目にするけれど、美大志望→医科・歯科系志望というのはちょっと珍しいかもしれない。高校3年の、しかも途中から歯学部志望に変えたのではそうは簡単に受からないよね、やっぱり。一方の「私」というか早大志望の夕子のほうは……ちょっと引用させてもらうと、
<浪人がほぼ確実になった。そういえば爆pスタンプのサンちゃんも、一浪の末に早稲田に受かったのだった。私も焦らずに、来年頑張ればいいや、と思った。>(p.295)
この軽いノリは何?(汗)。確かに夕子は夕子でこのあと大変なことが待っているにしても、シリアスな飛田くんと比べるとちょっと楽観的すぎるような。
関係ないけれど、「北関東」というのはちょっとざっくりしているな(でも、横山秀夫の『クライマーズ・ハイ』とかもそうか。「北関東新聞」だっけ?)。プロフィールを見ると作者は山梨県出身らしい。いずれにしても、この人=リアル・サンちゃんは純粋な人っぽいから、この精神(?)のまま、どんどこ小説を書いていって欲しいなと思う。たくさんのジャンルの小説を読みまくったりもすれば、そのうち玄人受けするような傑作も書けるのではないか。楽観&希望だけれど。
<一九八五年、北関東の県立高校3年生木島夕子は、都内の予備校生・辻島衆二と文通を始めた。手紙の言葉だけを頼りに純真な恋を育てた二人は、共通のファンであるロックバンドの武道館公演の席で初めての待ち合わせをするが――。爆風スランプの名曲「大きな玉ねぎの下で」に秘められたせつなさあふれる物語。>(文庫の後ろより。「辻」は点がもう1つ。)
亡くなった母が箱にしまっていた手紙の束が出てきて、それについて「私」(伽耶)が叔母から話を聞く、という外枠というか外側の話があるのだけれど、叔母(たち)によって語られる内側の物語(1985年4月〜)は上の説明のような感じ。亡くなった母親が木島夕子。あと、前半の盛り上がりどころは、歌やラジオを聴いてファンになったロックバンド「爆pスタンプ」が初の武道館コンサートをすると聞いて、それを宣伝するために文化祭で、クラスメートで友達の雅子と、雅子が想いを寄せている隣のクラスの飛田くん(トビー)たちと一緒にコピーバンドをするところ。
20年も前の1985年が主な舞台であるにしても、オーソドックスというか、かなり古風な小説かもしれない。個人的には明るい小説が好きなので嫌いではないけれど、ちょっと牧歌的な感じ、もする。“悪意”がほとんどない小説なので、講談社文庫ではなくて、講談社青い鳥文庫に入れて小中学生に読んでもらうといいような小説かも。(あまり関係ないけれど、世代的には……どうなるのかな、自分はたぶん「私」(夕子)たちではなく、夕子の8つ歳下の妹、美智と同じくらいの世代。なので、わかるようなわからないような…。小学生くらいからTBSの音楽番組「ベストテン」はなんとなく見ていたけれど、爆風スランプといえば記憶が、♪走るー、走るー、俺たち(「RUNNER」)からかな、やっぱり。光GENJIが出てきたのっていつだっけ? ――それはそれとして。)
本題。上で引用した文庫カバーの宣伝文を読むと、浪人生が出てくる…と思えるけれど――ネタバレしてしまうけれど、残念ながら出てこないっす。伏線みたいなものもわかりやすい小説なので、わりと早めに、こりゃ出てこないな、と知れてしまう(涙)。浪人生が出てこない小説をとりあげてもしかたがないのだけれど、ただ、この小説は高校3年生たちが主役だから、卒業にあたって、受験の結果、浪人する人も出てきている。これもネタバレしてしまうけれど、美術大学志望だったトビー飛田くんは、家庭の事情から歯学部を目指さなくてはいけなくなって、勉強がとても大変に。小説では(歯学部志望じたい珍しいかな)医学部志望から美大志望に変えるケースはけっこう目にするけれど、美大志望→医科・歯科系志望というのはちょっと珍しいかもしれない。高校3年の、しかも途中から歯学部志望に変えたのではそうは簡単に受からないよね、やっぱり。一方の「私」というか早大志望の夕子のほうは……ちょっと引用させてもらうと、
<浪人がほぼ確実になった。そういえば爆pスタンプのサンちゃんも、一浪の末に早稲田に受かったのだった。私も焦らずに、来年頑張ればいいや、と思った。>(p.295)
この軽いノリは何?(汗)。確かに夕子は夕子でこのあと大変なことが待っているにしても、シリアスな飛田くんと比べるとちょっと楽観的すぎるような。
関係ないけれど、「北関東」というのはちょっとざっくりしているな(でも、横山秀夫の『クライマーズ・ハイ』とかもそうか。「北関東新聞」だっけ?)。プロフィールを見ると作者は山梨県出身らしい。いずれにしても、この人=リアル・サンちゃんは純粋な人っぽいから、この精神(?)のまま、どんどこ小説を書いていって欲しいなと思う。たくさんのジャンルの小説を読みまくったりもすれば、そのうち玄人受けするような傑作も書けるのではないか。楽観&希望だけれど。
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