柄刀一 「傷とアネモネ」
2007年6月3日 読書
連作短篇集『シクラメンと、見えない密室』(ジョイ・ノベルス、2003/光文社文庫、2006)所収の最初の1篇。短いプロローグとエピローグを除いて全7篇、各章のタイトルの前には「月」が書かれていて、3月から始まって最後は9月まで進んでいる。※以下、ネタバレ注意です。自分で内容をまとめる自信がないので、例によって文庫の後ろ(カバー)の文章を引用させてもらえば、
<扉を開けるとオジギソウが挨拶をしてくれる、花いっぱいの喫茶店。美しくミステリアスな店主[ママ]とその娘が、悩める客の持ち込む不可解な謎を、鮮やかに解き明かしてゆく。遠隔殺人、見えない密室、同時に4つの場所に出現した男……不可能を可能にする驚愕のトリックとは? /さらに最終章では、とんでもない大仕掛けが明らかに――。/柄刀マジックの真骨頂!>([括弧]はルビ。)
とのこと。個々の事件(謎)やその解決方法に興味が引かれたというよりも(“見えない密室”なんて期待してしまうとがっかり?)、個人的には、花を始めとして植物に詳しく、30代らしいのだけれど、年齢不詳な感じの店主、美奈(と店を手伝っている娘、奈子)がいったい何者なのかが知りたくて、最後まで読んだ感じである。喫茶店『美奈子』は逗子(神奈川県)にあるらしい。店内は植物で飾られているだけでなく、ママさんはお客の心身の状態に応じてハーブティーを出してくれたり、もちろん相談ごとなどにも耳を傾けてくれたり、……理想的な喫茶店の1つ、みたいな感じかな。将来こういう癒し系(?)のお店を開きたいと考えている人も多いのではないか。
それで、「傷とアネモネ」(3月)について。内容は――これも引用させてもらえば、「父親の自殺から一年もしないうちに、今度は母親が自殺未遂したとふてくされている浪人生の物語」(村上貴史による「解説」)だそうである。関係ないけれど、どうしてこう、父親がどっかへ行っちゃっている小説が多いのかな、世の中は?(現代の日本だけ?)。浪人生の直人(市谷直人、19歳)は、半年前から週に1,2回は『美奈子』に通っている。母親の利佳子は元ファッションモデルで、結婚後もそうした関係の仕事を続けていて、直人の面倒は家政婦まかせにしていたらしい。ちょっと違うような気もするけれど、やっぱり母-息子関係の話なのかな、これ。美奈さんの協力(推理など)によって利佳子の自殺の真相がわかり、直人は母親のことを見直すというか、おおげさに言えば“赦す”ような感じ。
2浪というか、まだ3月なので1浪と2浪のはざまぐらいな直人は(どうでもいいけれど)数学が得意らしい。「等差級数」「等比級数」がどうの、と言っている箇所を読んでも、得意なようには思えないけれど。あと、直人くん、もう、バイクだけでなく自動車の免許も持っているらしい、というか、バイクも自動車も持っているらしい。事業に失敗して自殺した父親――直人が現役で大学に落ちたときには舌打ちしたらしい――が残した借金はどうなったのかな。家族には降りかからなかったのか、母親がよほど稼いでいるのか。少なくとも、車など、アルバイトをして買ったようには思えない感じ。ちなみに、あとのほう(6篇目・7篇目)を読むと、大学はどうしたのか、出版社(雑誌社)に勤める編集者(記者)になっている。
<扉を開けるとオジギソウが挨拶をしてくれる、花いっぱいの喫茶店。美しくミステリアスな店主[ママ]とその娘が、悩める客の持ち込む不可解な謎を、鮮やかに解き明かしてゆく。遠隔殺人、見えない密室、同時に4つの場所に出現した男……不可能を可能にする驚愕のトリックとは? /さらに最終章では、とんでもない大仕掛けが明らかに――。/柄刀マジックの真骨頂!>([括弧]はルビ。)
とのこと。個々の事件(謎)やその解決方法に興味が引かれたというよりも(“見えない密室”なんて期待してしまうとがっかり?)、個人的には、花を始めとして植物に詳しく、30代らしいのだけれど、年齢不詳な感じの店主、美奈(と店を手伝っている娘、奈子)がいったい何者なのかが知りたくて、最後まで読んだ感じである。喫茶店『美奈子』は逗子(神奈川県)にあるらしい。店内は植物で飾られているだけでなく、ママさんはお客の心身の状態に応じてハーブティーを出してくれたり、もちろん相談ごとなどにも耳を傾けてくれたり、……理想的な喫茶店の1つ、みたいな感じかな。将来こういう癒し系(?)のお店を開きたいと考えている人も多いのではないか。
それで、「傷とアネモネ」(3月)について。内容は――これも引用させてもらえば、「父親の自殺から一年もしないうちに、今度は母親が自殺未遂したとふてくされている浪人生の物語」(村上貴史による「解説」)だそうである。関係ないけれど、どうしてこう、父親がどっかへ行っちゃっている小説が多いのかな、世の中は?(現代の日本だけ?)。浪人生の直人(市谷直人、19歳)は、半年前から週に1,2回は『美奈子』に通っている。母親の利佳子は元ファッションモデルで、結婚後もそうした関係の仕事を続けていて、直人の面倒は家政婦まかせにしていたらしい。ちょっと違うような気もするけれど、やっぱり母-息子関係の話なのかな、これ。美奈さんの協力(推理など)によって利佳子の自殺の真相がわかり、直人は母親のことを見直すというか、おおげさに言えば“赦す”ような感じ。
2浪というか、まだ3月なので1浪と2浪のはざまぐらいな直人は(どうでもいいけれど)数学が得意らしい。「等差級数」「等比級数」がどうの、と言っている箇所を読んでも、得意なようには思えないけれど。あと、直人くん、もう、バイクだけでなく自動車の免許も持っているらしい、というか、バイクも自動車も持っているらしい。事業に失敗して自殺した父親――直人が現役で大学に落ちたときには舌打ちしたらしい――が残した借金はどうなったのかな。家族には降りかからなかったのか、母親がよほど稼いでいるのか。少なくとも、車など、アルバイトをして買ったようには思えない感じ。ちなみに、あとのほう(6篇目・7篇目)を読むと、大学はどうしたのか、出版社(雑誌社)に勤める編集者(記者)になっている。
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