扶桑社文庫、1996。ここ最近読んだ小説の中でいちばんひどかったです(何を読んだ以来のひどさかな、これは?――思い出せないけれど)。なので、個人的には、お薦めはとうていできない。作者がライトノベルというか、昔の少女小説を書いていた人だから、ある程度はしかたがないと思って読んでいたけれど、それにしてもな…。頭のよろしくない印象を受ける1人称「あたし」語りで、つまらない(と私には思える)無駄話が多くて、話がなかなか前へ進んでいかない(涙)。でも、最後まで読むと「あたし」はいちおう精神的に成長はしているっぽい。よかったですね(?)。

 <中川美麻子(みまこ)18歳、浪人生。私立の中学、高校とエスカレータで来て、大学受験に失敗してしまった。名門の芸大を狙っていたのだが、どうしてもって、わけじゃない。父親は何年かかってもいいから大学に行けといい、母親はさっさと就職しちゃいなさい、という。一年間の浪人生活は執行猶予って感じだ。そんな宙ぶらりんでハンパな状態の美麻子の前に一人の男が現れた。花井愛子が送る大人になりかけの恋の話。大好評の書き下ろし、読みきりシリーズ。>(カバー後ろのところより。)

この紹介文は中身をちゃんと読んでまとめたのかな、事実関係が微妙にずれているところ多し。――それはいいとして。中高一貫の女子校というぬるま湯状態で生活してきて、気がついたら“現実”に直面していたという感じ、かな。大学は四年制大学を2校受けて落ちているのだけれど、そのうちの1校、マンモス大学のほうが気に入ったらしい(あ、受験したのは芸術学部)。最初のほうは、家族に関することや高校のときのこと、あとアルバイトについてとか、あれこれ無駄に(?)ページが費やされているのだけれど、上の文章で「美麻子の前に一人の男」と言っているのは、浪人中、「あたし」がそのマンモス大学に再び訪れたときに出会った「クマさん」こと、久磨哲人(くま・てつんど)のこと。おじさんに見えるけれど、実はそれほど歳はとっていなくて(26歳だっけ?)まだそこの大学の学生で、しかも世界に名の知られた芸術家でもあるそうだ。――恋愛小説という感じは(たぶん)しなくて、そのクマさんと言葉を交わしつつ、ダメ女子高生の成れの果てみたいな(?)主人公が自分の力でものを考えられるようになる、みたいな話? なんというか、成長(精神的なそれ)の第一歩は、人を頼ったり人のせいにすることなく、自分の頭で物事を判断し、思考できるようになることなのか、なんなのか

「あたし」は自由が丘のマンションに住んでいるのだけれど、家にはお金の余裕がなく、予備校には通わせてもらえていない。アルバイトはチェーン店のドーナツ屋で。あと――何か書き忘れているかな。そう、要領よく家を出て行った、ちょっと歳の離れたお姉さんがいるらしい。あ、「お姉さん」で思い出した、エピソード的な印象的な箇所なのだけれど、本屋に絵本を買いに来ていた小学生くらいの姉妹――という話を読んで、また庄司薫の『赤頭巾ちゃん気をつけて』を思い出してしまったよ(汗)。やっぱり<薫くん四部作>はちゃんと読んだほうがいいのかな?(自問自答)。ほかには、浪人生活とは関係ないけれど、高校がちゃんと進路指導をしてくれなかった、というのはちょっとかわいそうかな。でも、自分も高校のときに担任教師とかから、それほどちゃんと何かを言われた記憶もないけれど。

描かれているのは、最後のへんで「夏が、来る」とクマさんが言っているので、それくらいの季節まで。そんなことよりも、来年、「あたし」というかみいちゃんは、ちゃんとクマさんのいるその大学に受かったのかな? ――ま、そんな心配をするだけ時間の無駄である小説な気がするけれど。
 

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