五條瑛 『J』

2007年7月30日 読書
徳間書店、2007。エンターテインメント系の小説としてふつうに面白い、と思って最初のうちはつるつる読んでいたのだけれど、途中から飽きてしまって。けっこう厚い小説なのだけれど(400ページを超える)、できれば半分くらいに縮められないのかな、こういうのは?(無理なのか…)。最近ちょっと小説を読むこと自体に飽きてきているので、そのせいもあるかと思うのだけれど、読みやすくても疲れてしまう。そう、読みやすいのだけれど(つるつるというかどんどん読めるけれど)、あまり先を知りたくなるような小説ではないかな。※以下、例によってネタバレにはご注意ください。

毎日のようにどこかでテロが起こっている東京。秋生(あきお、上山秋生)は将来の目標もなく、渋谷をぶらぶらとしている若者の1人なのだけれど、ある日、謎の女性――あとで「ジェイ」と名乗る――と知り合い、意志の強そうな彼女の影響からか、強くなりたいみたいなことを思うようになって、たまたま見かけたジムに入り、キックボクシングを始める。水を得た魚ではないけれど、そのジムには尊敬のできる憧れの先輩(久野)がいて、将来の目標(久野と試合をすること)もできて、要するに、秋生くんに注目すれば(1視点小説ではないのだけれど)、成長小説という感じかもしれない。なんていうか、言動の軽いふらふらとした悩める若者も、適切な場所さえ見つけられれば(あるいは、与えられれば)、急に、けっこう素直ないい子になってしまうのかなんなのか。秋生くん、いちおう予備校生らしいのだけれど、6月を最後に予備校には行っていないらしい。最初のあたりは10月くらいかな(描かれているのは最後、クリスマスまで)。ちなみに1人暮らしで、実家は横浜とのこと。一人っ子らしい。アルバイトもしていて、原宿のホテルで清掃係をしている。そう、受験がらみなことでは、秋生とはまったく関係なく、予備校の講師(山縣勇太)もいちおう登場している。都内の「大手ゼミナール」の講師とのこと(予備校といえば「何々ゼミナール」みたいなイメージなのか)。

全体的なこととしては、人がけっこう死ぬ小説、かもしれない。テロが絶えないような都市が舞台だからしかたがないのかもしれないけれど。あと、なんとなく女性が比較的、肯定的に描かれているのに対して、男性があまり肯定的に描かれていないような。男で肯定的に描かれているのって、秋生がかっこいいと思っている久野さんくらいか。ま、最近の小説は全体的にそんな傾向があるのかもしれないけれど。ネタバレしてしまうけれど、あまり肯定的には描かれていない時津寄子もライカも、憎める男を殺してから捕まったり死んだりしていて、そういうのはいったい何? 女は犬死(?)させられないみたいなこと? (関係ないけれど、ほかの人に対してもそう思うけれど、特にライカは最後、本当に死ぬ必要があったのかな? うーん。)

あと、そう、ぜんぜん関係ないし、人のことは言えないけれど、ときどき日本語がちょっと気になる小説だったかな。いちばん気になったのが「〜するかのように」というフレーズ。文脈的に使用法がちょっとおかしい所が2箇所くらいあったような。自分の日本語のセンスのほうがおかしいのかもしれないけれど。

[追記]その後、サブタイトルが付いた文庫版も出ている。『J 少女たちは破壊を謳う』徳間文庫、2012.4。
 

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