「青い月」には「ブルームーン」とルビが。<スカーレット・パラソル>というシリーズの1冊目らしい。講談社、1990/創元推理文庫、2004。手元にあるのは文庫(後ろの解説によると「新版」らしい)なのだけど、携帯電話とかが出てくるので、時代的に考えてだいぶアップデートされている模様。それで、感想はといえば、うーん…、子ども向けの小説、という感じかな(感想じゃないか)。悪い意味ではなくて、児童文学というか児童書というか。私のようなおっさんが読むような小説ではないかもしれない。それほどつまらなくはなかったけれど。そう、最近、文字がけっこう詰まっている佐々木丸美の『崖の館』(同じ創元推理文庫から出ているだけで他意はない)を読んだばかりだからか、改行が多いのが最初、ものすごく気になったです。※以下、いつものようにネタバレ注意です、すみません。

 <愛梨を、将来オリンピック選手まちがいなし、っていわれるほどのスポーツ万能少女に育てたのは、自分の跡をついでもらおうというおばあ様の深謀遠慮だったとは! 彼女の家は代々、「奪うは悪、悪を制するが善、奪うを懲らすは正義」を家訓としてきた義賊の家系だったのだ。二代目・紅蝙蝠としてデビューしたスカーレット・パラソルの前に立ちふさがるは、名探偵・武市大五郎の孫!>(表紙カバーより)

怪盗vs.名探偵の2代目どうしの対決、という感じかもしれないけれど、(ネタバレしてしまうけれど)対決の場面自体は、ちょっと拍子抜けというか、漫画みたいな感じでした。浪人生、武市六平(ろっぺい)のほうもじいちゃんから探偵業を教わるのだけれど、スカーレット・パラソルこと、高校生の阿藤愛梨(あいり)が、おばあ様から泥棒業について教わる感じが、なんかちょっといいと思う(雰囲気的に梨木香歩の『西の魔女が死んだ』っぽさ、もあるかな)。そう、高校生のわりには、喩えに昔の映画をよく持ち出していて、映画(古典映画?)が好きなのかな、この人。

最初、愛梨の視点で最後まで書かれているのかと思ったら、途中から六平の視点に。通っている予備校は、高田馬場のへん? 文化の日に休日講習に出てバイク(浪人生小説の定番アイテム、バイク!)で家へ帰る場面で、「早稲田通りを、高田馬場から早稲田方向に向かってホンダ・シャドウスラッシャー四〇〇を走らせ」(p.127)ている。それとも、高田馬場はただ通りすがっているだけなのかな(別にどっちでもいいや)。そのまま家に帰っているので、家の場所もわかる(でも、説明しづらいな。ま、読んでください)。お母さんは喫茶店(『レベッカ』)を開いている。お父さんは山岳事故で亡くなっているらしい。おじいさんは探偵なのだけれど、開いている事務所は開店休業状態みたいな感じ。――それはそれとして。六平くんが去年大学に落ちた理由は、本人曰く「遊び過ぎた」かららしい。自分の「実力なら、絶対、だいじょうぶだと思った」そうで(成績的には十分受かるところを受けたのかもしれない)、過信もあった感じである。あと、受験生にとって大事な(?)夏には「受験勉強そっちのけでアルバイトして貯めた金でバイクを手に入れた」(p.129)そうで、バイクは「遊び」とも関係するのかもしれないけれど、アルバイト自体も敗因になっているのかもしれない(だいたい免許をとるだけでも、高校3年生、勉強時間を削られてしまうだろうし)。まとめれば、遊び+バイト+バイク+過信みたいな感じ? でも、今年は去年の倍は勉強しているそうなので、来年は期待ができるのかも(性格的にはもう1年くらい浪人しちゃいそうな気配だけれど)。

描かれているのは、文化の日(11月3日)の前日の20日前……細かいことはいいや(汗)。要するに10月から11月の初めくらい。なので、六平の合否はわからずじまい。後ろの解説(戸川安昌)で少し内容が書かれているのだけれど、シリーズ2作目の『聖夜は黒いドレス』では、まだ「現在一浪中」であるらしい。タイトルの「聖夜(ノエル)」って、1作目の翌月のクリスマスのことなのかな。(読めばいいのかもしれないけれど、本屋で注文したら、問屋にも出版社にもない、と言われてしまって。たった3年前に出た本がそんなに早く品切れ・絶版になるの? うーん…。インターネットであれば、どこか残っているオンライン本屋があるかもしれないけれど、拙者、アナログ人間みたいなものだから(涙)。そういえば、1作目はどうしたんだっけ? よく覚えていないけれど、古本屋で手に入れたのだったっけか。)
 

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