小室みつ子 『彼女によろしく』
2007年8月19日 読書角川文庫、1988。出版されたのが80年代の後半、やっぱりちょっと古さを感じるというか、空気、雰囲気に時代を感じるけれど、でも、それほど悪くないのではないか、と個人的には思う。ただ、「小説」としてはどうなのかな、ちょっと微妙といえば微妙であるし、さっぱりめ、薄めな感じではあるかもしれない。
男の子2人と男の子っぽい女の子1人の、仲のいい3人組がメインになっている小説なのだけれど、表紙カバーの折り返しのところの紹介文は――引用してみれば、
<何んでもすぐにあきらめちゃうのっていうのはダメ。一生懸命頑張って、頑張って、頑張る男の子って素敵!/わたし菜々緒。気が強くてわがままみたいに見えるけど、女の子って本当は繊細で、心優しいものなんだよ。/吉郎、成章、菜々緒。三人とも浪人生。でもまだ人生は始まったばかり――。/三人トリオの恋と友情とうっとおしくも心楽しい浪人生活を描く、書下し青春ストーリー。>
となっている。この、本文の雰囲気とはまったく違う、しかも、本文では男の子1人(=吉郎)視点なのに、女の子視点に変わってしまっている文章はいったい何? 文章の悪さについては人のことがまったく言えないけれど、例えば「あきらめちゃうのっていうのはダメ」みたいな日本語も個人的には無理(涙)。なんだろう、昔の少女向けジュニア小説の文体なのかな、これ。あと、「一生懸命頑張って、頑張って、頑張る男の子って素敵!」というのは、本文のどのあたりと関係しているのやら…。あ、逆に受け取っているのか。本文中で菜々緒(関口菜々緒)が言っているのは、頑張らないやつは大嫌い、とか、やってみもしないうちから負けを認めているやつが嫌い、みたいなこと。もう1点、「吉郎」は、本文の初出のときには「よしろう」とルビがふられているのに、この紹介文では「よしお」となっている。お父さんが「伸郎」で「のぶお」だから混じってしまったのか。こういう漢字の読みの異なりは、何か別の小説文庫本の紹介文でも見かけた覚えがあるけれど、どうなのかな…? ま、たんなる誤植かもしれないけど。
で、浪人生小説としてはどうなのかな? 5月の初め、最初のあたりの浪人生トリオの会話の場面とかは、ちょっと読めるかもしれない。でも、大学を女の子(想いを寄せる異性)に喩えて「ふられる」――みたいな話は、やっぱり時代を感じてしまう。いまの18歳くらいの人は使うのかな、これ?(若くないのでわからんです)。「大学にふられる」みたいな言い方自体は(知らないけれど)もっとずっと昔からあったのではないかと思うけれど。あと、吉郎くん(根本吉郎)がちょっと考えている話題、浪人生というのはやっぱり不幸な存在、不運な存在なのだろうか? ――客観的には決められないだろうし、そう思うか思わないかは、どれくらい努力してどれくらいの自信を持って(現役のときに)大学を受けたかにもよるかと思う。具体的な名前が思い出せないけれど、この吉郎くん以上に不幸を感じている浪人生が出てくる小説が何かあったと思う。予備校については、3人とも同じところに通っているらしいけれど、模試の結果(成績)が張り出されているのを、眺める場面が描かれているくらい。
家族に関しては、吉郎はお母さんは亡くなっていて、お父さん(=伸郎、「のぶお」と読む)と2人暮らし。お父さんの恋人(片山則子)も出てきたりするのだけれど、再婚するかしないかみたいなこととかが受験勉強のさまたげになる、みたいなことにはなっていない。お父さんも、息子をけっこうほっといてくれる性格っぽい。成章くん(木田成章)のほうがちょっと大変らしく、1人息子で家というか父親のあとを継ぐことを期待されている(大学の商学部、または経営学を教えてくれる専門学校でも可)のだけれど、絵が描きたい(というか部屋中にすでに描いている)……みたいな小説にありがちな状況に陥っている、らしい。最後まで読んでもまだオヤジさんとはぶつかっていないままらしい。もう1人の菜々緒の家庭環境が、よくわからないな。妹(美緒)は、なんていうか、元気な高校生としてちらほら登場してきているけれど。そう、関係ないけれど、住んでいるのはマンションの5階らしいのだけれど、家族暮らしの部屋の向かいが、どうして大学生の1人暮らしの部屋なの?(広さが違うにしてもちょっと違和感が…ないですか?)。
ネタバレしてしまうけれど、恋愛がらみでは(というかそちらがメインか)、吉郎くんは、菜々緒の向かいに住んでいて吉郎が「ふられた」大学(R大)に通っている小倉加寿子(2つ歳上)に、想いを寄せるというか、彼女のことがちょっと気になって、付き合うまではいかないのだけれど、結局、ふられてしまう。加寿子(かずこ)は高飛車な感じで、ちょっと嫌な性格として書かれている感じだけれど、なんていうか、やっぱり浪人生の敵は大学生、みたいな感じなのかな?(特に現役で合格した人は、浪人生の気持ちがまったくわからない、みたいな?)。一方の成章くんのほうは、大学受験とは関係がないけれど、画材屋の店員の女の子(ちいちゃん=林千鶴)と、とりあえず付き合いだす……のだけれど、でも、みたいな感じ。成章については、最後、まだ結論が出ないまま終わっちゃっている。そういえば、全体的に、吉郎と成章が対照的に描かれていそうで、でも、そんな感じにはなっていないな(それほどではない感じ)。
場所は例によって、東京。“東京小説”、ちょっと世の中に多すぎだよね。もっと地方が舞台の浪人生小説を読みたいな。描かれているのは5月の初めから、えーと、夏くらいまで?(ちゃんと読み直さないとわからない)。あと、書き忘れたことは――、そう、菜々緒さんは、浪人生小説の定番、バイクに乗っている。吉郎くんのほうは、レースにも出られるような自転車。志望も書き忘れたかな、よくわからないけれど(どこか書かれていた? 見落としたかな)、吉郎も、英語が得意な菜々緒も、なんとなく私立文系っぽい。
これ、続編って出ていないのかな、出ていれば読みたいな。
男の子2人と男の子っぽい女の子1人の、仲のいい3人組がメインになっている小説なのだけれど、表紙カバーの折り返しのところの紹介文は――引用してみれば、
<何んでもすぐにあきらめちゃうのっていうのはダメ。一生懸命頑張って、頑張って、頑張る男の子って素敵!/わたし菜々緒。気が強くてわがままみたいに見えるけど、女の子って本当は繊細で、心優しいものなんだよ。/吉郎、成章、菜々緒。三人とも浪人生。でもまだ人生は始まったばかり――。/三人トリオの恋と友情とうっとおしくも心楽しい浪人生活を描く、書下し青春ストーリー。>
となっている。この、本文の雰囲気とはまったく違う、しかも、本文では男の子1人(=吉郎)視点なのに、女の子視点に変わってしまっている文章はいったい何? 文章の悪さについては人のことがまったく言えないけれど、例えば「あきらめちゃうのっていうのはダメ」みたいな日本語も個人的には無理(涙)。なんだろう、昔の少女向けジュニア小説の文体なのかな、これ。あと、「一生懸命頑張って、頑張って、頑張る男の子って素敵!」というのは、本文のどのあたりと関係しているのやら…。あ、逆に受け取っているのか。本文中で菜々緒(関口菜々緒)が言っているのは、頑張らないやつは大嫌い、とか、やってみもしないうちから負けを認めているやつが嫌い、みたいなこと。もう1点、「吉郎」は、本文の初出のときには「よしろう」とルビがふられているのに、この紹介文では「よしお」となっている。お父さんが「伸郎」で「のぶお」だから混じってしまったのか。こういう漢字の読みの異なりは、何か別の小説文庫本の紹介文でも見かけた覚えがあるけれど、どうなのかな…? ま、たんなる誤植かもしれないけど。
で、浪人生小説としてはどうなのかな? 5月の初め、最初のあたりの浪人生トリオの会話の場面とかは、ちょっと読めるかもしれない。でも、大学を女の子(想いを寄せる異性)に喩えて「ふられる」――みたいな話は、やっぱり時代を感じてしまう。いまの18歳くらいの人は使うのかな、これ?(若くないのでわからんです)。「大学にふられる」みたいな言い方自体は(知らないけれど)もっとずっと昔からあったのではないかと思うけれど。あと、吉郎くん(根本吉郎)がちょっと考えている話題、浪人生というのはやっぱり不幸な存在、不運な存在なのだろうか? ――客観的には決められないだろうし、そう思うか思わないかは、どれくらい努力してどれくらいの自信を持って(現役のときに)大学を受けたかにもよるかと思う。具体的な名前が思い出せないけれど、この吉郎くん以上に不幸を感じている浪人生が出てくる小説が何かあったと思う。予備校については、3人とも同じところに通っているらしいけれど、模試の結果(成績)が張り出されているのを、眺める場面が描かれているくらい。
家族に関しては、吉郎はお母さんは亡くなっていて、お父さん(=伸郎、「のぶお」と読む)と2人暮らし。お父さんの恋人(片山則子)も出てきたりするのだけれど、再婚するかしないかみたいなこととかが受験勉強のさまたげになる、みたいなことにはなっていない。お父さんも、息子をけっこうほっといてくれる性格っぽい。成章くん(木田成章)のほうがちょっと大変らしく、1人息子で家というか父親のあとを継ぐことを期待されている(大学の商学部、または経営学を教えてくれる専門学校でも可)のだけれど、絵が描きたい(というか部屋中にすでに描いている)……みたいな小説にありがちな状況に陥っている、らしい。最後まで読んでもまだオヤジさんとはぶつかっていないままらしい。もう1人の菜々緒の家庭環境が、よくわからないな。妹(美緒)は、なんていうか、元気な高校生としてちらほら登場してきているけれど。そう、関係ないけれど、住んでいるのはマンションの5階らしいのだけれど、家族暮らしの部屋の向かいが、どうして大学生の1人暮らしの部屋なの?(広さが違うにしてもちょっと違和感が…ないですか?)。
ネタバレしてしまうけれど、恋愛がらみでは(というかそちらがメインか)、吉郎くんは、菜々緒の向かいに住んでいて吉郎が「ふられた」大学(R大)に通っている小倉加寿子(2つ歳上)に、想いを寄せるというか、彼女のことがちょっと気になって、付き合うまではいかないのだけれど、結局、ふられてしまう。加寿子(かずこ)は高飛車な感じで、ちょっと嫌な性格として書かれている感じだけれど、なんていうか、やっぱり浪人生の敵は大学生、みたいな感じなのかな?(特に現役で合格した人は、浪人生の気持ちがまったくわからない、みたいな?)。一方の成章くんのほうは、大学受験とは関係がないけれど、画材屋の店員の女の子(ちいちゃん=林千鶴)と、とりあえず付き合いだす……のだけれど、でも、みたいな感じ。成章については、最後、まだ結論が出ないまま終わっちゃっている。そういえば、全体的に、吉郎と成章が対照的に描かれていそうで、でも、そんな感じにはなっていないな(それほどではない感じ)。
場所は例によって、東京。“東京小説”、ちょっと世の中に多すぎだよね。もっと地方が舞台の浪人生小説を読みたいな。描かれているのは5月の初めから、えーと、夏くらいまで?(ちゃんと読み直さないとわからない)。あと、書き忘れたことは――、そう、菜々緒さんは、浪人生小説の定番、バイクに乗っている。吉郎くんのほうは、レースにも出られるような自転車。志望も書き忘れたかな、よくわからないけれど(どこか書かれていた? 見落としたかな)、吉郎も、英語が得意な菜々緒も、なんとなく私立文系っぽい。
これ、続編って出ていないのかな、出ていれば読みたいな。
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