「しょしん」ではなく「うぶ」? ほかの本でも読めるかもしれないけれど、図書館にあっていま手元にあるのは、『川上宗薫芥川賞候補作品集』(近代文藝社、1983)。収録作5篇がすべて落選作というある意味ですごい本なのだけれど(『笙野頼子三冠小説集』の逆?)、「初心」は2番目に収録されている。初出は書かれていなくて、別に調べたところ、これは1954年下半期の候補作であるらしい。たぶん雑誌掲載も同じ年であると思う。作中の年も水素爆弾の実験云々と言っているので、たぶん同じ年。
ストーリー自体はたいしたことがなくて。2度目の大学受験失敗後、心癒されるために訪れていた鎌倉の叔母のもとから東京へ戻ってみると、家に新しい女中が来ていて、要するにその子のことを好きになって、もう1人の女中や両親の目をかわしつつ、アプローチを試みるけれど…、みたいな話。「初心」なだけでなく初恋でもあるんだっけ? いずれにしても失恋で終わることが目に見えている感じ。文体というか文章は、個人的には読みにくい箇所がけっこうあったけれど、意外と古さは感じなかったです。
主人公・宏の志望大学は「最難関と言われる官立の大学」とのこと。官立(というか国立)で最難関であれば、常識的に考えて東大かな。志望理由は、その大学を出ていて実業界で成功している父親(沢田)がほかの大学を受けるのを許してくれないから、らしい。2浪に突入した理由は、そのことにも関係していて、
<宏には、親の意向を黙殺してまで他の大学に入らねばならぬ根拠はどこにも見出せなかったが、と言って、最難関の大学を是が非でも突破しようという気組の方は更に薄かった。(略)それに、宏は、学科以外の本を沢山読み過ぎていた。>(p.80)
とのこと。本の読みすぎ(要するに勉強していないの)はいいとして、やっぱり将来の目標や夢がない感じではある。何かあれば動機付けになるだろうし、場合によっては両親(お母さんはクリスチャン)に反抗できたりするだろうけど。「性格」は若干お坊っちゃんっぽいのかな。個人的に女中(お手伝いさん)がいると聞くとどうも家が金持ち、みたいなイメージがあって(汗)。あまり関係ないか、ちょっと古めの小説を読んでいるとけっこう出てくるし(cf. 安岡章太郎「青葉しげれる」、庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』など)。宏の女中への恋も、社会的な身分が違うからどうのこうの、といった感じではそれほどないような。でも、まぁそうなのか。貧しい漁村出身の女中(都留)は雇用主の息子に手を出したら首になってしまうらしい。
家族というか家には、繰り返しになるけれど、両親と女中2人(もともといる三千代と新しくきた都留)がいる。あと、そう、犬を飼っている(秋田犬、名前は…「レツ」か)。ぜんぜん関係ないけれど、犬を散歩させるときに「鎖」のままさせていている。リード(紐)に繋ぎなおしてあげればいいのにね。約半世紀も前の小説だからなのか、紐を「鎖」と言っているだけなのか(どっちでもいいけど)。季節は春くらいから最後、梅雨時期まで進んでいる。自宅浪人ではなく予備校へは通っている(時代的に予備校にはあまり女の子がいない? だから近場で?)。
勉強についてはあまり書かれていないような。してないと言えばしていないのかもしれない。最初のあたりの、水爆実験事件・騒動に対する宏の気分(<日本国中が大変なことになればよい>、p.81)は、あれと同じか、1999年の受験生が「恐怖の大王」の降臨を望んだり、降って来なかった結果、残念がったりする気分。要するに勉強したくない、という現実逃避?(な、だけではないような?)。
ストーリー自体はたいしたことがなくて。2度目の大学受験失敗後、心癒されるために訪れていた鎌倉の叔母のもとから東京へ戻ってみると、家に新しい女中が来ていて、要するにその子のことを好きになって、もう1人の女中や両親の目をかわしつつ、アプローチを試みるけれど…、みたいな話。「初心」なだけでなく初恋でもあるんだっけ? いずれにしても失恋で終わることが目に見えている感じ。文体というか文章は、個人的には読みにくい箇所がけっこうあったけれど、意外と古さは感じなかったです。
主人公・宏の志望大学は「最難関と言われる官立の大学」とのこと。官立(というか国立)で最難関であれば、常識的に考えて東大かな。志望理由は、その大学を出ていて実業界で成功している父親(沢田)がほかの大学を受けるのを許してくれないから、らしい。2浪に突入した理由は、そのことにも関係していて、
<宏には、親の意向を黙殺してまで他の大学に入らねばならぬ根拠はどこにも見出せなかったが、と言って、最難関の大学を是が非でも突破しようという気組の方は更に薄かった。(略)それに、宏は、学科以外の本を沢山読み過ぎていた。>(p.80)
とのこと。本の読みすぎ(要するに勉強していないの)はいいとして、やっぱり将来の目標や夢がない感じではある。何かあれば動機付けになるだろうし、場合によっては両親(お母さんはクリスチャン)に反抗できたりするだろうけど。「性格」は若干お坊っちゃんっぽいのかな。個人的に女中(お手伝いさん)がいると聞くとどうも家が金持ち、みたいなイメージがあって(汗)。あまり関係ないか、ちょっと古めの小説を読んでいるとけっこう出てくるし(cf. 安岡章太郎「青葉しげれる」、庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』など)。宏の女中への恋も、社会的な身分が違うからどうのこうの、といった感じではそれほどないような。でも、まぁそうなのか。貧しい漁村出身の女中(都留)は雇用主の息子に手を出したら首になってしまうらしい。
家族というか家には、繰り返しになるけれど、両親と女中2人(もともといる三千代と新しくきた都留)がいる。あと、そう、犬を飼っている(秋田犬、名前は…「レツ」か)。ぜんぜん関係ないけれど、犬を散歩させるときに「鎖」のままさせていている。リード(紐)に繋ぎなおしてあげればいいのにね。約半世紀も前の小説だからなのか、紐を「鎖」と言っているだけなのか(どっちでもいいけど)。季節は春くらいから最後、梅雨時期まで進んでいる。自宅浪人ではなく予備校へは通っている(時代的に予備校にはあまり女の子がいない? だから近場で?)。
勉強についてはあまり書かれていないような。してないと言えばしていないのかもしれない。最初のあたりの、水爆実験事件・騒動に対する宏の気分(<日本国中が大変なことになればよい>、p.81)は、あれと同じか、1999年の受験生が「恐怖の大王」の降臨を望んだり、降って来なかった結果、残念がったりする気分。要するに勉強したくない、という現実逃避?(な、だけではないような?)。
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