リンダブックス、2007。堀北真希主演の映画の、脚本(渡邊睦月)がもとになっているらしいノベライズドな本。なんていうか、内容にも文体にも深みがぜんぜんないような…。最後まで読んでも、ただ読み終わったという感じです。

 <幼い頃に両親を亡くしたみなとには何でも話せる文通相手のナイトがいた。でも、彼のことは顔を見たこともなければ、同じ年の「男の子」ということ以外は何も知らなかった。そんなある日、みなとはシュウと出会い、恋に落ちる。「ナイト、あたし好きな人ができたみたい!」みなとはさっそくナイトに自分の気持ちを込めた手紙を送るが……。>(カバー後ろより。改行はつめました。)

おおざっぱにいえば(まんまだけれど)“三角関係もの”? 1人称×3というか、最初のうちは文通しているらしき2人が語り手となっていて(「私」と「俺」が交互に語っている)、あとのほうではもう1人(「俺」=シュウ)も語り手として加わっている。――そんな説明は要らないですか(汗)。コンビニで働くフリーターの藤木みなと(19歳、両親は亡くなっていて祖母の菊江と2人暮らし)が好きなるのが、コンビニのお客で、予備校生の唐沢シュウ(2浪、予備校近くのマンションで1人暮らし、父親は病院のたぶん院長先生)。それを手紙で知ったみなとの文通相手のナイトは嫉妬するというか、みなとからシュウを遠ざけようとする。

浪人がらみの話でちょっと面白いと思ったのは、ナイトがシュウを「(医者の)バカ息子」だと決めつける、その決めつけ方かな(p.55のあたり)。もちろんシュウくん側にもちゃんと言い分というかはあって、あとのほうである程度、父親との関係などは語られている。たいていの小説では、“医者の息子”という設定はたんなる設定(書き割り)になりやすいのだけれど、この小説では(たぶん映画でも)いちおう、病院も父親も出てくるので、それほどいいかげんな設定というわけではない、けれど、父親が医者である浪人生という設定じたいに、「またそれか」な古くささとか既視感はあるかもしれない。(あと、ストーリーにはある程度、有機的に絡んでいるけれど、シュウくんの趣味が写真=芸術系、というのも、個人的には「またか」な感じ。)

最後、痛みやらせつなさを伴いつつ、いちおうハッピー・エンディングになっているけれど、その後、この2人はどうなったのかな? 意外と早々に別れていたりして。――そんな夢のないことを言ったらあかんか(汗)。浪人生(男)と大学生(女)ではうまく行かないものも、大学生(男)とフリーター(女)ではうまく行くのかもしれない。

ちなみに、描かれているのは冬(年は明けている)から春くらいまで。舞台となっているのは、タイトルから判断して(本文からもわかるかもしれないけれど)たぶん東京。
 

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