竹本健治 『クレシェンド』
2007年12月11日 読書
画像と自分が読んだ本の表紙とが違うな。角川書店、2003。なんだかよくわからないけれど、ページが由良由良、布流布流(ゆらゆら、ふるふる)しすぎ!(涙)。※以下いつものようにネタバレ(たぶんしていると思います)にはお気をつけください。言語文化論というか、日本文化論みたいなことについての、真面目な大学生が書いたレポートのような話はどうでもいいから(よくないか(汗)、大いに関係しているのだろうけれど)、主人公が見るようになった幻覚のようなもの――最後には外在化、現実化もしている――が、結局のところ、どんな理由からどういう条件で起こるのか、とか、主人公と似たような性格の日本語を母語とする人間ならごまんといるだろうに、どうしてこの人だけに幻覚(?)が起こるのか、とか、もっときちんと(読者に対して)言語化して教えて欲しかったと思う。私だけが読めていないのかもしれないけれど、個人的にはだいぶ不満が残る小説でした。
最近まで大学(恒河大学)の研究施設であった会社(コンピュータ・ソフトの会社『アプリカ』)の地下2階に資料を探しに行って、幻覚(?)を見る恐怖体験をした主人公、矢木沢孝司(年齢は30歳近く)はそのあと、出入りしているサロンのような場所(『スタジオスーパーノバ』)で、そのことについてほかの人たちに話すのだけれど、その場に叔父さんと来ていた真壁岬という浪人中の女の子がいて……みたいな感じで浪人生が登場してくる。北海道から出てきた色白の美人でフレームなしの眼鏡をかけていて、冷静で知的、でも冷たくはなく、理の通った丁寧な話し方をする……まぁ、小説だからどんな設定でも許してあげて(汗)。矢木沢の話に興味を持ったらしく、自分にはそうすることが必要だから、みたいなことで(?)以降、調べごとなど、あれこれ協力的な行動をとってくれる。関係ないけれど、主人公がしている仕事がゲーム製作で――そのゲーム(RPG、仮タイトル『ゴー・イースト』)の内容と小説自体も微妙に重なっているのだけれど――、ヒロインの名前が「岬」だから、滝本竜彦『NHKへようこそ!』をちょっと思い出す、かな。しかも、ネタバレしてしまうけれど、岬は北海道で引きこもり同然の状態にあったらしい。東京にいる理由はそれを見かねた叔父さんが連れ出した、という経緯らしい。
高校は卒業できているようだけれど、去年=高校3年のとき、……あまりネタバレしすぎてもまずいかな、小説的にはまたそんな話か、みたいな既視感がある理由です。それで大学受験には失敗したのではなく、受験じたいしなかったらしい。勉強はできないわけではない、というよりむしろできるようで、具体的には<恒河大学あたりなら、今すぐ受験しても受かる自信はあります>(p.68)と言う岬に対して、八木沢は、<関東で私学の十指に数えられる恒河大学が楽勝なら、東大や慶応でも充分に圏内のはずだ>(同頁)と頭のなかで語っている。個人的には、関東の私学で例えば偏差値ランキング的に第10位の大学(関東というかすべて東京の私大だろう)に余裕で合格できるとしても、東大までが合格圏内であるとはとても思えないのだけれど、どうだろう?(まぁいいか)。高校は女子校で寮に入っていたらしい。どうでもいいけれど、中学・高校では6年間、図書委員だったそうである(中高一貫の私立全寮制な女子校?)。あとのほうでだけれど、大学では哲学を勉強したいと言っている。そういえば、小説では初めて見かけたかもしれない、哲学志望の浪人生。八木沢が精神分析というか心理カウンセリングというかを受けるのだけれど(天野医師)、その手のことにも興味があるっぽいから、ジャック・ラカンとか? この小説的には、言語学志望とかでもいいのにね(ソシュールがあやしげな(?)アナグラムに凝っていたのは有名な話)。あと、神話(学)って大きな括りでは何? 宗教学? 社会学? そんな学部・学科でもいいかもしれない。
ちなみに、描かれているのは、春(初夏)から9月くらいまで。そういえば、いちおう未成年の少女と頻繁に会ったり、しまいには小笠原にある無人島でいっしょに生活したりするのに、主人公は顔を知っている彼女の叔父さん(多岐川)に対してなんの断りもしていないような? まぁ、性格もしっかりしている岬が、ちゃんと説明して許可を得ているのかもしれないけれど。あと、そういえば、ゲーム製作も結局、途中で放り出してしまったのか。主人公が担当していた、シナリオ作家の宮本沙門(ジュブナイル作家)にはちゃんと謝ったのかな?
[追記]文庫は角川文庫、2017.11。購入した。「解説」(東雅夫)によれば、初出は『KADOKAWAミステリ』2001年1月号~2002年7月号らしい。
[追記2]『緑衣の牙』(光文社文庫、1998.3。『眠れる森の惨劇』カッパ・ノベルス、1993.8改題)には高校生の真壁岬が出てくるらしい。あと、画像が自分の読んだものと違った理由は、単行本は箱入りだったらしくて(ネット情報)、たぶん私が図書館で借りて読んだのは、箱がなくてむき出し状態だったからかもしれない。よくわからないけど。
最近まで大学(恒河大学)の研究施設であった会社(コンピュータ・ソフトの会社『アプリカ』)の地下2階に資料を探しに行って、幻覚(?)を見る恐怖体験をした主人公、矢木沢孝司(年齢は30歳近く)はそのあと、出入りしているサロンのような場所(『スタジオスーパーノバ』)で、そのことについてほかの人たちに話すのだけれど、その場に叔父さんと来ていた真壁岬という浪人中の女の子がいて……みたいな感じで浪人生が登場してくる。北海道から出てきた色白の美人でフレームなしの眼鏡をかけていて、冷静で知的、でも冷たくはなく、理の通った丁寧な話し方をする……まぁ、小説だからどんな設定でも許してあげて(汗)。矢木沢の話に興味を持ったらしく、自分にはそうすることが必要だから、みたいなことで(?)以降、調べごとなど、あれこれ協力的な行動をとってくれる。関係ないけれど、主人公がしている仕事がゲーム製作で――そのゲーム(RPG、仮タイトル『ゴー・イースト』)の内容と小説自体も微妙に重なっているのだけれど――、ヒロインの名前が「岬」だから、滝本竜彦『NHKへようこそ!』をちょっと思い出す、かな。しかも、ネタバレしてしまうけれど、岬は北海道で引きこもり同然の状態にあったらしい。東京にいる理由はそれを見かねた叔父さんが連れ出した、という経緯らしい。
高校は卒業できているようだけれど、去年=高校3年のとき、……あまりネタバレしすぎてもまずいかな、小説的にはまたそんな話か、みたいな既視感がある理由です。それで大学受験には失敗したのではなく、受験じたいしなかったらしい。勉強はできないわけではない、というよりむしろできるようで、具体的には<恒河大学あたりなら、今すぐ受験しても受かる自信はあります>(p.68)と言う岬に対して、八木沢は、<関東で私学の十指に数えられる恒河大学が楽勝なら、東大や慶応でも充分に圏内のはずだ>(同頁)と頭のなかで語っている。個人的には、関東の私学で例えば偏差値ランキング的に第10位の大学(関東というかすべて東京の私大だろう)に余裕で合格できるとしても、東大までが合格圏内であるとはとても思えないのだけれど、どうだろう?(まぁいいか)。高校は女子校で寮に入っていたらしい。どうでもいいけれど、中学・高校では6年間、図書委員だったそうである(中高一貫の私立全寮制な女子校?)。あとのほうでだけれど、大学では哲学を勉強したいと言っている。そういえば、小説では初めて見かけたかもしれない、哲学志望の浪人生。八木沢が精神分析というか心理カウンセリングというかを受けるのだけれど(天野医師)、その手のことにも興味があるっぽいから、ジャック・ラカンとか? この小説的には、言語学志望とかでもいいのにね(ソシュールがあやしげな(?)アナグラムに凝っていたのは有名な話)。あと、神話(学)って大きな括りでは何? 宗教学? 社会学? そんな学部・学科でもいいかもしれない。
ちなみに、描かれているのは、春(初夏)から9月くらいまで。そういえば、いちおう未成年の少女と頻繁に会ったり、しまいには小笠原にある無人島でいっしょに生活したりするのに、主人公は顔を知っている彼女の叔父さん(多岐川)に対してなんの断りもしていないような? まぁ、性格もしっかりしている岬が、ちゃんと説明して許可を得ているのかもしれないけれど。あと、そういえば、ゲーム製作も結局、途中で放り出してしまったのか。主人公が担当していた、シナリオ作家の宮本沙門(ジュブナイル作家)にはちゃんと謝ったのかな?
[追記]文庫は角川文庫、2017.11。購入した。「解説」(東雅夫)によれば、初出は『KADOKAWAミステリ』2001年1月号~2002年7月号らしい。
[追記2]『緑衣の牙』(光文社文庫、1998.3。『眠れる森の惨劇』カッパ・ノベルス、1993.8改題)には高校生の真壁岬が出てくるらしい。あと、画像が自分の読んだものと違った理由は、単行本は箱入りだったらしくて(ネット情報)、たぶん私が図書館で借りて読んだのは、箱がなくてむき出し状態だったからかもしれない。よくわからないけど。
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