西村京太郎 『おれたちはブルースしか歌わない』
2008年2月5日 読書
講談社、1975/講談社文庫、1982/講談社ノベルス、2002。画像はノベルス版、手元にあるのは文庫版。――思ったよりは面白かったけれど、でも、うーん…、微妙かな。推理小説としても。※毎度書いていますが、以下、ネタバレにはご注意ください。
<若い音楽グループが作った自信作が、いつの間にか誰かに盗まれ、しかもその曲はヒットチャートを急上昇中。アタマにきた若者たちが、いささか弱い推理力とオンボログルマを動員して犯人さがしに狂奔すると、やがて奇妙な殺人劇が。青春特有の野望と傷つきやすい心理とを巧みに本格推理に組み込んだ長篇。>(文庫カバーの後ろより。)
1人称は「おれ」で、いわゆる“1人称饒舌体”かといえば、いちおうそうかもしれない(19歳なので、“ティーンエイジ・スカース”とも言えるかもしれない)。ちゃんと読んだことがないのだけれど、見た感じでは、小峰元の『アルキメデスは手を汚さない』よりこちらのほうが『ライ麦畑』&『赤頭巾ちゃん』に似ていると思う。小峰元ほど、若者の風俗的なアイテムがちりばめられていないので、そのぶん古くなっていない気も。
「おれ」(矢島喜一郎)は、亡くなった両親が残してくれた渋谷区にある小さな家で1人暮らし。バンドというかグループサウンズ「ザ・ダックスフント」の練習場にもなっているその家で、半年前から飼っていた犬(ダックスフントの「ロン」)が突然いなくなり、メンバー全員(5人)で探すのだけれど、見つからず。そういえばそのロンがやってきた前夜には通りの向かいで死亡事件があったことを思い出して、そちらを調べてみると、被害者の娘が、父親(私立探偵)を手伝って静岡に手紙を書いたことがある、みたいなことを言う。それとは別口で、「おれ」がたまたま聴いた「ラジオ静岡」で、自分たちの曲(『シンデレラの罠』)にそっくりな曲が流れ、ヒットチャートの上位に入っている、……みたいなことで、もともと行く計画だったのを前倒しして、5月の連休(今でいえばゴールデンウィーク?)に、メンバー1人の叔父が経営している静岡の旅館(もともと武家屋敷)に行くことに。そこで連続殺人が起こって、……みたいな話。
「おれ」はいちおう浪人生(2浪)なのだけれど、この小説も例によって(?)、浪人だからどうのこうの、という話は、ほとんどないかな。なくはないのだけれど、個人的にあまり興味を引かれない、というか。どんな大学を受けてどんなふうに落ちたのか、とかそういう説明もないので、浪人中の受験生が読んでも、精神的にも実用的にも、ほとんど役には立たないと思う(というか、小説ってそうやって読むものじゃないけれど(汗))。そう、経済的にはどんな感じだったっけ? 両親が家のほかに56万円の預金を残してくれていて、あと、1ヶ月アルバイトして1ヶ月働かない、みたいな生活を繰り返している、のか。預金には手を付けていないらしいので、2度の大学受験の費用とかはそのアルバイト代とかでどうにかなった? 合格した場合の入学金・年間の授業料は、大丈夫なのか?(うーん…)。いずれにしても、この主人公の理想的な進路は、大学とかではなく、バンド(GS)でのプロデビューとかなので、どうでもいいことかもしれないけれど。あ、でも、その場合、連続殺人事件のあと(ネタバレしてしまうけれど)、またメンバーを集めなくてはいけないか。そもそも主人公を入れて5人のメンバーが、もともとどういう関係だったのかが、ぜんぜん書かれていないな、この小説。(そういえば、家族関係みたいなものも、あまり書かれていない小説だったかな。人が亡くなれば、報道関係の人たちがやってくる前に、家族がやってきそうな気もするけれど。)
関係ないけれど、「西村京太郎」というのはペンネームだったのか、知らなかったです。「解説」(二上洋一)で本名が書かれていて、主人公の名前(「矢島喜一郎」)というのは、それを2文字換えたものになっているようだ。旅館=武家屋敷で殺人事件が起こると、「おれ」から「(和製)コロンボ」とあだ名されてしまう刑事が登場してくるのだけれど、こちらの名前は「西川一郎太」。説明はいらないと思うけれど、本名ではなく筆名のほうが2文字変わっていて、最後の2文字の順番も入れ替わっている。
<若い音楽グループが作った自信作が、いつの間にか誰かに盗まれ、しかもその曲はヒットチャートを急上昇中。アタマにきた若者たちが、いささか弱い推理力とオンボログルマを動員して犯人さがしに狂奔すると、やがて奇妙な殺人劇が。青春特有の野望と傷つきやすい心理とを巧みに本格推理に組み込んだ長篇。>(文庫カバーの後ろより。)
1人称は「おれ」で、いわゆる“1人称饒舌体”かといえば、いちおうそうかもしれない(19歳なので、“ティーンエイジ・スカース”とも言えるかもしれない)。ちゃんと読んだことがないのだけれど、見た感じでは、小峰元の『アルキメデスは手を汚さない』よりこちらのほうが『ライ麦畑』&『赤頭巾ちゃん』に似ていると思う。小峰元ほど、若者の風俗的なアイテムがちりばめられていないので、そのぶん古くなっていない気も。
「おれ」(矢島喜一郎)は、亡くなった両親が残してくれた渋谷区にある小さな家で1人暮らし。バンドというかグループサウンズ「ザ・ダックスフント」の練習場にもなっているその家で、半年前から飼っていた犬(ダックスフントの「ロン」)が突然いなくなり、メンバー全員(5人)で探すのだけれど、見つからず。そういえばそのロンがやってきた前夜には通りの向かいで死亡事件があったことを思い出して、そちらを調べてみると、被害者の娘が、父親(私立探偵)を手伝って静岡に手紙を書いたことがある、みたいなことを言う。それとは別口で、「おれ」がたまたま聴いた「ラジオ静岡」で、自分たちの曲(『シンデレラの罠』)にそっくりな曲が流れ、ヒットチャートの上位に入っている、……みたいなことで、もともと行く計画だったのを前倒しして、5月の連休(今でいえばゴールデンウィーク?)に、メンバー1人の叔父が経営している静岡の旅館(もともと武家屋敷)に行くことに。そこで連続殺人が起こって、……みたいな話。
「おれ」はいちおう浪人生(2浪)なのだけれど、この小説も例によって(?)、浪人だからどうのこうの、という話は、ほとんどないかな。なくはないのだけれど、個人的にあまり興味を引かれない、というか。どんな大学を受けてどんなふうに落ちたのか、とかそういう説明もないので、浪人中の受験生が読んでも、精神的にも実用的にも、ほとんど役には立たないと思う(というか、小説ってそうやって読むものじゃないけれど(汗))。そう、経済的にはどんな感じだったっけ? 両親が家のほかに56万円の預金を残してくれていて、あと、1ヶ月アルバイトして1ヶ月働かない、みたいな生活を繰り返している、のか。預金には手を付けていないらしいので、2度の大学受験の費用とかはそのアルバイト代とかでどうにかなった? 合格した場合の入学金・年間の授業料は、大丈夫なのか?(うーん…)。いずれにしても、この主人公の理想的な進路は、大学とかではなく、バンド(GS)でのプロデビューとかなので、どうでもいいことかもしれないけれど。あ、でも、その場合、連続殺人事件のあと(ネタバレしてしまうけれど)、またメンバーを集めなくてはいけないか。そもそも主人公を入れて5人のメンバーが、もともとどういう関係だったのかが、ぜんぜん書かれていないな、この小説。(そういえば、家族関係みたいなものも、あまり書かれていない小説だったかな。人が亡くなれば、報道関係の人たちがやってくる前に、家族がやってきそうな気もするけれど。)
関係ないけれど、「西村京太郎」というのはペンネームだったのか、知らなかったです。「解説」(二上洋一)で本名が書かれていて、主人公の名前(「矢島喜一郎」)というのは、それを2文字換えたものになっているようだ。旅館=武家屋敷で殺人事件が起こると、「おれ」から「(和製)コロンボ」とあだ名されてしまう刑事が登場してくるのだけれど、こちらの名前は「西川一郎太」。説明はいらないと思うけれど、本名ではなく筆名のほうが2文字変わっていて、最後の2文字の順番も入れ替わっている。
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