中町信 『湯煙りの密室』
2008年3月9日 読書講談社ノベルス、1992/講談社文庫、1995。中町信ってずっとなんとなく気になっていた作家の1人だったので、とりあえず今回1冊読めてよかったです。こんな機会(どんな機会?)でもなければ一生読まなかったかもしれない。文体というかはちょっと古いというか、登場人物がカタコトでしゃべっている感じがちょっとするかな。会話だけでなく地の文もか。――ま、それはそれとして、※以下、いつものようにネタバレなどにはご注意ください。
<ニセの大学合格通知で人生を狂わされた受験生が、温泉地・指宿で殺された。人の出入りの途絶えた露天風呂から消えた犯人とおぼしき人物はどこへ行ったのか? 事件の真相を探る受験生の姉に、真実を告げようとした友人も殺害される。事件の謎は深まるばかり。文体トリックの名手が読者の仕掛けた罠とは。>(文庫カバーより。)
ひと言でいえば、弟を殺されて姉が犯人探しをするというか、そんな感じの内容。プロローグなどを除いて、視点はずっとそのお姉さん(八千草洋子、出版社勤務)にある。家庭環境がよくわからないけれど、弟(英彦、2浪していた予備校生)と埼玉県は大宮市で2人暮らししているっぽい。で、日本では試験が冬に行なわれることが多いから、試験日に雪が降ったりすることも確率的に低くないよね(清水義範『学問ノススメ』など参照)。電車は全面的に動かない、タクシーその他も捕まらないとなったら、ふつう大学側が十分な救済措置を取ってくれるかと思うのだけれど、そんなこともないのか。試験開始を1時間も遅らせてやっただろう?(何の文句がある?)的な大学もあったりして(汗)。それで、2年も浪人して、雪による混乱のなか、試験はどうにか受けられたものの、偽りの内容の電話のせいで大学入学を棒に振ったとなると、やっぱりもう受験勉強はいやだ、みたいなことにもなるのも当然?
<「なら、もう一年やり直してみる?」/「気の遠くなる話だね、三浪なんて。もうたくさんだ。たくさんだよ、浪人ぐらしは」/(略)/「でも、それしかないんじゃないの?」/「大学は諦める。働きながら、音楽の勉強でもやろうかと思って」>(p.33)
時間が経って冷静になれば、考えも変わってくるかもしれないけれど。事実、本人が受験はやめると宣言しているのに、亡くなったあと、お姉さんのほうは弟が3浪すると考えていたふしがある(p.257、「つまり、英彦が三浪生活を余儀なくされたのは……」)。そもそも、この小説では(ネタバレしてしまうけれど)この英彦くんにも原因がないわけではなく、というかだいぶ非もあって、自業自得なことなのだけれど。そういえば(これもネタバレしてしまうけれど)、出てくる浪人生がみんな死んでしまうな、この小説(涙)。高校から予備校まで英彦の同級生で友達でもある津山吾一(英彦と同じ理由で“受験に失敗”)、説明は省かせてもらうけれど、大沼素子(1浪して“受験に失敗”、2浪することを決めている)、あと、前年に自殺しているという牛島友美(1浪→“受験に失敗”)。――合計4人も死ぬことになるのか。なので、“浪人生小説”として読んでも、微妙な感じです。浪人生にかぎらないけれど、こういう形で(どういう形で?)人が死んでいく小説って、犯人がだんだんとわかってしまうよね? ふつうまだ死んでいない人のなかに犯人がいるわけだから。あ、だんだんとわかっていくのは、推理小説としてはそれでいいのか(汗)。
<ニセの大学合格通知で人生を狂わされた受験生が、温泉地・指宿で殺された。人の出入りの途絶えた露天風呂から消えた犯人とおぼしき人物はどこへ行ったのか? 事件の真相を探る受験生の姉に、真実を告げようとした友人も殺害される。事件の謎は深まるばかり。文体トリックの名手が読者の仕掛けた罠とは。>(文庫カバーより。)
ひと言でいえば、弟を殺されて姉が犯人探しをするというか、そんな感じの内容。プロローグなどを除いて、視点はずっとそのお姉さん(八千草洋子、出版社勤務)にある。家庭環境がよくわからないけれど、弟(英彦、2浪していた予備校生)と埼玉県は大宮市で2人暮らししているっぽい。で、日本では試験が冬に行なわれることが多いから、試験日に雪が降ったりすることも確率的に低くないよね(清水義範『学問ノススメ』など参照)。電車は全面的に動かない、タクシーその他も捕まらないとなったら、ふつう大学側が十分な救済措置を取ってくれるかと思うのだけれど、そんなこともないのか。試験開始を1時間も遅らせてやっただろう?(何の文句がある?)的な大学もあったりして(汗)。それで、2年も浪人して、雪による混乱のなか、試験はどうにか受けられたものの、偽りの内容の電話のせいで大学入学を棒に振ったとなると、やっぱりもう受験勉強はいやだ、みたいなことにもなるのも当然?
<「なら、もう一年やり直してみる?」/「気の遠くなる話だね、三浪なんて。もうたくさんだ。たくさんだよ、浪人ぐらしは」/(略)/「でも、それしかないんじゃないの?」/「大学は諦める。働きながら、音楽の勉強でもやろうかと思って」>(p.33)
時間が経って冷静になれば、考えも変わってくるかもしれないけれど。事実、本人が受験はやめると宣言しているのに、亡くなったあと、お姉さんのほうは弟が3浪すると考えていたふしがある(p.257、「つまり、英彦が三浪生活を余儀なくされたのは……」)。そもそも、この小説では(ネタバレしてしまうけれど)この英彦くんにも原因がないわけではなく、というかだいぶ非もあって、自業自得なことなのだけれど。そういえば(これもネタバレしてしまうけれど)、出てくる浪人生がみんな死んでしまうな、この小説(涙)。高校から予備校まで英彦の同級生で友達でもある津山吾一(英彦と同じ理由で“受験に失敗”)、説明は省かせてもらうけれど、大沼素子(1浪して“受験に失敗”、2浪することを決めている)、あと、前年に自殺しているという牛島友美(1浪→“受験に失敗”)。――合計4人も死ぬことになるのか。なので、“浪人生小説”として読んでも、微妙な感じです。浪人生にかぎらないけれど、こういう形で(どういう形で?)人が死んでいく小説って、犯人がだんだんとわかってしまうよね? ふつうまだ死んでいない人のなかに犯人がいるわけだから。あ、だんだんとわかっていくのは、推理小説としてはそれでいいのか(汗)。
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