上・下、朝日ソノラマ文庫、1995。正直に言って読んでいる途中からこれはあまり面白くない、と思ってしまって、最後まで読み通すのがかなりしんどかったです(涙)。文体というか文章は読んでいてあまり苛々しないのだけれど、なんでだろう、何かが足りないのかな。だとしたら何が足りないの?(うーん…)。※以下、ネタバレにはご注意ください。

 <予備校をサボってのんびりと芝生の上で横になっていると、突然、上空をぷかぷかと漂っていた飛行船からステージ衣装をまとった美少女が落ちてきた――これが僕と明ノ星ありすとの出会いだった。人目もはばからずありすを襲う戦闘ヘリに、見るからに怪しげな黒スーツの男たち。そして、≪紙の魔術師≫瑞希と名乗るみょうちくりんな女や、≪アンタッチャブル≫もどきの荒っぽそうな連中もありす追跡に加わって、彼女を助けようとかけずり回る僕は、いつしか太陽系規模の巨大な陰謀の渦へと巻き込まれるのだった……。果たして連中が狙う、ありすの秘密とは――?>(上巻の後ろのところより。)

かわいい女の子が空から降ってくる落ちもの系、受身的で巻き込まれ型の主人公(1人称「僕」)、ややイモヅル式で女の子たくさんな(それほど多くないか)お花畑状態――漫画的、ライトノベル的なお約束小説というか?(よくわからないけれど)。内容・ストーリー的なことでは、個人的には(以前にも書いたような気がするけれど)追ったり追われたりするようなハリウッド映画っぽい話があまり好きではなくて…。あ、追われてはいるけれど、追いはしていないか。最初のへんでヘリコプターから銃撃されたりしているけれど、そういう場面とかも。(ふつうなら逃げられずにとっくに死んでいるよな。)

内容的なことでは、伏線がわかりやすすぎるきらいはあるかな。例えば(ネタバレしてしまうけれど)「僕」(本名不明、1浪)の予備校での唯一の知り合いで、「僕」が窮地に陥っているときにしばしば助けてくれる諸戸さん(いちおう2浪)の素性、正体とか。だいたいこんな感じかなと思っていると、だいたいそんな感じであるし。≪アンタッチャブル≫たち(=水星コネクション)とそのボスが、別に、ありすから彼女が封印している『船』(=『宇宙(そら)翔ける美姫(びき)』)を手に入れようとしているわけではないこととか、そんなに早くからわからなくてもいいと思う。あ、そうか、わかりやすいだけではなく、ひっぱりすぎなのかもしれない。“答え”(“謎”に対する種あかし)までがかなり長くなっている。でも、中学生くらいの人が読むなら(ソノラマ文庫だし)わかりやすいほうがかえっていいのかも。(かなしいかな、あたしゃ気の短いおっさんですから(涙)。)

あと、時代的なせいもあるのかもしれないけれど、ほとんどのキャラクターがうす味な気も。人の言葉を好意的に誤解する、思い込みキャラであるヒロインのありす(苗字の「明ノ星」は「あけのほし」と読む)にしても、ぜんぜん萌えないような…。ひまわりを思わせるアイドル衣装……この小説本が出版された1995年くらいは、どんな時代だったっけ? 思い出せないや(汗)。globe(小室ファミリー)はそれくらいじゃなかったっけ? アイドルじゃないけれど。そう、相川七瀬が♪夢見る少女じゃいられない、とか歌っていた気も。←あくまで個人的な記憶です(間違っていたらすみません)。作中で「僕」がツッコミを入れていたかどうかは覚えていないけれど、服が黄色いのはたぶん、最近まで本当にアイドルだったありすが、実は金星大統領(金星の象徴的な存在らしい)だから。金星→黄色みたいな感じ? 

ほかにも、時代だけでなくイラストのせいもあるかもしれないけれど、登場人物たちが着ているものが、微妙にダサいような…。黒スーツの男たちの女性リーダーというか、彼らから「お嬢様」と呼ばれている女の人なんて、喪服(!)を着ているし。色白の美人とか言われても、喪服はちょっと…(萌える人は萌えるのかな、私の感覚がおかしいのか)。そもそもどうして喪服を着ているのかという説明はあったっけ、作中で?(なかったような気がするのだけれど)。その喪服美女に雇われている、冥王星魔術師組合に所属する≪紙の魔術師≫である瑞希(みずき)――いま風にいえばツンデレ・キャラだろうけど、デレ化するまでが長い長い(涙)――にしても、どうして露出の多い巫女さん風な服装をしているのか、よくわからない。しかも、これもいまいち“萌え”に欠けているような。あ、和服もしくは和風の服が多いのか。もう1人、大正時代の女学生風の服を着た女の子(とりあえず名前なし)も出てくるし。――というか、そういう服装よりもキャラクターの性格や言動が魅力に欠けているのかな?(うーん…)。

いつも書いているようなことも書いておかないと。描かれているのは、5月のある1日(午前から夜まで)の出来事。通っている予備校(たぶん以降、通わなくなるのではないかと思うけれど)があるのは、駅の1つ隣りが神宮、みたいなことを言っているから、たぶんお約束な代々木とか、新宿とかそのへんであると思う(やっぱりYゼミが確率的には高い?)。「僕」は、「一介の浪人生」という言葉を何かできないことの言い訳として(?)繰り返し使っているのだけれど、読んでいてそれほど浪人生という感じはしないかな、やっぱり。たいていの“浪人生小説”がそうだけれど。ちなみに、「僕」は物理も生物も、英語も苦手らしい(『出る単』に汲々としているらしい)。「僕」の家族は、どうなっているのやら、ぜんぜん語られていない(出版年が1995年……関係ないか)。そういえば、「たいていのことができる」というオール・マイティな感じの諸戸さんが、2浪している理由は作中であきらかになるけれど、1浪している(していた)理由がわからないな。諸戸さんがマンションに住めているのは、親がお金持ちだからではなく、浪人生以外になにがしかの副業をしているから?(違うか)。作中の時代は、下巻の「あとがき」によれば、この世界(舞台)は同じ作者の“ティー・パーティーシリーズ”(講談社X文庫ティーンズハート)とつながっていて、その数年前であるらしい。そちらを読んでいないのでわからないけれど、『出る単』も出てきているし、そんなに昔ではないと思う。

(ぜんぜん関係ないけれど、そういえば、『ルドイア星惑』(日本テレビ系)の人たちって今どうしているの? あの番組(土曜日の深夜)、『カウントダウンTV』とかとザッピングしながらけっこう見ていたんだけど。)
 

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