手もとにあるのは『人でなしの恋』(創元推理文庫、1995)。その最初に収録されている1篇(全10篇)。初出は大正14年(1925年)であるらしい。初めて読んだ江戸川乱歩なのだけれど、うーん…、ちょっと微妙かもしれない。今後ほかの作品を読みたいとは、あまり思えなかったです。※以下、ネタバレをしているところがあるので、ご注意ください。

小説(「一」の冒頭)は、次のように始まっている。

 <僕の書生時代の話だから、ずいぶん古いことだ。年代などもハッキリしないが、なんでも、日露戦争のすぐあとだったと思う。>(p.9)

「日露戦争」っていつだっけ? また無知がばれてしまうな(涙)。調べてみると、→1904年から1905年?(あってますか?)。「すぐあと」というのは、主観的というか、人によってばらつきが出そうな気がするけれど、個人的には2年くらいまで、この場合なら1907年くらいまでなら許せるかな。1905年であれば(基準にしていいのかどうかわからないけれど)久米正雄の「受験生の手記」(『学生時代』)の作中年よりも7、8年くらい前になるのか。それよりも問題(というか)は「書生」という言葉のほうであると思う。個人的には「書生」というのは、作家とか、ちょっと偉い人の家(一軒家)に住み込んで、お使いを頼まれたり、留守番をしたりする(学校に通っている)学生、みたいなイメージがあるけれど、それは「書生」の一部だけなのか、知らんかったです(やっぱり無知…)。――上で引いた箇所は(1度改行されて)次のように続いている。

 <その頃、僕は中学校を出て、さて、上の学校へはいりたいのだけれど、当時僕の地方には高等学校もなし、そうかといって、東京へ出て勉強させてもらうほど、家が豊かでもなかったので、気の長い話だ、僕は小学校教員をかせいで、そのかせぎためた金で、上京して苦学をしようと思いたったものだ。なに、その頃は、そんなのがめずらしくはなかったよ。何しろ給料に比べて物価の方がずっと安い時代だからね。>(同頁)

えー!これで「書生」なの?(とかつい思ってしまうけれど、それは私の持っているイメージのほうが間違っているわけか…)。↑ほかにもわからないことだらけというか、頭に疑問符がたくさん浮んでしまうというか。中学を出ていれば小学校教員(代用教員?)はできるのか、それも知らなかったです。しかも、物価に比べてお給料も悪くないらしいし。(時代はもっとあとだけれど、作家ではたしか坂口安吾もしている、小学校の代用教員。落第したりして中学校を卒業するときにはだいぶ歳がいっていたみたいだけれど。)そういえば、いま大学(高校の上級学校)のない都道府県ってないよね、考えてみるとちょっとすごいことかもしれない。――んでさ、この「僕」は“浪人生”とは呼べるの? 呼べないの?(うーん…)。別に呼べなくて困るわけではないけれど。一般に(?)「書生」と言った場合、そのうちの何割くらいに“浪人生”が含まれているのか、がよくわからんです。ま、でも、とにかく、この人もしっかりお金を蓄えてから上京しないと(早瀬乱『三年坂 火の夢』みたいに)東京で人力車を引いたりする羽目とかになっちゃうよね。たいへんだ(「気の長い話」ってどれくらいなんだろう? そんなにすぐには貯まらないか)。そういえば、勉強のほうはあまり問題がないのかな、この人。

小説の主要部分に関係のない話ばかり書いてもアレなんで、ミステリ部分にも少しだけ触れておくと、「役者」は結局、誰か みたいな話? というか、ネタバレしてしまうけれど、結局のところ、新聞記者をしているR先輩(中学校の先輩)というのが何を考えていたのか、いるのか、がよくわからない。狐につままれたような読後感、ですが、それいいの?(いいとか悪いとかではないか(汗))。
 

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