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深谷忠記 『函館・芙蓉伝説の殺人』
2008年7月22日 読書
カッパ・ノベルス、1990/光文社文庫、1994。※いつものように以下、ネタバレにはご注意ください。
<浪人生・益子竜夫が何者かに刺殺された。死の直前に啄木の歌をつぶやいて……。文芸編集者・笹谷美緒は、その二ヵ月前、担当作家・秋野芙蓉子の部屋で竜夫を目撃していた。さらに二年前、竜夫が犯した婦女暴行事件で、芙蓉子が重要な証言をしていたことが判明。時と場所を越えた事件の鍵は、竜夫が残した歌にある!? 妖しく香る花の伝説が謎を呼ぶ傑作推理小説!>(文庫カバーより)
美緒&壮シリーズのなかの、花伝説シリーズの第3弾(最終作)であるらしい。
例によって残念ながら(?)この小説に出てくる浪人生も、ちゃんとした浪人生であるとは言えない感じかもしれない。益子竜夫(ましこ・たつお、21歳)のプロフィール的なことを整理すれば、高校は函館の「道立北陽高校」で、もともと「北海道文科大学」を受験して自宅から通うつもりでいたのに、高校3年の夏にある人に会ったことをきっかけに、卒業後は東京へ出ることにして、実際に翌年――受験した大学はたぶん落ちて――とげぬき地蔵のあたりのアパートから予備校通いを。志望大学や予備校の名前は不明、というか書かれていない。ほかのことをしていてたぶん、受験勉強も予備校通いもあまりしていなかったのではないかと思うけれど、それはともかく。その年の8月下旬くらいに起きた女子大学生強姦致傷事件の容疑者として逮捕され(12月に判決を受けて控訴せず少年刑務所で服役して)2年後の今年の2月に仮出所する。で、約2ヶ月後の5月9日には石川啄木の歌を最後の言葉にしてこの世から去ってしまう。(というか、ぜんぜん整理できていないな(涙)。)
年齢的には3浪目かもしれないけれど、2年前と今年とで合計7、8ヶ月くらい? 浪人中、実質的には1年も勉強していない感じである。あ、でも、拘置所&刑務所にいても勉強しようと思えばできるのかな? その場合、ちゃんと勉強していればまだ2月だから、出所してすぐにどこかの大学を受験して合格、みたいなことも可能? 実際には入学手続きとかいろいろとあって事実上、ほとんど無理かもしれないけど。(獄中では証明写真を撮らせてくれないとか、そういうシャバ(?)では当たり前にできることができないとか、ごちゃごちゃとありそう…。)ま、でも、いずれにしても竜夫くん、大学受験よりも本人にとっては大切なことがあったのだから、勉強していなくてもそれはそれでしょうがない。(ちなみに、浪人といえば、船岡憲二という弁護士が出てくるのだけれど、この人も2浪しているらしい。でも、司法試験は「京都の大学」卒業後の翌年には受かっているらしい。最初に受けたのがいつなのかわからないけれど、卒業後、司法浪人を1年しかしていないのに、大学浪人が2年になっているのは、この人の場合、恋愛にうつつを抜かしていたから?)
内容的なことについても少し。そう、読んでいて苦痛を感じたのは、いちばんの謎である竜夫と芙蓉子(ふよこ)の関係がかなり早い段階からばればれというか、少なくとも私にはこうではないかと想像できてしまって。なんていうか、基本的に鈍いほうなので、推理小説を読んでいてあまりそういう謎が解けてしまうことってないのだけれど。この小説の場合でも、時間の問題(というか)に関しては最後までわからなかったし。あと、これもけっこう早い段階で思ったことだけれど、浪人生に注目して読んでいるせいか、同じ作者の『タイム』(出版はこちらがあと)と似ているなと思ったです。浪人生が冤罪っぽいところとか、それに関して証人がキーになっているところとか。真犯人が誰なのかわからない(捕まらない)ところなんかも同じ。ほかに細かいところでは、書かれていて個人的にちょっと嬉しかったのは、“花物語”(というよりはギリシャ神話だっけ?)のナルキッソスとエコーの話(pp.138-40)。初めて知ったとき以来、私はこの話がどうも好きらしくて。ナルシストなナルシス(ナルキッソス)にエコーがふられて結局、声だけになってしまう、みたいな悲恋物語。なんで好きなのか自分でもよくわからないけれど。
<浪人生・益子竜夫が何者かに刺殺された。死の直前に啄木の歌をつぶやいて……。文芸編集者・笹谷美緒は、その二ヵ月前、担当作家・秋野芙蓉子の部屋で竜夫を目撃していた。さらに二年前、竜夫が犯した婦女暴行事件で、芙蓉子が重要な証言をしていたことが判明。時と場所を越えた事件の鍵は、竜夫が残した歌にある!? 妖しく香る花の伝説が謎を呼ぶ傑作推理小説!>(文庫カバーより)
美緒&壮シリーズのなかの、花伝説シリーズの第3弾(最終作)であるらしい。
例によって残念ながら(?)この小説に出てくる浪人生も、ちゃんとした浪人生であるとは言えない感じかもしれない。益子竜夫(ましこ・たつお、21歳)のプロフィール的なことを整理すれば、高校は函館の「道立北陽高校」で、もともと「北海道文科大学」を受験して自宅から通うつもりでいたのに、高校3年の夏にある人に会ったことをきっかけに、卒業後は東京へ出ることにして、実際に翌年――受験した大学はたぶん落ちて――とげぬき地蔵のあたりのアパートから予備校通いを。志望大学や予備校の名前は不明、というか書かれていない。ほかのことをしていてたぶん、受験勉強も予備校通いもあまりしていなかったのではないかと思うけれど、それはともかく。その年の8月下旬くらいに起きた女子大学生強姦致傷事件の容疑者として逮捕され(12月に判決を受けて控訴せず少年刑務所で服役して)2年後の今年の2月に仮出所する。で、約2ヶ月後の5月9日には石川啄木の歌を最後の言葉にしてこの世から去ってしまう。(というか、ぜんぜん整理できていないな(涙)。)
年齢的には3浪目かもしれないけれど、2年前と今年とで合計7、8ヶ月くらい? 浪人中、実質的には1年も勉強していない感じである。あ、でも、拘置所&刑務所にいても勉強しようと思えばできるのかな? その場合、ちゃんと勉強していればまだ2月だから、出所してすぐにどこかの大学を受験して合格、みたいなことも可能? 実際には入学手続きとかいろいろとあって事実上、ほとんど無理かもしれないけど。(獄中では証明写真を撮らせてくれないとか、そういうシャバ(?)では当たり前にできることができないとか、ごちゃごちゃとありそう…。)ま、でも、いずれにしても竜夫くん、大学受験よりも本人にとっては大切なことがあったのだから、勉強していなくてもそれはそれでしょうがない。(ちなみに、浪人といえば、船岡憲二という弁護士が出てくるのだけれど、この人も2浪しているらしい。でも、司法試験は「京都の大学」卒業後の翌年には受かっているらしい。最初に受けたのがいつなのかわからないけれど、卒業後、司法浪人を1年しかしていないのに、大学浪人が2年になっているのは、この人の場合、恋愛にうつつを抜かしていたから?)
内容的なことについても少し。そう、読んでいて苦痛を感じたのは、いちばんの謎である竜夫と芙蓉子(ふよこ)の関係がかなり早い段階からばればれというか、少なくとも私にはこうではないかと想像できてしまって。なんていうか、基本的に鈍いほうなので、推理小説を読んでいてあまりそういう謎が解けてしまうことってないのだけれど。この小説の場合でも、時間の問題(というか)に関しては最後までわからなかったし。あと、これもけっこう早い段階で思ったことだけれど、浪人生に注目して読んでいるせいか、同じ作者の『タイム』(出版はこちらがあと)と似ているなと思ったです。浪人生が冤罪っぽいところとか、それに関して証人がキーになっているところとか。真犯人が誰なのかわからない(捕まらない)ところなんかも同じ。ほかに細かいところでは、書かれていて個人的にちょっと嬉しかったのは、“花物語”(というよりはギリシャ神話だっけ?)のナルキッソスとエコーの話(pp.138-40)。初めて知ったとき以来、私はこの話がどうも好きらしくて。ナルシストなナルシス(ナルキッソス)にエコーがふられて結局、声だけになってしまう、みたいな悲恋物語。なんで好きなのか自分でもよくわからないけれど。
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