講談社、1995/講談社ノベルス、1997/講談社文庫、1998。読んだのは文庫本。小説ではない『文学の輪郭』(別の名前、中島梓)とかは少し読んだことがあったのだけれど、この作者の小説を読むのは今回が始めて。※以下、いちおうネタバレにはご注意ください(推理小説です)。

ひと言でいえば“パソコン通信小説”だろうね。ネットおカマな「姫」とか、乃南アサの『ライン』(講談社文庫、1997/『パソコン通信殺人事件』講談社ノベルス、1990)とけっこう被っているかもしれない。主人公が浪人生なことも、なぜか(?)被っているのだけれど、『ライン』の小田切薫(3浪)と違って、こちらの浪人生「ぼく」=滝沢稔(1浪)は浪人生であることの自覚が(なくはないけれど)けっこう薄い感じ。小説の始まりは、えーと…、1月14日か(1995年)。国公立大学(と一部の私立大学)の受験生たちはセンター試験のかなり直前だよね。「ぼく」は私大志望? というか、時期が時期の浪人生、「パソ通」をいったんやめてさっさと勉強しなさいや。←小説中浪人生にそれを言ったらおしまいフレーズ「勉強しなさい」(汗)。なんていうか、「浪人生」に注目して読んでいるので、「パソ通」に対する記述の詳細さと「大学受験」や「浪人生活」に対するそれのアバウトさが好対照、というか。

そう、どうでもいいけれど、スナックを経営しているらしいお母さん(お父さんは亡くなっている)の1浪である「ぼく」に対する態度が、次の2箇所で矛盾していない?

 <(略)ママもぼくのことは相当呆れているみたいだし、さいわいなことに二浪になるんだろうとなかばあきらめているみたいだけれども、(略)>(p.10)
 <母親には二浪はゆるさないよ、といわれているし、ぼく自身ももし次も駄目だったらもうこれは大学はあきらめて、ペットショップにでもつとめはじめようと思っているし、(略)>(p.334)

矛盾はしていないか。口では「許さない」と言いつつ、頭の中のどこかでは「しかたがない」みたいな? ちなみに、稔くんは生物好き。あ、1箇所ちらっと書かれているだけだけれど、予備校にもいちおう通っているようだ。

小説としては、<「名探偵、みんな集めてさてと云い」>(p.416)というか、最後のほう、伊集院大介の語りがかなり長いよね、読んでいて死にました(涙)。全体的に、話がもう終わったのかと思ったらまだもう少し続いているみたいな、なんていうか、歯切れの悪さがある、この小説。“僕小説”“1人称饒舌体”だから読みやすいけれどね。それでも“回答編”の語りはあまりに長すぎる。あ、でも、栗本薫(あるいは伊集院大介)のファンの人はそれが好きなのかな?(わからない)。
 

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