新潮社、2003/新潮文庫、2006。頭の中がマイナス思考な、おバカな(?)女の子の成長物語? ――小説としてはどうかと思うけれど(こんなの小説じゃないよな、ある意味)、個人的には、「わたし」(大瀬崎亜紀)に対して自分もそう、同じ、みたいな共感を覚えることが、けっこう多かったです。ただ、自分との違いは、この大瀬崎さんのほうが、ひきこもりぎみとはいってもコミュニケーション能力がけっこう高そうなところかな、大学でもアルバイト先でも。語彙は貧弱であるにしても、大人(社会人)としての常識に欠けるにしても。ま、ありがちかもしれないけれど(作中でも書かれていたような気がするけれど)、本人が思っているよりもこの人はダメ人間ではない、というか、私のほうがよほどダメダメです(涙)。

「第一章」の最初の太字見出し(って新書みたいだけれど)が「三浪の女」。でも読んでみると自称というか、1度大学(三流大学・薬学部)を2年に進級した時点で中退して、いまの大学(偏差値の低い大学・農学部)に入るまでに、年齢的に3浪にあたる、という話。実質的には2浪? 高校3年のときには(少なくとも)最初に通っていた大学には受かったはずだし、その大学を辞めた年にはたぶん受験できなかっただろうから、ちゃんと大学に落ちたのは(複数校受けたのなら、全滅したのは)大学を辞めたその翌年だけ? そう、その前に最初の大学を辞めた理由は、人間関係ゆらいの不登校…だっけな。大学に行くとゲロ吐いちゃうとかなんとか、書かれていたと思う。2年間、予備校には通ったり通わなかったりしていたらしい。そういえば、大学を辞めたことを親にはいつごろ言ったんだろう? 予備校代は出してもらっているはずだから。いま通っている2度目の大学は、場所とかがけっこう具体的に書かれていて、学校名がわかる人にはわかるっぽい(私は知らないし、あまり興味もない)。

予備校のときのことをちらっと語ることが2、3回あったと思う。少し引用してしまうと、

 <「俺たちさあ、二浪で男だからまだいいけど、女だったら終わってるよな」/「そうだな。女で二浪しちゃったらなんていうかもう、おしまいでしょう」/ふたりは楽しげに笑いながら互いを励ましていた。(略)>(p.15)

予備校の本館前で耳に入ってきたという会話(言われたほう、ボキャ貧だな)。いわんや私なんて3浪だよ、みたいな箇所だけれど、1浪の男子が「2浪の女子は終わっている」みたいなことを言うのならわかるけれど、2浪の男子がこんなことを言うかな? …別に言ってもおかしくないか。ほんと、どんぐりたちの背比べだな(使い方が違う?(汗))。私(男です)の場合、2浪のとき、2浪の女の子に対してどう思っていたかな…。思い出せない。やっぱり自分も2浪なわけだから、同病相憐れむというか、そうした差別的なことは思っていなかったような…。面と向かってなら「そうなんだ、仲間だねぇ」くらいのことを言ったと思う。――もう1箇所、

 <昔、予備校の授業で、文化というのはある面では恐ろしいものなんだよと話してくれた先生がいた。文化、それはよそ者を排除するために作られたものであると。>(p.135)
 <予備校のころ、おなじクラスに何人もの男の子と同時に付き合うことから“八股[やまた]のお嬢”と呼ばれていた美人がいて、/(略)>(p.302、[括弧]はルビ)

予備校といっても私立理系の下のほうのクラスとか?(偏見?)。文化が恐ろしい、ってなんだろう? 文化相対主義とかレヴィ・ストロースとかじゃなくて?(わからん)。お相手が8人もいると、勉強時間はどうしていたかな?(うーん…)。ちゃんと大学には受かったのだろうか、その美人さん。――あともう1箇所、本人の話ではないけれど、大学のクラスメイトの1人、雀太郎(あだ名)くんがする身の上話(?)が、「わたし」が<いい話を聞かせてもらった!>(p.369)と言っているように、ちょっといい話かもしれない。ま、でも(ネタバレしてしまうけれど)本当に医者志望の人の大半が医者になれないのかな?(わからないけれど、だとすれば予備校の医学部コースあるいは医大予備校とかは、けっこうぼろい商売をしていることになるよね)。そう、雀太郎くんも2度目の大学らしいのだけれど、「わたし」と違って、高校卒業後にも浪人しているらしい(「徒町予備校」って実在する? どこかで聞いたことがあるような…)。

大瀬崎さん、実家はどこなのかな? 雪が降るようなところ…だっけ?(だから、どこ?)。皿を割るような不機嫌なお父さんがいて(お父さんは京都出身?)、お母さんとあと、ほとんど触れられていないけれど、お姉ちゃんがいるらしい。――細かいことはいいか。「わたし」は最後、大学の3年生か4年生くらいになっている。

この小説とはあまり関係がないけれど、一般に(?)登場人物が大学の1、2年生くらいで、その人にマイナスのイメージを与えたいときに(読者にそう思ってもらいたいときに)選択肢として、その人が大学に入る前に2、3年浪人していた、ということにする、みたいなことがあるのかな? 私は小説を書かないのでわからないけれど、だとしたら安易だし、浪人というものがわかってねえよ(?)みたいなことはなんとなく、言いたくなってくる。
 

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

この日記について

日記内を検索