『屋上物語』(祥伝社文庫、2003)所収、8篇中の最後の1篇。本の後ろのほうに次のように書かれている。<(この作品『屋上物語』は、平成十一年四月、小社ノン・ノベルから新書判で刊行されたものに、「小説non 二〇〇一年一月号」に掲載された「タクのいる風景」を加えたものです)>。ということは、どういうこと? 新書判も出ているけれど、そちらには収録されていない1篇、ということか(でも、画像が新書のほうしか出てこない(涙))。――うどんスタンドのさくら婆ァも興行師の杜田もデパート屋上から去ってしまったあと、高校生だったタクは浪人生に。でも、短大生になった彼女を大学生にとられたり、まともに予備校に通わないことで両親から疎んじられたりして、彼はいま<センチメンタルジャーニーの途上>(p.258)にいる。東北は盛岡のやっぱりデパート屋上にいて、うどんを食べたりしている(あ、もともといたのは都内)。――もう冬だよね、この人も大学に入る気はあるのかないのか…。勉強をしていない浪人生は文字通り(ではないか)たんなるさすらい人で、実際にあちこちを放浪してしまう人がいても別に問題はないというか。あ、でも、その盛岡で事件(というか)にかかわるのだけれど、タクくんはさくら婆ァたちのおかげで(精神的な置き土産というかで)多少は成長している感じ。あと、“受験生小説”としては、この1篇の語り手はなんていうかグッドです。ほかにはないと思う。

これで読むのは2冊目、北森鴻って意外と面白いな。自分にとってのストライク・ゾーンど真ん中というわけではないけど。とりあえず、『親不孝通りディテクティブ』の続き(?)『親不孝通りラプソディー』が読みたいな。そう、誰も逆らえない感じのさくら婆ァは、キャラクター的に『親不孝通りディテクティブ』の「歌姫」が探偵役になった感じかもしれない(書かれたのは…というか、出版年は『屋上物語』のほうが先だけれど)。
 

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