カッパ・ノベルス、1995/光文社文庫、2000。手もとにあるのはノベルス版。カバーの折り返しのところ(「著者のことば」)によれば、“貴島刑事もの”の4作目とのこと。で、けっこう読みやすかったけれど、なんていうか、推理小説としては普通でした(汗)。この前(といっても、けっこう前かな、メモを見てみると…2008年12月16日)この小説を原作としたTVドラマが、夕方くらいに再放送されていて(テレビ朝日)、時間的には見ることが可能だったのだけれど、放送しているのに気づくのが遅くて…、結局、最後のほうしか見られなかったです(涙)。ただ、それで原作を読みなさい、と言われたような気がして、今回、“積ん読”本の山から抜き出して読んでみた次第です。←どうでもいい話です(汗)。※以下、ネタバレ注意です。毎度すみません。

TVドラマでは中学校のときの元同級生3人組が、たしかそのまま浪人生3人組になっていたと思うけれど、原作小説では浪人生なのは、リーダー格でクールな、人を見下すような性格の江藤順弥だけ。父親は地元(静岡県浜松市)の大きな病院「江藤病院」の院長で、父も祖父も卒業しているK大の医学部を目指して現在、3浪目。下に歳の離れた弟が1人いる。いまは代々木にある瀟洒なマンションで1人暮らし。読んで見てもわからないけれど、場所がら通っている予備校はやっぱりYゼミ?(TVドラマではYゼミの建物が映っていたけれど)。ちなみに江藤くん以外の2人は、最初に死んでしまう前島博和がM大学経済学部3年(東中野のマンションから引っ越して中野のマンション)、次に死んでしまう坂田勝彦はR大学3年(学部は? 大久保のアパート)とのこと。3人とも中学は一緒だけれど、高校は別らしい。前島くん、去年=大学2年のときにサラ金に借金が300万円もあった、というのは、いったい何に使ったの? あ、300万借りたのではなくて、利子が膨らんでその金額になったのか。

前島くん転落死事件(8月下旬)と平行して起こっているのは…というか、中野署の倉田刑事(倉田善男)と警視庁の貴島刑事(貴島柊志)がその転落死を調べていくと、3人組の元担任教師・日比野功一の妹、日比野ゆかり(20歳、兄夫婦と小平市)の現在進行中の(?)誘拐事件に行き当たる。そういえば、どうでもいいことだけれど、20歳と21歳の人がよく出てくる小説だったような…。真犯人の動機は例によって“復讐”で、TVドラマではどうなっていたか忘れてしまったけれど、この小説では最後、いちばんの悪人もちゃんと(?)殺されている。犯人が刑事に止められる、みたいなありがちな寸止めにはなっていない。

“浪人生小説”というか、“受験(生)小説”としての読みどころは、貴島刑事が最初に江藤のマンションを訪れた場面と、最後の「エピローグ」かな。ネタバレしすぎてしまうというか、暴力は暴力しか生み出さない、その暴力のおおもとの発生源はなんとお母さん!(?) 「エピローグ」は母親目線になっている。順弥くんは、母親=江藤佳子に小学校5年のときから勉強専用の窓のない部屋で勉強させられていたらしい(最初は泣き喚いたけれどすぐに順応したらしい)。……これはどうなのかな? それくらいで中学3年になって自殺に見せかけて同級生を殺すようになるほど、性格が歪んだりするかな?(うーん…)。高校に入って成績が落ちた、というのもどういう理由があったのやら、わからない。そう、(以前読んだ半村良の小説でも書かれていた気がするけれど)父親が有名大学卒の医者で、自分がそれほどでもない場合、お母さんが息子(の頭の悪さ)に対して遺伝的な(?)責任を感じてしまうんだね。別にそれが息子を悪い方向へ導かないのなら、まったく問題はないわけだけれど。でも、このお母さん、息子を東京で3年も浪人させているから、過保護・過干渉というわけでもないのか。息子もいわゆるマザコン的な性格にはなっていない。

そもそも、タイトルに使われいる「繭(まゆ)」という言葉は、どう? 個人的には“勉強部屋”とはイメージがずれる、ように感じる。蚕(かいこ)くらいしか思い浮かばないけれど、「繭」って要するに“さなぎ”だっけ? 閉じ込められているというより、蝶(蛾)になるまで外敵から身を守るために、自ら閉じこもっている感じ? あ、“ぬくぬく”としたイメージはあるか。でも、親蚕(?)が繭を作ってくれるわけでもないし、やっぱり(ハムスターも出てきているし)イメージ的には「檻(おり)」「鳥かご」(本文でも使われていたような)くらいでよかったのでは? あ、でも、それだと外が見えてしまうか。よくわからん、というか、どうでもいいや(汗)。そういえば、受験という制度に対する批判はぜんぜん書かれていなかったっけな、この小説。ちゃんと読み直さないとわからないけれど。

これもどうでもいいことだけれど、TVのニュース番組や新聞の報道を見ていると、学校教師がけっこう事件を起こしていて、そういう人たちは学校を辞めたあと(辞めさせられたあと)どこでどうしているのか、と時たまに気になったりするけれど(しないですか?)、この小説では、教え子を殴って辞表を出して退職した元中学教師・日比野さん、の現在の勤め先は、教育関係の出版社とのこと。そういうところで働ければ、教師の経験も役に立ったりするかもしれないね。再就職のきっかけは、大学の先輩が誘ってくれたことらしい。

そういえば(話がもうぐちゃぐちゃだけれど)、TVドラマでは江藤たちに自殺に見せかけて殺されたらしい吉本豊くんのお父さんが出てきていたと思うけれど、小説では名前だけで本人は出てこない。日比野ゆかりの過去の話があったり、意外と話としてはTVドラマのほうがよくできていたのかな、わからないけれど。
 

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

この日記について

日記内を検索