同名書(集英社文庫コバルトシリーズ、1979)の最初に収録されているいちばん長い1篇(全4篇中の)。ひと言でいえば、“バイク小説”。もしくは、ボーイ・ミーツ・ガールな始まりの“青春恋愛小説”といった感じ。感想はといえば、微妙といえば微妙だったかな…。同じコバルト文庫つながり、以前読んだ“浪人生小説”、落合恵子の「九月の科白」(『恋の途中下車』)よりは、だいぶ読める、とは思ったけれど。片岡義男なので(?)全体的にちょっと透明感があるというか、こざっぱりした感じの短篇小説だと思う。[追記]新書版が出ているようだ(コバルト・セレクション、1989)。画像はそれ。

季節は4月のよく晴れた日、場所は東北へと向かう自動車道のサービス・エリア。真っ赤な自動車(シヴォレーのカマロ)に乗ってきた男が、同乗してきた女に暴力を振るい始める。それに巻き込まれて倒されたオートバイ(6500CC二気筒)の持ち主が、今度はその男を殴り倒す。で、余った女から乗せて、と言われてバイクに乗せて、その女と自動車道を北上、遊んだりしたあと、夜はそのまま那須高原のホテルに泊まって、みたいな…、要するにバイク、ケンカ、オンナといった、男の子が好きそうな要素を3拍子そろえたような小説、かもしれない。全体的に3回(かな)描かれている喧嘩は、けっこうバイオレントな一方的なもので、相手がぜんぜん抵抗せず、逃げ出そうとしたりするにもかかわらず、殴る蹴る、なもの(うーん…)。那須から帰った翌日から東京で一緒に暮らし始めるその女の子は、実は(内容を書きすぎてしまうけれど)映画のポルノ女優であるのがわかり、なんと(?)浪人生である男の子(主人公といってもいい)も1度、撮影隊の一行について行って撮影に参加したりもしている。←ね、こういうところも世の男子が喜びそうな話になっているでしょう?(そうでもないか)。ストーリー的には、好きになった女性・女の子に、おまけとして恐いお兄さんやらおっさんやらがついてくる、みたいなお約束小説、であるような。あ、でも(ネタバレしてしまうけれど)、喧嘩が強いからなのか、“青春小説”であるわりに(“青春小説”にありがちな)最後、主人公が振られて終わるとか、女の子を諦めるとかしていない、この小説。

ヨースケこと、北村洋介くん(18歳)は、浪人生とはいっても、あまり大学に行きたいとは思っていない模様。去年というか昨年度は、父親に言われて東大を受けたらしい。――このお父さんが個人的にはちょっと謎かな。エミーこと、恵美子(19歳、芸名はみどり恵美子)との会話でヨースケは次のように言っている。

 <「おやじが、大学なら東大だというから」/「ほんとに?」/「ほんと。受けないと真剣に暴力をふるうから」/(略)/「来年は?」/「受験かなあ」/「また東大?」/「こんどはランクをさげろって、おやじはいっている」/(略)>(p.24)

マジな暴力を振るってでも、頭がいいわけでもない息子に東大を受けさせて、やれ落ちたと思ったら今度は受かるところを受けろ、みたいな親父さんっていったい?(汗)。とりあえず、思考というか発言が首尾一貫している感じの人ではない。家族には少なくともあとお母さんがいるらしい。そう、家族には東京の友達のところにいる、と嘘を言っているらしいのに、実のところ転がり込んでいるエミーの部屋(古いマンション)の電話番号を、家の人には教えてしまっているらしい。お母さんがかけてきて女の子が出たら、友達という嘘がばれちゃうよね。まぁどうでもいいけれど。あ、その前にこの人の実家はどこにあるの? 那須(栃木県)のホテルで本人が、<荒川のすこしこっち>(p.18)と言っているのだけれど、東京都でなければ埼玉県ということ?(あいかわらず地理に疎い(涙))。

勉強状況についても書いておかないとかな。これも引用したほうが早いな(引用率はだいじょうぶかな)、

 <ヨースケは、いまからでもかよえる予備校を見つけてきた。国語と英語の講座だけなのだ。十二月いっぱいまでつづく。/予備校に対してさほど期待はしていないのだが、かよえば勉強のリズムくらいはできるだろう、と思った。>(p.46)

「いま」は何月? 5月くらいかな。2教科だけ(少な!)って早くも私立志望に変えた感じ? 小説的には結局、12月までは通えないっぽく終わっているけれど、それはともかく。マンションがある場所も予備校がある場所もよくわからないのだけれど、リズム=勉強・生活の習慣は予備校のおかげなか、通い始めてから、ちゃんとできあがっている模様。

 <ヨースケは、まじめにかよった。ほかに、することがないからだ。午後からだから、気晴らしにはちょうどいい。/朝の九時には、ヨースケは起きる。冷蔵庫のなかの買いおきで朝食をつくり、昼間で部屋にいる。テキストを持って昼に部屋を出て、予備校へいく。最初の講義が終わってから、近くで昼食だ。そのあと、さらに二種類の講義とテストを終え、帰る。>(pp.62-3)

このあと夜の話も続くのだけれど、さすがに引用しすぎなので省略させてもらって。予備校というところは、気晴らし気分で来られては、ほかの予備校生や先生とかがちょっと嫌がるかな。テキストは鞄とかに入れずに、素手で?(違うか)。そういう細かいことはともかく、<なんとなく>(p.63)ではあれ、けっこうちゃんと勉強している感じ(でしょう?)。この人の場合、女の子と一緒に暮らしていても、すれ違い生活的な面もあって(エミーはナイトクラブでも働いている)、そのこと(=同棲生活)が勉強の邪魔にはなっていない感じ。経済的には、彼女に家賃を払っている気配がないし、親からの仕送り(もらっている気配もないけれど)も少なめで生活できるから、結果としてはむしろ親孝行になっている? でも、そう、大きなオートバイを買うお金は誰が出したの? 受験生が自分でアルバイトをして買ったとか? それとも、親が意外とお金持ちな? ――ま、どうでもいいか。あと、そう、毎日テストがあるのはいいけれど、この予備校、土曜日が休みらしい。日曜日はあるらしいのに。ちょっと変なところだな。

ちなみに、ヨースケよりも10ヶ月歳上というエミーは、高校3年のときに学校を中退して山梨から東京に出てきたらしい。(というか、今回もぐちゃぐちゃな紹介文、感想文になってしまったな…。←愚痴です。というか、中身がぐちゃぐちゃなのはどうしようもないにしても、対象が短篇なのに、自分、文章を書くのにあまりに時間がかかりすぎ。今回は3時間以上も書いたり消したり、していたような(涙)。)
 

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

この日記について

日記内を検索