清水義範 「マイナス二七三度の恋」
2009年3月29日 読書
“単位”をお題とした連作集『単位物語』(朝日新聞社、1991/講談社文庫、1994)に収録されているもの(13篇中の2篇目)。この1篇のテーマは題名からも知れるように“温度”。短いものなので(手もとの文庫本で20頁もないので)全文を読んでもらったほうが早いかと思うけれど、いちおう物語(ストーリー)部分を説明すれば(※以下ネタバレ注意です)、浪人中の芳昭(よしあき)は、母親どうしの交流から小学校のときによく遊んでいた、同じ歳の幼なじみ・宮坂尚子(なおこ、短大1年生)と再会して、恋に落ちる。それによって(もちろん比喩的に)温度が高くなった芳昭は、気分転換と称して毎晩、自転車で2駅離れたところにある尚子の家まで行き、灯りがついた2階の彼女の部屋を見あげる。ということをしていたけれど、ある日、文字通りこれ以上の低い温度はないという-273℃=絶対零度の(というのももちろん比喩だけれど)出来事を体験することに……。この前、何か小説を読んでいたら(ライトノベルだっけな)「なになにと言った彼に対して、彼女は絶対零度の微笑を返した」みたいな表現が使われていて。そのときは、瞬間的にお寒い比喩だな、と思ってしまったけれど、別に変な言い方というわけでもないのか。あらゆるもの、世界全体が凍ってしまうような笑み…? そう、これも本作とは関係がないけれど、若い人に「バナナで釘が打てる」とか「薔薇がばらばらになる」とか言っても、もう通じないらしいよね(ああ歳はとりなくないな(涙))。
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