ソノラマ文庫、1977/創元推理文庫、2004。ポテト(牧薩次)とスーパー(可能キリコ)の2人が探偵役となっている推理小説のシリーズ3冊目。1冊目から3冊目を合わせたものが出ているらしいけれど(『合本・青春殺人事件』)、手もとにあるのは、1冊ずつの創元推理文庫版。※以下、いつものようにネタバレにはご注意ください。毎度毎度すみません。どうでもいいけれど、最初に掲げられている「西郊高校校歌」というのは、歌詞はともかく、タイトル「こう」が多くて音読づらいよね(涙)。

探偵役の2人はこの3冊目で高校3年生に。高校3年生といえば、受験生だけれど、この小説、タイトルに「受験」と入っているわりに、“受験小説”として読んでも、ぜんぜんリアリティがないような気がする。そう感じるのは自分だけなの?(うーん…)。ま、あれこれと受験について語られているので、ちょっと興味を引かれたりはするけれど。あと、話(物語)もそうだけれど、頭の中で人物像(というか)がけっこうぼやける感じがして、なんていうか“キャラクター小説”としても読みにくかったような…。例えば、それ以外のことをすべて犠牲にして勉強しているような典型的なガリ勉タイプの人は、この小説には出てこない。最初に死んでしまう秀才の有原君(有原秀之)は、以前、同級生のキリコをデート(映画&食事)に誘ったことがあったり、以前から先輩で浪人生(1浪)の柚木さん(柚木孝)をからかっていたり。いつも参考書を読んでいる感じのギプス(柏しげ子)にしても、柚木さんと付き合っていたのだし(それでこの浪人生は高校のクラブ「古代史研究クラブ」に出入り)、ネタバレしてしまうけれど、彼女には実は…的な面もあったり。“映画断ち”をしてガリ勉に転じたというナベシン(田辺進一郎)にしても、それはたぶん一時的な状態だろうし。表と裏、みたいにはっきりとしているわけではなくて、性格がぶれているというか、そんな感じがしてしまう。ちなみに、有原君・ナベシン・柚木さんの3人は、一流の大学らしい「同友大学」(「どうゆう大学?」とか言いたくなるよね(汗)、ダジャレ病?)志望で、ギプスは、これも一流の大学らしい「徳武女子大」志望らしい。そもそも、ポテト&スーパーが「(私立の)西郊高校」に入った理由は、(スーパーによれば)<なんとなく、はいりやすくて学費の安い高校をさがしただけの話だ>(p.19)とのことだけれど、一流大学に入ろうとしている彼らの同級生たちは、どうしてそんな言われ方もするような高校に入学したのだろう? 最初から、もっとちゃんとした進学校に入っておけばよかったのでは?(ま、各自いろいろと事情はあるか)。

高校生たちのことは措いておいて、浪人生=柚木さんについて触れておかないと。2件目の“事件”が起こるのが(※しつこいですが、ネタバレ注意です)スーパーと同じく大学受験は眼中にない大ちゃん(佐々部洋子)の提案で開かれたクリスマス・パーティー(「YYパーティー」)のとき、なのだけれど、参加者はいろいろ用意されている衣装を着ることになって――で、柚木さんの仮装は、といえば、

 <白い線のはいった丸い帽子に、マントをひっかけているのは、伊豆の踊子ふう旧制高校生の柚木さんだった。>(p.150)

とのこと。一高生スタイルをさせられている(!)。推理小説的には、この格好も伏線になっているのだけれど(びっくり)、それにしても、浪人生がかわいそうというか、もしかして浪人生をちょっとなめているのか?(涙)。というか、新制大学浪人生が旧制高校生ファッションをする、というのは、なんていうか、ちょっとずれていると思う。そういえば、本文中に「東大一直線」という言葉はあったから(p.141)、「同友大学」(略して同大?)というのは、東京大学(略して東大)とは別の大学であるはずだけれど、でも、やっぱり東大(昔でいえば、受験生にとっては一高とほぼ同義)がモデルになっているのかも。そういえば、同友大学は私立だっけ、国立だっけ? どこかに書かれていたような気がするけれど、見つからないな(たぶん国立だと思うけれど)。

「ずれている」といえば、3番目の“事件”が起こるのが、「代々木の予備校」に隣接しているというテレビアニメのスタジオ(アニメーターを志望している大ちゃんが出入りしている「クレージー・プロ」)。そこで柚木さんは死んでしまうのだけれど、どうせなら隣の予備校(Yゼミ?)で死なせてあげればいいのにね(あ、そのほうがかわいそうか(汗))。柚木さんがその隣のところに通っていたかどうかはわからないけれど、<「実力アップ」「合格率最高」を誇る予備校>(p.79)には通っていたようだ。勉強は、あと「中町図書館」というところでもしている。――その前に家はどこだっけ? 「中町」でいいのか。社宅アパートの5階とのこと。5人家族で、本人以外には、両親(昴士氏と小枝夫人)と祖父(雄六)、妹(麻美)がいる。全員、作中に登場してきていると思う。

昨年(昨年度)落ちたのは、勉強不足・学力不足とかではなく、「試験度胸」がなくて実力が発揮できなかった、みたいな(小説ではよくある?)理由かららしい。今年も「同友大学」合格ラインのぎりぎりのところにいるらしい(というか、この小説、柚木さんの性格だけでなく、そうした実力というか学力に関する記述も、いまいちぶれていない? うーん…)。ポテトから借りた探偵小説を<「なんだか、数学の参考書読んでるみたいで頭が痛くなってきた」>(p.86)と言って返したことがあるらしいけれど、そんなことを言っているようでは、東大レベルの(?)一流大学にはやっぱり受からないような…、よくわからないけれど。

ちなみに時間というか季節というかは、10月(の学園祭終了の翌日)から1月(まだ冬休み中)まで。なので、生き残っている受験生たちの合否は不明。(ソノラマ文庫から出ている同シリーズの続きを、だいぶ前から探しているのだけれど、地元のブッ○オフなどでは見当たらず。地元の図書館にも置かれていなくて、いまだに確認できていない。)
 

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