集英社文庫、1988。速水ねこみち。←ちょっと言ってみたかったので(汗)。どうでもいいけれど、表紙が怖い。感想は、なんていうか、やっぱり微妙…かな。ひと言でいえば“化け猫小説”というか、“猫娘小説”? 改行が多くて下のほうが白い本であるし、内容的にも意外と動きがあって(動的な感じで)読みやすくてよかったけれど。※以下、いつものようにネタバレ注意です。
<麹町、富士見町、飯田町…承久年間、地下九尺の深さに張りめぐらされた木製の上水路。いまや地上げ屋暗躍の古書店街。文雅洞にバイト中の柏木圭太も、いつしか黒い渦に巻き込まれてゆく。そして、行く先々で出会う獣の感触は、いったい何か!? 愛猫家自認の著者が、江戸時代の資料を材に描く、まさに恐怖の“猫”シリーズ、書き下ろし第2弾!! /解説・中野昭慶>(表紙カバーより)
御茶ノ水・神田のあたりが舞台であると、土地や建物、人間とかが何かに憑かれていることが多いのかな? この小説では魔物とかではなくて(cf.いわなみちくま『悪魔のシッポ』)“猫”だけれど。古い本がたくさんな古書店街、戦火をまぬがれた古い建物、地下に残る江戸時代の木製給水パイプ……。過去と繋がっているのも当然というか、何か時代を越えた存在が出てきてもしかたがないか(よくわからないけれど)。
「品川の都立高校」を卒業しているという圭太くんは、父親の転勤で博多に引っ越すことになった両親にはついていかなかったとのことで、本郷の高台にあるアパート「睦美アパート」でひとり暮らしをしている。チベット語を覚えてヒマラヤの山へ行って絵を書きたいという夢をもっていて(“浪人生小説”にしては夢がはっきりしているな)、今年の春は「東京外語大学のモンゴル語学科」を受験したけれど、落ちてしまったらしい。それで、今年は…というか、いま季節は夏で、夏期講習中なのだけれど、午前中(8時半~12時半)は駿河台にある、戦前からある予備校の老舗らしい「帝国塾ゼミナール」へ通い(クラスは「国立文系午前の部Gクラス」とのこと)、午後(2時~8時)は、その予備校の数学講師で彼のクラスの担任でもある小池恭一(「東大経済卒、二十七歳」)に紹介してもらった、神田・古書店街の外れにある古本屋「文雅洞」でアルバイトをしている。で、その古書店の店主には人妻の娘がいて、予備校でも女の子と知り合ったりで、なんだかんだと起こる。←テキトー(汗)。
「帝国塾ゼミナール」というのは、よくわからないけれど、すごい名前だな(汗)。「塾」と「ゼミナール」で、ちょっと頭痛も痛くなっているような? 圭太はアパートからその予備校へは(JR御茶ノ水駅のほうからではなく、1つ隣の)水道橋駅のほうから徒歩で通っているらしい。←あいかわらず東京の地理・地名に疎いです(涙)。略せば「帝ゼミ」? は、たぶん実在するS台が多かれ少なかれモデルになっているのだろうけれど。都内や近郊の都市、あと名古屋・仙台・博多にも分校があって、圭太が通っているのはその本部とのこと。京都や大阪にはないのか(そんなことはどうでもいいか(汗))。隣には「某婦人雑誌のビル」があるらしい(林真理子『本を読む女』にちらっと出てくる「主婦之友」社?)。いずれにしても、御茶ノ水のあたりがこれほど詳しく書かれている浪人生小説は、初めて読んだかもしれない。でも、「これほど」といっても、それほどでもないし、S台生におすすめできるかといえば、内容的にもできないような。――授業料やアルバイト代についても具体的に書かれている。
<夏期講習の授業料は前期後期あわせて20日間で8万。1日あたり4,000円の計算になる。その金を圭太はアルバイトの中からきりつめて払った。だからむだにするのはいやだった。>(p.61)
<1日4,800円で27日分、129,600円。そこから税金を1割天引きされた。約10万の金がはいった。>(p.174)
見づらいので漢数字を適当にアラビア数字に直した(たいして変わらないか)。午後はアルバイトで、午前中しか通えないわけで、夏期講習にかぎらず、いままでも↑のようなスケジュールだったのかもしれない。本の出版年は…1980年代の後半か、午前中だけで4千円というのは、安いのかな? うーん…、ちょっとわからないな。正確には、収入は1割引で……11,6640円か。アパート代が3万くらいすれば、6千円くらいしか残らないよね。食事代その他がなくなってしまう。というか、親からの仕送りはゼロなのかな?(書かれていない)。でも、その古書店のアルバイトを首になってしまうので(ネタバレしてしまうけれど、そのあと古書店自体も火事になってしまう)、これからどうするのかな、圭太くん。
本人も口にしていたと思うけれど、けっこうもてている。登場人物の紹介も兼ねて挙げておけば、私立大学に通う高校の同級生で友達の三橋邦彦(お金持ちの息子)の妹・三橋朝子(「R女学院高等部の一年生」)、予備校の授業で出会う謎の(?)自称高校生・石毛みどり(「名門女子校」の「清村学園」)、文雅洞の店主である森川氏の娘で実家に戻ってきている九法洋子(26歳)……。小説的には圭太の次に重要な人物である洋子も、やけにもてている。三橋邦彦、文雅洞でバイトをしていたことがあって元婚約者である小池恭一講師、不動産業(いわゆる地上げ屋)を経営する現在の夫である九法一正氏(苗字は「くのり」と読む)、そして柏木圭太本人も。――おおざっぱにいえば、やっぱり取り合う感じで、圭太と洋子でうまくいけばめでたしめでたしかもしれないけれど(ネタバレしてしまうけれど)、最後、圭太は洋子のことを諦めて終わっている。でも、そのことによって成長をしている?(成長小説になっているかな?)。微妙なところか。別にどちらでもかまわないけれど。
話が前後するけれど、上の授業料代について書かれている手前のところには、
<若い威勢のいい教師の授業がはじまった。/長文読解。/ジョージ・オーウェルのアニマル・ファーム。/エアコンもきいていて、眠気が襲ってきた。>(p.61)
とある。石毛みどりと出会う場面のなのだけれど、それはともかく。1980年代後半、『アニマル・ファーム』(『動物農園』)ってどうなのかな? 古いといえば古いと思うけれど、予備校のテキストや英語の参考書に載っているぶんには、まぁふつうか。(個人的に好きな小説、南木佳士の「火映」(『神かくし』所収)にも「アニマルファーム」が出てくる。浪人生ではなく、高校3年生(1969年?)の話だけれど。)
誤植というかなんというか。店主の森川氏の下の名前は「敬作」なの?「平介」なの? 九法氏の部下の1人・パナマ帽の男の苗字は「山田」?「阿久津」or「寺島」? 両親がいるのは「博多」であるはずなのに「仙台」となっている箇所がある。ほかにもいろいろとありそうだけれど、もう読み直す気力がない。
<麹町、富士見町、飯田町…承久年間、地下九尺の深さに張りめぐらされた木製の上水路。いまや地上げ屋暗躍の古書店街。文雅洞にバイト中の柏木圭太も、いつしか黒い渦に巻き込まれてゆく。そして、行く先々で出会う獣の感触は、いったい何か!? 愛猫家自認の著者が、江戸時代の資料を材に描く、まさに恐怖の“猫”シリーズ、書き下ろし第2弾!! /解説・中野昭慶>(表紙カバーより)
御茶ノ水・神田のあたりが舞台であると、土地や建物、人間とかが何かに憑かれていることが多いのかな? この小説では魔物とかではなくて(cf.いわなみちくま『悪魔のシッポ』)“猫”だけれど。古い本がたくさんな古書店街、戦火をまぬがれた古い建物、地下に残る江戸時代の木製給水パイプ……。過去と繋がっているのも当然というか、何か時代を越えた存在が出てきてもしかたがないか(よくわからないけれど)。
「品川の都立高校」を卒業しているという圭太くんは、父親の転勤で博多に引っ越すことになった両親にはついていかなかったとのことで、本郷の高台にあるアパート「睦美アパート」でひとり暮らしをしている。チベット語を覚えてヒマラヤの山へ行って絵を書きたいという夢をもっていて(“浪人生小説”にしては夢がはっきりしているな)、今年の春は「東京外語大学のモンゴル語学科」を受験したけれど、落ちてしまったらしい。それで、今年は…というか、いま季節は夏で、夏期講習中なのだけれど、午前中(8時半~12時半)は駿河台にある、戦前からある予備校の老舗らしい「帝国塾ゼミナール」へ通い(クラスは「国立文系午前の部Gクラス」とのこと)、午後(2時~8時)は、その予備校の数学講師で彼のクラスの担任でもある小池恭一(「東大経済卒、二十七歳」)に紹介してもらった、神田・古書店街の外れにある古本屋「文雅洞」でアルバイトをしている。で、その古書店の店主には人妻の娘がいて、予備校でも女の子と知り合ったりで、なんだかんだと起こる。←テキトー(汗)。
「帝国塾ゼミナール」というのは、よくわからないけれど、すごい名前だな(汗)。「塾」と「ゼミナール」で、ちょっと頭痛も痛くなっているような? 圭太はアパートからその予備校へは(JR御茶ノ水駅のほうからではなく、1つ隣の)水道橋駅のほうから徒歩で通っているらしい。←あいかわらず東京の地理・地名に疎いです(涙)。略せば「帝ゼミ」? は、たぶん実在するS台が多かれ少なかれモデルになっているのだろうけれど。都内や近郊の都市、あと名古屋・仙台・博多にも分校があって、圭太が通っているのはその本部とのこと。京都や大阪にはないのか(そんなことはどうでもいいか(汗))。隣には「某婦人雑誌のビル」があるらしい(林真理子『本を読む女』にちらっと出てくる「主婦之友」社?)。いずれにしても、御茶ノ水のあたりがこれほど詳しく書かれている浪人生小説は、初めて読んだかもしれない。でも、「これほど」といっても、それほどでもないし、S台生におすすめできるかといえば、内容的にもできないような。――授業料やアルバイト代についても具体的に書かれている。
<夏期講習の授業料は前期後期あわせて20日間で8万。1日あたり4,000円の計算になる。その金を圭太はアルバイトの中からきりつめて払った。だからむだにするのはいやだった。>(p.61)
<1日4,800円で27日分、129,600円。そこから税金を1割天引きされた。約10万の金がはいった。>(p.174)
見づらいので漢数字を適当にアラビア数字に直した(たいして変わらないか)。午後はアルバイトで、午前中しか通えないわけで、夏期講習にかぎらず、いままでも↑のようなスケジュールだったのかもしれない。本の出版年は…1980年代の後半か、午前中だけで4千円というのは、安いのかな? うーん…、ちょっとわからないな。正確には、収入は1割引で……11,6640円か。アパート代が3万くらいすれば、6千円くらいしか残らないよね。食事代その他がなくなってしまう。というか、親からの仕送りはゼロなのかな?(書かれていない)。でも、その古書店のアルバイトを首になってしまうので(ネタバレしてしまうけれど、そのあと古書店自体も火事になってしまう)、これからどうするのかな、圭太くん。
本人も口にしていたと思うけれど、けっこうもてている。登場人物の紹介も兼ねて挙げておけば、私立大学に通う高校の同級生で友達の三橋邦彦(お金持ちの息子)の妹・三橋朝子(「R女学院高等部の一年生」)、予備校の授業で出会う謎の(?)自称高校生・石毛みどり(「名門女子校」の「清村学園」)、文雅洞の店主である森川氏の娘で実家に戻ってきている九法洋子(26歳)……。小説的には圭太の次に重要な人物である洋子も、やけにもてている。三橋邦彦、文雅洞でバイトをしていたことがあって元婚約者である小池恭一講師、不動産業(いわゆる地上げ屋)を経営する現在の夫である九法一正氏(苗字は「くのり」と読む)、そして柏木圭太本人も。――おおざっぱにいえば、やっぱり取り合う感じで、圭太と洋子でうまくいけばめでたしめでたしかもしれないけれど(ネタバレしてしまうけれど)、最後、圭太は洋子のことを諦めて終わっている。でも、そのことによって成長をしている?(成長小説になっているかな?)。微妙なところか。別にどちらでもかまわないけれど。
話が前後するけれど、上の授業料代について書かれている手前のところには、
<若い威勢のいい教師の授業がはじまった。/長文読解。/ジョージ・オーウェルのアニマル・ファーム。/エアコンもきいていて、眠気が襲ってきた。>(p.61)
とある。石毛みどりと出会う場面のなのだけれど、それはともかく。1980年代後半、『アニマル・ファーム』(『動物農園』)ってどうなのかな? 古いといえば古いと思うけれど、予備校のテキストや英語の参考書に載っているぶんには、まぁふつうか。(個人的に好きな小説、南木佳士の「火映」(『神かくし』所収)にも「アニマルファーム」が出てくる。浪人生ではなく、高校3年生(1969年?)の話だけれど。)
誤植というかなんというか。店主の森川氏の下の名前は「敬作」なの?「平介」なの? 九法氏の部下の1人・パナマ帽の男の苗字は「山田」?「阿久津」or「寺島」? 両親がいるのは「博多」であるはずなのに「仙台」となっている箇所がある。ほかにもいろいろとありそうだけれど、もう読み直す気力がない。
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