感想など雑記。以下、すべてネタバレ注意です。書名の右のほうの分数は、例えば「4/6」であれば「全6篇中の4篇目」という意味。

・東野圭吾「もうひとつの助走」(『黒笑小説』集英社、2005/集英社文庫、2008。1/13)
筒井康隆(『大いなる助走』)というよりは清水義範っぽい? 1人の作家と3人の編集者が文学賞の選考会の結果を待つ。編集者の1人が灸英社の神田。ネタバレしてしまうけれど、息子が大学にすべて落ちて浪人決定、と思っていたら、妻からの電話で実は補欠合格で受かっていた、みたいな。この補欠合格=“一発逆転合格サプライズ”(?)は、漫画やTVドラマの定番というか。

・天藤真「採点委員」(手もとにあるのは、『天藤真推理小説全集17 犯罪は二人で』創元推理文庫、2001。10/12)
よくある“裏口入学もの”(ってどういうもの?)と違っていて、けっこう面白かったです。読んで思い出したのは、TVドラマ(映画版?)『TRICK』のなかで、お金をとって(500円だっけな)生まれてくる子どもの性別を当てる、外れたら返金する、みたいな話があって…。わかりやすい詐欺だよね。全員に男の子(または女の子)と予言する。でも、私の勝手なイメージでは、そもそも裏口入学を望む受験生(の親)というのは、合格のボーダーライン付近にいる受験生(の親)というより、それをだいぶ下回る、試験でぜんぜん点数がとれなそうな(偏差値が足りなそうな)受験生、という気がするけれど。そんなこともないのかな? どうしても(再)浪人したくない人(の親)もいるか。ちなみに(お父さん目線の小説なのだけれど)主人公夫婦の息子はお金を払ったのに1浪している。

・大森善一「六人の乗客」(『本格推理⑮ さらなる挑戦者たち』光文社文庫、1999、12/13)
バスの乗客6人。そのなかの1人を「あたし」は、予備校生と推測している。最後に6人全員とも「あたし」の推測と実態(職業など)がずれていると読者にはわかるのだけれど、この「予備校生」も実は……。6人のなかでいちばん落差があって(?)面白いです。

・橋本紡「りばあず・えんど ~めいどきっさばんざい~」(『リバーズ・エンドafter days』電撃文庫、2004。「口絵スペシャルノベル」とのこと)
「僕」は自宅浪人生? そういえば、自分が浪人しているとき、喫茶店とかファミレスで勉強するという発想がそもそもあまりなかったな。ファミレスでは2,3回勉強したことがあったけれど。あ、でも、思い出した、マク○ナルドではけっこう勉強させてもらった。ただ、ファーストフード店では、ウェイトレスはあまり席のほうには来ないよね。

・干刈あがた「秋のサングラス」(『物は物にして物にあらず物語 十一歳の自転車』集英社、1988/集英社文庫、1991。2/21)
拓也は1浪している大学1年生。同じ学生寮の先輩(西浜・3年)の言葉を借りて敷衍すれば、カントリー・ボーイがカントリー・ガール(大学のクラスメート・吉本節子)にふられ、さらにシティ・ウーマン(バイト先で知り合った高野睦美、妻子ある歳上男性と不倫中)にもふられる、みたいな話。顔はいいのに(それで寄ってくる女の子は苦手で)会話などがダメな地方出身の青年という感じ。同じ作者の「樹下の家族」は夫と子どもを持つ女性が沖縄出身の苦学浪人生と知り合う、みたいなことになっていたけれど、設定はそれとちょっと似ているかな。それはともかく(吉本さんとの)最初のデートのときにした話が――少し引用させてもらうと、

 <「去年大学を受験するために一緒に東京に出てきた友達がいるんです。大学に落ちて僕は家に帰りましたが、そいつは東京に残って、アルバイトをしながら浪人していたんです。それが去年の秋、行方不明になったんですよね。どうもある宗教団体に入ったらしいから、上京したらそこに行って会って話してみてくれと、彼のお袋さんに頼まれたんです。(略)」>(p.25、文庫)

宗教団体に入って(たぶん)大学受験ドロップアウト――そういう浪人生もいるか。大学に入るという目的がある浪人生よりも、人生の意味(?)を見失った大学生のほうが危ないとは思うけれど、その手の宗教の勧誘。「行方不明」になっているくらいだし、↑あまりまともな宗教団体でないよね。

・奥泉光「その言葉を」(『滝』集英社、1990。1/2)
収録されている本は図書館で借りたもの。約20年前に出ているのか。中途半端に古い小説を読むと、いらいらすることが多いのだけれど、これはなんだかちょっとほっとする。高校のときの同級生=飛楽俊太郎のことが語られている。「僕」が飛楽(ひがき)と再会したのは、東北の田舎町で2浪して東京の大学に入った年=1976年、とのこと。「僕」は当時、川口(埼玉県)のぼろアパートに住み、近くのジャズ喫茶の常連に。浪人中の自身のことについてはあまり語られていない。ジャズにはまったことくらいか。
 

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