何か他の本にも収録されているかもしれないけれど、手もとにあるのは、掌篇小説のアンソロジー『ミステリー傑作選・特別編4 57人の見知らぬ乗客』(講談社文庫、1992)。その43篇目(書名のとおり全57篇)。←1度しか数えていないけれど、あっていますか? ※今回も以下、ネタバレ注意です。すみません。

というか、タイトルの付け方があまりうまくないよね。だいぶネタバレしているような。そういえば、何かの本に世の中でいちばんネタバレの被害にあっている推理小説は、E.A.ポーの「モルグ街の殺人」みたいなことが書かれていたけれど、日本の小説でいちばん被害にあっているのは、たぶん宮沢賢治の「注文の多い料理店」ではないか、と思う。本の中だけでなくTVを見ていても、けっこう平気で内容をしゃべっている人を見かける。あ、こんなふうに書くこと自体、ネタバレになってしまうかもしれないけれど(汗)。(関係ないけれど、清水義範による「モルグ街~」のパスティーシュ小説があって(これも本がどこかに行っちゃったな(涙)、記憶で書けば『世界文学全集』上・下、集英社文庫)、その“犯人”は意外すぎてびっくりします。笑えるし。)

市田尚平は狭き門・城西大学の理工学部を目指す2浪生。でも勉強の興が乗ってくる深夜、アパートの南側にある一色夫妻の家の犬(夫人・亜矢子が可愛がっているペロ)が吠えてうるさい。で、回覧板を渡すときに(アパート2階端の部屋なので彼が渡す)文句を言ったりする。――どうでもいいことだけれど、「城西大学」って実在するよね? そこは「城南大学」とか「城東大学」にしないと。 

予備校には通っていないのかな? 問題(問題集の問題)について議論できる友人はいるらしい。<さる年生まれ>(p.336)と言っているけれど(だから犬とは犬猿の仲、という話)、この小説の初出が<ポケットパンチoh! 昭和51年10月号>(p.459)とのことだから、1976年から20年(2浪だから)を引くと1956年生まれ? ――あ、申年であっているな。要するに主人公は推定1956年生まれ。どこ出身で、どうしてアパートに1人暮らしなのか、など書かれていない。

あと、

 <「(略)サイン・シータの2乗、プラス、コサイン・シータの2乗は……」>(p.334)

理系でしょう? 犬に思考を邪魔されようが、いちばん簡単な公式、そこは「……」ではなく無意識で1だろう。(あ、「2乗」って(sinθ)×(sinθ)ではなくて、sin(θ×θ)? それなら話は違うけれど。)

(ちなみに、同じ本に収録されている後ろから2篇目、渡辺啓助「三吉の食慾」は、主人公(一戸三吉)が住み込みで昼間、働いていて、夜「神田の夜学」に通っている苦学生。こういうおいしそうな“はらぺこ食べ物小説”は、ちょっとずるいよなぁ(汗)。あ、比喩表現もよい感じです。初出は<新青年 昭和25年2月号>(p.469)とのこと。)
 

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