幻冬舎文庫、1997。200ページ弱のたいしたことのない小説なのに、読んでいてぜんぜん意味が頭に入ってこなくて。読み終わるのにだいぶ時間がかかってしまったです(涙)。読んだり読みやめたり、合計10時間以上も読んでいたような。少し具体的にいえば、小説の冒頭(Ⅰ.Melodyの出だし)は、

 <霧雨が銀の絹糸となって、セピア色のビスチェから出た肩を愛撫する。>(p.7)

という感じで、……これはよく言えば、詩的ナルシシスティック(自己陶酔的)というか? 要するに雨が強くなった、みたいなことでしょう、めんどくせえな(涙)。全体的に色彩を表す言葉や、宇宙規模(というか天体がらみ)のしょぼい比喩も多いです。※言い忘れていたけれど、今回もネタバレ注意です、すみません。

 <いつも見る、あの空を飛ぶ夢。そこで一緒に風をつかまえ、飛翔する「彼」は誰なんだろう。突然の自殺で恋人トモヤを喪った女子高生サキは、トモヤの<ほんとうの心>を探して、街を彷徨う。そして出会った、トモヤの生き写しのようなユウキ。ユウキこそ夢で見る「彼」なのか? 現在形の少女の切なさを描く待望の第三弾! 文庫書き下ろし。>(カバーより)

時間的なこと(年・月)に関しては矛盾する記述もある気がするけれど、…まぁしかたがないか、小説だから(涙)。現在予備校生の「あたし」(ナガセサキ)は、昨年すなわち高校3年生(1995年)の夏に、2年のときから付き合っていた同じ高校の同級生で恋人のトモヤ(タカミズトモヤ)が、自宅のマンションのベッドの上で自殺している、のを見つけてしまう。自殺した本当の動機を知るため、高校の同級生でトモヤの親友だった、いまは東大の医学部学生になっているミズホ(萩原瑞穂)と会って話したり、お墓参りに行ってそこでトモヤの母親(チエミ)に問い質してみたりする。そんなとき、ミズホからの急な電話で、大学病院の神経科に、通院しているらしいトモヤと瓜二つな人間――名前はユウキ(カゼシロユウキ)、高校生――が現われたことを知らされる。で、会いに行ったりするわけだけれど。一方、「あたし」には1回会うごとに10万円、という愛人契約をしているキシワダタカシという相手がいて(37歳、妻子ありのエリートサラリーマンとのこと)、そのキシワダさんへの電子メール(やや長め)が話の間に挟まれている、という形になっている小説。学生時代の恋人に似ていようがいまいが、たまに会うくらいの愛人としてだろうが、自分だったらこんなに“あたしあたしメール”を送ってくる人とは付き合わないな、たぶん。――それはそれとして。

でも、えーと…、特に感想もないよな(汗)。そう、この小説も語り手…というより小説的に作者の、ミズホくん――トモヤのことが好きだった(いまも好きな)ゲイで、クスリ漬けでジャンキー1歩手前から最後は本当に頭がおかしくなっている――に対する“愛”が足りていないような。ミズホ以下の脇役の人物たちに対しても、愛情が足りないような気がする。人はそれぞれ個人的な事情を抱えている、みたいなことが、あまり考慮されていない。(自分が世間的に脇役の脇役の脇役みたいな存在だから、否定されたくないために、この手の小説に対して毎度、そんなふうに思うのかな、わからないけれど。)

浪人生のプロフィール的なことも。書かれていないけれど、大学に落ちた理由は、恋人が自殺したことによる精神的なショックとか? 1人暮らしを始めているみたいだけれど、マンション(アパートだっけ?)の場所は? 予備校も、模擬試験を受けている場面がちょっとあるけれど、結局、あまり行っていない(行けていない?)。父親については少し書かれている(いまもかな、楽器メーカー勤務らしい)。だいたいの舞台は東京で、最後のほうは狂ったミズホからトモヤを守るために、トモヤと2人で南のほう(というか西のほう)に自動車で逃げている。たぶん無免許運転。あと、そう、ガソリンスタンドでアルバイトをしている。匂いが落ち着くらしい(シ○ナー替わりというわけではないよね?)。キシワダさんと月に2,3回会って20~30万円もらっているはずで、死んだ彼氏が好きだったもの(CDやら写真集やら小説やら)をあれこれと購入しても、毎月お金がだいぶ余っているかもしれない(どこが「貧乏浪人(生)」だよ?)。アルバイトといえば、あと、最初のへんで、キャバクラでバイトをしているらしい予備校の友達から電話がかかってきている。

少し繰り返しになるけれど、比喩などの詩的な表現や、ド○ッグとか愛人契約(要はセッ○ス&マネー)とか、そうしたちょっと抵抗感がある(私にはあるけれど)要素をとっぱらえば、かなりベタなストーリーしか残らない、この小説。いま『恋して悪魔(バンパイア)』というTVドラマが放送されているけれど(連続もの、フジテレビ系列・火曜日9時から)、加藤ローサ演じる高校教師は、高校時代に恋人が亡くなっていて、でも、生徒としてその(元)恋人とそっくりな男の子が現われる、みたいな話。このドラマでは現われるまでにけっこう年が経っているけれど、お話的にはほとんど同じ(でしょう?)。ドラマと小説の両方ともネタバレしてしまうけれど、瓜二つである理由は、小説はクローン人間落ちで、ドラマは吸血鬼落ち。あ、クローンというのは、トモヤもユウキも、トモヤの兄ということになっている、亡くなった赤ちゃんのクローン。吸血鬼のほうも説明がいる? 溺れて亡くなったと思っていたら、まだ呼吸があるうちに吸血鬼に首をかまれて、吸血鬼に。あ、“記憶喪失もの”にも似ているかな、亡くなっていたかと思ったら実は…、みたいな。(ちゃんと見たことがないけれど、何か韓国ドラマでもあったよね)。
 

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