掌篇集『ハヅキさんのこと』(講談社、2006/講談社文庫、2009)所収。掌篇小説なのでとても短いです。手もとにあるのは文庫版で、本文はたったの7ページ。後ろの「初出一覧」によれば、この1篇のそれは、<「室内」二〇〇〇年八月号(「白熱灯に邪魔をされ――肝心な時に失敗ばかり」改題)」>(p.227)と書かれている。「肝心な時」といえば、最初に思いつくのはやっぱり大学受験、なのだろうか。マブチ青年――「わたし」の友人の貴夜子が勤める法律事務所で働く40歳近いいわゆる司法浪人生(司法試験浪人)――は、大学に入るのに4浪しているらしい。国立法学部志望から結局、私立文学部に変えて入学、大学3年のときから司法試験を受け始めて、現在に至るらしい。ま、模試では成績がいいのに(「ゴウカクカクジツ」が出ているのに)本番ではダメ、みたいな話は、小説ではお約束中のお約束というか。ただ、この小説では(すべては太陽が悪い、とかではなくて)すべては白熱灯のせい、みたいなことを本人が言っている…あたりがほかの小説とはちょっと違うかもしれない。

英語の「ジンクス(jinx)」は縁起の悪いものにしか使わない言葉らしいけれど、例えばなんだろうね、試験会場に行く途中で黒い猫が目の前を横切るとか?(何か漫画で描かれていそうだな)。そういえば、自分もなくはない、ジンクス。信じてもらえないかもしれないけれど(車を運転するようになってからはそれほどでもなくなったけれど、昔から)風が激しく吹いている日は外出すると運が悪いことが多くて…というか、やっぱり信じてもらえないよな(汗)。あと、そう、川上弘美にしてはつまらない下ネタがどこかにあったような…。これか、<両親の情熱の結果みたいな名前をつけられているにしては、貴夜子はそちらの方面はさっぱりであるらしい。>(p.149)。情熱? とりあえず、全国の「貴夜子」さん(あまりいないかな)には謝ったほうがよくないか。
 

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