なんていうか各篇“色”にまつわっている短篇集『ライトグレーの部屋』(コバルト文庫、1990)に収録されている1篇(6篇中の4篇目)。いま手もとにあるのは図書館本。初出は本の後ろのほうによれば、<’89年『COBALT』冬号>とのこと。全体的な感想というかは、微妙といえば微妙なんだよな…、星2つくらいで。(星5つが満天の星空です。)※以下、いつものように、内容にまで踏み込んで書いていると思うので、ご注意ください。

翌日の大学受験のために上京した「ぼく」(上田幹彦・1浪)は、JRお茶の水の駅で赤い服を着た不思議な少女と出会う。翌日、試験で致命的な間違いをしたことがわかり、自殺まで考えながら街を彷徨していた「ぼく」、の前に再びその赤い服を着た少女が現れる――。宿泊するのがお茶の水の「Yホテル」って、作者がこの小説を「山の上ホテル」で書いていたら面白いけどね。それはともかく、「ぼく」が受験する(した)本命の私立大学は(ホテル近くのM大学などではなく)別の場所(別の駅)にあるとのこと。「Yホテル」にしたのは以前、その近くの予備校(まぁたいていの人はS台を思い浮かべるか)で模擬テストを受けた帰りに見かけて……みたいなことらしい(上京しなくても模擬テストなんてどこの地方都市でも受けられるのでは?)。試験後には新宿(大学があるのは新宿でもないらしいけれど)の雑踏を“漂っている”。(そう、試験の模範解答を試験会場(たいてい大学)の外で配っているのって、けっこう偏差値高めの有名な大学くらいだよね? どこの大学でもやっていることなのかな?)

あとがない試験に失敗した主人公を、赤い服を着た少女は「ユウミセ」というものに誘っている。――パターンでいえば、東京の(というか田舎暮らしの私がどうして東京について説明しなければならないんだか(涙))お茶の水とか水道橋とか神田とか、そのあたりは“過去”とつながっている、みたいな感じかな、この小説も。あ、違うか、あかね色の黄昏時――過去というより時間が流れていない感じ? でも、“浪人生小説”としては(浪人生とはいっても、試験前日から始まっている小説だけれど)行きたかった大学に合格できる見込みがほぼなくなって、悲愴感に溢れていたところを少女(「おにいちゃん」と呼ばれている……萌え?)が要するに慰めてくれるあたり、というのは……どうなのかな? (同じ状況に置かれたリアルな浪人生の前には、お化けのようなものだろうが、幻覚のようなものだろうが、ふつう現れませんから!(涙)。)

本人は東京の大学に進みたいけれど、親は地元の国公立大学を薦める。――これもパターンといえばパターンだけれど、実際、とても多いケースだと思う(自分も地方の三流国立大学卒なのでわかるけれど、特に女の子に多いような気がする。あ、私が文系だったからかな。男の子の場合なんて、親から「車/バイクを買ってやるから」みたいなことを言われて、納得させられちゃったりとか(汗))。それはともかく、「ぼく」の話。前年は本命の東京の私大と、親が進める地元の難しい大学の2つを受けて、両方とも落ちているらしい。で、今年は地元の国公立大学のレベルをさげることにして、予備校ではその大学(正確には公立大学らしい)のコースにも通っていたらしい。で、結局(ネタバレしてしまうけれど)、少女に「ユウミセ」に連れて行かれたあと(自殺などは思いとどまらせられたあと)、地元の公立大学を受けて合格してそこに通ったらしい。
 

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