長さでいえば短篇のというより掌篇のかな、アンソロジー『東京19歳の物語』(G.B.、2005)所収、10篇中の2篇目。この作者の小説も今回、初めて読んだけれど、会話と地の文、あるいは段落と段落がどうつながっているのか、けっこう読み直してしまうことが多かったかな。飛躍が多い? 頭に意味がすっと入ってこないというか。でも、意外と面白かったです。あと、ぎりぎり21世紀が訪れている感じ…というか、要するに新しい感じもして、その点もよかった。

この1篇の「東京」はとりあえずお台場で、季節は夏。冒頭、海の近くの芝生の上で「ぼく」(和義)と加奈子さん(主に加奈子さんのほう)はお昼ごはんを食べている。加奈子さんは友達(悟)の姉で、同棲していた彼氏にアパートを出て行かれたばかり。大阪からフェスを見るために東京にやってきた「ぼく」は、今晩その部屋に泊めてもらう予定――。暴走犬が出てきて話が急展開?(面白いからいいけれど)。野外フェスとか携帯電話とか、今風の関西弁とか、やっぱり読んでいて新しい感じ(新鮮な感じ)はするよな。描かれている浪人生じたいは――そもそも作者が描きたいのは19歳の少年よりも26歳の女性のほう?――小説にも昔からたくさんいるタイプというか、あまり勉強していない(バンドを組んだりしている)ちょっとお気楽浪人生。

そういえば、浪人生が一時的に上京する、という話の小説は、いままでに私が読んだことがある中には1つもなかったような。でも、何かすっかり忘れているものがあるような…(汗)。高校3年生なら(高3生が夏期講習を受けるために上京、みたいなものなら)はいくつか知っているし、ほかにもたくさんありそうだけれど。
 

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