本屋で雑誌『文學界』(の2010年5月号、文藝春秋)を手にとってみたら、最初の小説が“浪人生小説”だったのでちょっとびっくり。「タイニーストーリーズⅢ」と題されて掲載されている4つの掌篇小説のうちの1篇。(単行本化されるまで、ここで取りあげるのは待とうかとも思ったのだけれど、短いからいいかな、と。こんな作業(?)をいつまで続けていられるのかわからないし。)

浪人中(2浪・予備校生)の「ぼく」(順也)には、父と母と成績優秀でその言動から家族に愛されている兄(達也)がいる。――なんていうか、山田詠美、古さと新しさ、あるいは大人っぽさと子どもっぽさがきれいに練り合わされている、というか。お話(?)じたいは、以前このブログで取りあげた(ような気がする)「声の血」(『色彩の息子』)とたいして変わらないように思う。血の繋がらない母親が兄や父に変わっているだけ、な感じ(またどうしてこんなに似た設定に?)。

タイトルがらみのことでは、この作者もかなり文科系っぽいというか、たぶん数学があまり得意ではないでしょう? であれば、「微分積分」なんて言葉を持ち出さなければいいのに。あと、思うに、この小説では間接的にだけれど、「ホームレス(浮浪者)」と「浪人生」は、やっぱりイメージ的に相性がいいのかな?(cf. 山川健一『追憶のルート19』所収「十二月の子供達」、森村誠一『殺意の漂流』の「第五章 自由の広場」)

[追記]その後、単行本が出る。→『タイニーストーリーズ』文藝春秋、2010。
[追記2]その後、文庫化。文春文庫、2013.4。
 

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