手もとにあるのは集英社文庫(1993)。単行本は、講談社から出ている模様(1979年)。ひと言でいえば、意外とほのぼの“少女小説”みたいな感じ? センテンスが短めで、舌足らずな印象を受ける。――両親や学校(高校)よりも、喫茶店で知り合った彼=自称・浪人生の亮ちゃんを選んだ「私」(ケイ、恵子)は、どの仕事も長続きしない亮ちゃんに薦められて、生活のために夜の街(新宿)で男をお客としてとっている。それでも亮ちゃんから愛されている(と信じている)「私」は幸せを感じている(というか)。そんなとき(ネタバレしてしまうけれど)その亮ちゃんが突然死してしまう。で、糸の切れた凧というか、鵜飼いのいなくなった鵜というか、まだ若い「私」の運命はいかに? ――みたいな話(ちょっと違うか)。両親のもとに戻るのか、それとも同じ商売を続けて独りで生きていくのか、みたいな。「私」に調べようという気持ちがあまりないので、亮ちゃんの素性は結局、よくわからないまま(フルネームは宮沢亮太、故郷はたぶん岩手県)。そういえば、この小説も読んでいて食べ物とか、お風呂(温泉とか)がけっこうよかったな。あ、亮ちゃんが亡くなって「私」の唯一の友達が、お鮨屋のマスター=ヤスさんに。小説的にはキーパーソン(というか)になっている。

例えば、桜井亜美とかある種のケータイ小説が好きで読んでいる人が読むと、どう思うんだろうね、この小説は? 私にはわからないけれど、主人公の性格とか物語(ストーリー)とか、すごく素朴に感じてしまうかもしれないな。1979年って、高校生が書いたという触れ込みの中沢けい「海を感じる時」は、もう出ているんだっけ? あ、出ている(同名の単行本が1978年に講談社から)。ちなみに作者の津村節子は1928年、福井県生まれ。そういえば、作中でも夏に福井(の若狭)に行っている。
 

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