佐野洋 「灰色の軌跡」
2010年5月19日 読書
『奇しくも同じ日に……』(講談社文庫、1987)所収、9篇中の8篇目。この1篇の初出は(本の後ろのほうによれば)『問題小説』1974年2月号らしい。※以下、ネタバレ注意です、毎度すみません。で、感想はといえば、意外と面白かったです。特に人間関係のサプライズ(というか)が。友夫(苗字は岸、週刊誌の編集部に勤める)は、付き合っている信江(苗字は玉井、編集部の元アルバイトで大学生)から相談ばなしを聞かされる。高校時代からの友人(「片岡富士子」)が父親の留守中に見てしまった日記に、その昔、その父親(「片岡」)が犯した(もちろん捕まっていない)犯罪=殺人を告白する内容が書かれていて…、みたいな。作中年がわからないけれど、発表年の1974年だとすれば、24年前は1950年になる。たしかにまだ戦後の占領期。こちらの浪人生は<旧陸軍歩兵用の外套>(後藤明生『挾み撃ち』)ではなくて、<米軍払い下げの軍靴>(p.255)をはいていたらしい。「片岡」くん、岡山から上京してまだ新婚の兄夫婦と同居して、予備校に通っている。性欲というか、欲望が鬱積して勉強に手がつかなくて…、みたいな話は、少なくとも“受験生小説”ではパターンかな。
<予備校にも、日常の挨拶をする程度の友人がいないではない。しかし、そこに通っている学生のほとんどは、東京の高校を出た者であった。/片岡には、最初から、自分が田舎者と見られているのではないか、という意識があり、心から打ちとけて、彼らの仲間に入って行く気になれない。>(p.227)
相談までできるほどの相手はいない、みたいな箇所。当時の平均的な(?)予備校の、学生(生徒)における地方出身者の割合ってどれくらい、だったんだろうね?(わからんです)。(ちなみに、浪人生は出てこないけれど、“男子受験生とその性欲”ということでは、極端な例かもしれないけれど、松本清張「歯止め」(『黒の様式』新潮文庫ほか)など参照です。そういえば、後藤明生『挾み撃ち』でも浪人中、女性のあとをつけていたっけな。)
ネタバレしてしまうけれど、結局のところ、いとこ?
<予備校にも、日常の挨拶をする程度の友人がいないではない。しかし、そこに通っている学生のほとんどは、東京の高校を出た者であった。/片岡には、最初から、自分が田舎者と見られているのではないか、という意識があり、心から打ちとけて、彼らの仲間に入って行く気になれない。>(p.227)
相談までできるほどの相手はいない、みたいな箇所。当時の平均的な(?)予備校の、学生(生徒)における地方出身者の割合ってどれくらい、だったんだろうね?(わからんです)。(ちなみに、浪人生は出てこないけれど、“男子受験生とその性欲”ということでは、極端な例かもしれないけれど、松本清張「歯止め」(『黒の様式』新潮文庫ほか)など参照です。そういえば、後藤明生『挾み撃ち』でも浪人中、女性のあとをつけていたっけな。)
ネタバレしてしまうけれど、結局のところ、いとこ?
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