単行本は河出書房新社から(1973年)、文庫は集英社文庫、河出文庫、講談社文芸文庫から出ている模様。手もとにあるのは講談社文芸文庫版(1998年)。←古本屋ではなく新刊本屋でだいぶ迷ったすえに購入、高かったです(あいかわらずの貧乏買い(涙))。ほかに何か文学全集のたぐいでも読めるかもしれない。

ちょっとユーモア小説というか、読んでいる間は、とても面白かったです。だじゃれも多いけれど、だじゃれが面白いわけではなくて…、言葉の繰り返しが多くて、それはちょっと癖になる感じもするかな(よくわからないけれど)。それ以外の感想は、えーと…、特にないな(汗)。というか、最近、何を読んでも感想が出てこないのだけれど、それはともかく。そう、最後まで読んでも(そういえば、久しぶりに講談社文芸文庫が最後まで読み通せたな)「わたし」が20年前に大学受験に失敗したあと、どうして東京(正確には埼玉県の蕨町)に下宿していたのか、当時そこで何のために何をしていたのか、がよくわからない。アルバイトをしたり、知人と飲んだり、「亀戸三丁目」に行ったりしていたのはわかるけれど。「浪人ちゅう」という言葉も使われているけれど、試験準備、受験勉強をしている気配がまったくない!(涙)。

 <二十年前に北九州から上京した時に着ていた旧陸軍の外套の行方を求めて、昔の下宿先を訪ねる一日の間に、主人公の心中には、生まれ育った朝鮮北部で迎えた敗戦、九州の親の郷里への帰還、学生時代の下宿生活などが、脱線を繰り返しながら次々に展開する。/他者との関係の中に自己存在の根拠を見出そうとする思考の運動を、独特の饒舌体で綴った傑作長篇。>(カバー裏より)

ありがちだけれど、微妙にずれている? <他者との関係の中に自己存在の根拠を見出そうとする思考の運動>という箇所は、個人的にはガン無視しておきたい(汗)。あ、本の後ろについている解説(武田信明「不意撃ち/挟み撃ち」)はちゃんとしています。なんていうか、やっぱりとりあえずは“戦争小説”として読まれやすい話?(うーん…)。

どうでもいいことだけれど、<早起きは三文の得>にあたるカタカナ書き英語、<ジ・アーリィ・バード・キャッチズ・ア・ウォーム>について、どっちもどっちだけれど、wormは、ふつう「ウォーム」よりも「ワーム」だよね?(そんなこともない?)。あと、これもどうでもいいことだけれど、カタカナつながりで、<ライオンという筆名を持ったさる高名な流行作家>(p.21)というのは、獅子文六でいい? 「お茶の水橋」ではなくて「お金の水橋」が出てくる小説――って、何のことだろう? 「わたし」(1952年に高校卒業)が高校生のときに新聞連載されていた、というのだから、えーと…、『てんやわんや』か『自由学校』のどちらか?(ぜんぜん読んだことがない)。あ、獅子文六ってあのへん(どのへん?)に住んでいたことがあるらしい。――いまカンニングしていたのは、『現代日本の文学 30 獅子文六集』(学習研究社、1970)の後ろの「年譜」。その昭和21年(1946年)のところに、

 <十月、四年ぶりに東京に転入し、神田駿河台の主婦之友寮に仮寓する。>

とある。(ちなみに、『挾み撃ち』では中学1年生の「わたし」が引き揚げる前に穴を掘って『陸軍』という雑誌を燃やしているけれど、『現代日本の文学30 ~』所収、獅子文六の『海軍』には、その片割れ、雑誌『海軍』のほうが出てくる。)

浪人ということでは、ほかに下宿先の石田家の長男(栄一)が当時、浦和高校の2年生で、1浪して東大に、とのこと。浪人中に交流のあった高校の同級生で友人の久家(くが、現在銀行員)が3浪して一橋大学、とのこと。あ、「わたし」に関しては、翌年(1953年)大学を受験したのかどうかすら書かれていない(それとも、書かれていたのに見落としたかな)。
 

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