重松清 『日曜日の夕刊』
2010年6月20日 読書
毎日新聞社、1999/新潮文庫、2002。12篇収録されている短篇集。いちおう2篇に浪人生が出てくる。感想というかは、なんていうか、重松清の小説を読んでいると、いつも頭に「愚鈍」という言葉が浮かんでくる。今回も、読んでいてけっこういらいらでした(感想ではないよな)。
「寂しさ霜降り」(6篇目)
6月に入ったばかり、ダイエット中の「わたし」(彩香、18歳)は大学1年生。3ヶ月前に上京しておねえちゃん=ミーちゃん(美津子、社会人・24歳)とふたり暮らしをしている。で、その妹と姉に元(実の)父親が余命3ヶ月であることが知らされる。9年前に両親が離婚して父親が家を出てから(「わたし」とは違って)太り出して、太っていることを気にしていなかったおねえちゃんが、やせると言い出す。――姉妹というか「わたし」に父親が余命幾ばくもないことを伝えるのが、浪人中で予備校生のいとこ(正確には元いとこか)。「カツトシ(勝利)」という名前だけれど、「わたし」は「マケトシ」と呼んでいる。読んでいて最初2人が付き合っているのかな、と思ってしまったけれど、同じ歳の幼なじみ的な感じ? 「わたし」は(ダイエット中のいらいらもあってか)カツトシに皮肉っぽいことを言っているし、八つ当たり(というか)もしている。――ちょっと引用させてもらうか、このいとこの「マケトシ」具合を。
<(略)。高校受験は第一志望の県立を落っこちたし、大学受験も滑り止めまで全滅。いちおうキムタクかソリマチ意識してロン毛に日焼け入れてるけど、ルックスがよくないぶんかえってみじめだし、スポーツも苦手、歌もへた、オタクになってなにかをきわめる根気もなけりゃ、ストーカーになるほどの熱意もない。ついで予備校の奨学生試験にも落っこちたし、格安の寮の抽選にもはずれた。(略)>(p.196、文庫)
私は反町隆史(俳優)がロン毛だったことをすでに覚えていない(汗)。要するにいわゆる“丘サーファー”みたいな?(それも死語か)。あ、寮に入りたかったということは、本当は上京したかったということかな?(…東京とはかぎらないな、別の都市かもしれないし)。あと、自動車の免許も持っているのだけれど、浪人生が車の免許をもっている、というのは、なんだか、青春ミステリーな小峰元の小説みたいだな(というか、読んだことがないですか、小峰元?)。年齢的には運転できても「わたし」のほうは、女性だし(特に長距離の運転をさせるのは危ない?)、上京しているので免許不要(東京は電車がたくさん)だからかもしれない。あ、経済的な理由もあるかな。
「サンタにお願い」(9篇目)
クリスマス本番目前の12月20日、「オレ」(マツオカ)は受験勉強をほとんど放棄している上京予備校生…というよりほとんどフリーターで、この日もピザ屋のアルバイトをしている。
<親父やオフクロは、東京から遠く離れた故郷の町で、オレの大学合格を祈ってるだろう。予備校の冬期講習に通って必死に勉強してるんだと信じてるだろう。まさかピザのデリバリーのバイトくんやってるなんて、しかもサンタクロースの格好してスクーターかっとばしてるなんて、夢にも思ってないはずだ。>(p.326)
で、ピザの配達中に<ガングロ白メッシュ、涙シール付き>(p.328)な女子高校生に声をかけられ――確認しておくと、この小説のタイトルは「サンタにお願い」――ピザ代とバイト代のぶんのお金(援○交際まがいで稼いだもの)を払うから、1時間付き合って欲しい、と頼まれて、なんだかんだで付き合うことに。すると、その子の出身中学校に連れて行かれ(ネタバレしてしまうけれど)まだ灯りの点いている職員室の中に見える、あの男性が自分の父親だと言う。――ほんと重松清の小説にはむかついてしまって(涙)。なんでだろう?(というか、自己分析したくないや(汗))。家族(特に父と息子、父と娘)を描くにしてももっと別な方法があるのではないか。うーん…。
上の2篇以外に、お馬鹿な大学1年生を語り手にした「桜桃忌の恋人」(3篇目)には、最初のへんに次のような箇所がある。
<「障害は不便だけど不幸じゃない」とか、いいこと言うんだ、このひと[=『五体不満足』のオトタケさん(引用者注)]がまた。あんまり感心したもんで、大学受験に失敗したダチに「浪人は不便だけれど不幸じゃない」と励ましのファックスを送ってやったら、マジ、絶交されそうになった。>(p.78)
二重、三重の意味で笑えない。大学に入学して初めて読んだ本が『五体不満足』で、しかもそれが『一杯のかけそば』以来の「カンドー」…。主人公がこのあと、なんだかんだで太宰治の小説(タイトル参照)にはまるのだけれど、私は(何度も書いているような気がするけれど)太宰治が嫌いなんだよね(涙)。関係ないけれど、乙武洋匡さんは1浪(S台の新宿校)→W大。太宰治は、旧制高校に入るのに浪人はしていない(四修で合格)。知らないけれど、重松清も浪人はしていないんじゃないかな(いや、わからないけれど)。あ、大学は「桜桃忌の恋人」の「オレ」(広瀬)とは違って、女優・広末涼子の先輩にあたる(W大の教育学部)。
「寂しさ霜降り」(6篇目)
6月に入ったばかり、ダイエット中の「わたし」(彩香、18歳)は大学1年生。3ヶ月前に上京しておねえちゃん=ミーちゃん(美津子、社会人・24歳)とふたり暮らしをしている。で、その妹と姉に元(実の)父親が余命3ヶ月であることが知らされる。9年前に両親が離婚して父親が家を出てから(「わたし」とは違って)太り出して、太っていることを気にしていなかったおねえちゃんが、やせると言い出す。――姉妹というか「わたし」に父親が余命幾ばくもないことを伝えるのが、浪人中で予備校生のいとこ(正確には元いとこか)。「カツトシ(勝利)」という名前だけれど、「わたし」は「マケトシ」と呼んでいる。読んでいて最初2人が付き合っているのかな、と思ってしまったけれど、同じ歳の幼なじみ的な感じ? 「わたし」は(ダイエット中のいらいらもあってか)カツトシに皮肉っぽいことを言っているし、八つ当たり(というか)もしている。――ちょっと引用させてもらうか、このいとこの「マケトシ」具合を。
<(略)。高校受験は第一志望の県立を落っこちたし、大学受験も滑り止めまで全滅。いちおうキムタクかソリマチ意識してロン毛に日焼け入れてるけど、ルックスがよくないぶんかえってみじめだし、スポーツも苦手、歌もへた、オタクになってなにかをきわめる根気もなけりゃ、ストーカーになるほどの熱意もない。ついで予備校の奨学生試験にも落っこちたし、格安の寮の抽選にもはずれた。(略)>(p.196、文庫)
私は反町隆史(俳優)がロン毛だったことをすでに覚えていない(汗)。要するにいわゆる“丘サーファー”みたいな?(それも死語か)。あ、寮に入りたかったということは、本当は上京したかったということかな?(…東京とはかぎらないな、別の都市かもしれないし)。あと、自動車の免許も持っているのだけれど、浪人生が車の免許をもっている、というのは、なんだか、青春ミステリーな小峰元の小説みたいだな(というか、読んだことがないですか、小峰元?)。年齢的には運転できても「わたし」のほうは、女性だし(特に長距離の運転をさせるのは危ない?)、上京しているので免許不要(東京は電車がたくさん)だからかもしれない。あ、経済的な理由もあるかな。
「サンタにお願い」(9篇目)
クリスマス本番目前の12月20日、「オレ」(マツオカ)は受験勉強をほとんど放棄している上京予備校生…というよりほとんどフリーターで、この日もピザ屋のアルバイトをしている。
<親父やオフクロは、東京から遠く離れた故郷の町で、オレの大学合格を祈ってるだろう。予備校の冬期講習に通って必死に勉強してるんだと信じてるだろう。まさかピザのデリバリーのバイトくんやってるなんて、しかもサンタクロースの格好してスクーターかっとばしてるなんて、夢にも思ってないはずだ。>(p.326)
で、ピザの配達中に<ガングロ白メッシュ、涙シール付き>(p.328)な女子高校生に声をかけられ――確認しておくと、この小説のタイトルは「サンタにお願い」――ピザ代とバイト代のぶんのお金(援○交際まがいで稼いだもの)を払うから、1時間付き合って欲しい、と頼まれて、なんだかんだで付き合うことに。すると、その子の出身中学校に連れて行かれ(ネタバレしてしまうけれど)まだ灯りの点いている職員室の中に見える、あの男性が自分の父親だと言う。――ほんと重松清の小説にはむかついてしまって(涙)。なんでだろう?(というか、自己分析したくないや(汗))。家族(特に父と息子、父と娘)を描くにしてももっと別な方法があるのではないか。うーん…。
上の2篇以外に、お馬鹿な大学1年生を語り手にした「桜桃忌の恋人」(3篇目)には、最初のへんに次のような箇所がある。
<「障害は不便だけど不幸じゃない」とか、いいこと言うんだ、このひと[=『五体不満足』のオトタケさん(引用者注)]がまた。あんまり感心したもんで、大学受験に失敗したダチに「浪人は不便だけれど不幸じゃない」と励ましのファックスを送ってやったら、マジ、絶交されそうになった。>(p.78)
二重、三重の意味で笑えない。大学に入学して初めて読んだ本が『五体不満足』で、しかもそれが『一杯のかけそば』以来の「カンドー」…。主人公がこのあと、なんだかんだで太宰治の小説(タイトル参照)にはまるのだけれど、私は(何度も書いているような気がするけれど)太宰治が嫌いなんだよね(涙)。関係ないけれど、乙武洋匡さんは1浪(S台の新宿校)→W大。太宰治は、旧制高校に入るのに浪人はしていない(四修で合格)。知らないけれど、重松清も浪人はしていないんじゃないかな(いや、わからないけれど)。あ、大学は「桜桃忌の恋人」の「オレ」(広瀬)とは違って、女優・広末涼子の先輩にあたる(W大の教育学部)。
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