手もとにあるのは徳間文庫版(1998年)、初出=書き下ろしの単行本は1967年に講談社から出ているようだ(画像は集英社文庫版)。読んでいてちょっとすかすか感(すーすー感)もあったけれど、ぜんぜん期待せずに読んでいたせいか、それほど嫌に感じる小説ではなかったです。

 <岡弘が絞殺された。発見者は弘の継母、久子。父、一夫はがんセンターに入院中で余命幾ばくも無い。ちょうど岡家代々の土地が、ニュータウン計画に莫大な金額で回収されることが決まった時であり、遺産相続がらみの殺人との観点で捜査が始まった。もっとも有力な容疑者は弘の叔父の京一郎だが、彼には鉄壁のアリバイがある……。幾重にも連なるアリバイの巧妙さで、推理小説界に反響を巻き起こした、傑作長篇!>(カバー裏より)

「京一郎」は「京二郎」の間違い(「伯父」ではなく「叔父」だしね)。大部分が警察サイド目線の小説で(田所部長刑事、本部から来た桜林警部)、その叔父さんが主張するアリバイが1つ嘘であるとわかると、また別のアリバイが主張されて調べて…、みたいな構造になっている。冒頭のへん、散歩中に首輪を外してもらった犬(チェリー)が、スピード違反の自動車に轢かれている。――個人的な話、最近やけに犬が亡くなったり(亡くならないまでも)犠牲になったりする小説を読んでいるような…。あと、岡家があるのは、横浜市(港北区勝田町)。警察発表では無職の若者とかだっけ、弘くんは大学受験失敗後、自室をアトリエにして絵を描いていたらしい。

 <「型にはまった大学の勉強より、アメリカ大陸で自由に絵を書く方が、おれの性に合っている!」>(p.17)

お父さんはもちろん反対。大学進学をやめて芸術家に、というのは(少なくとも)小説では1つのパターンだと思う。東大志望や医学部志望をやめて美大志望に、みたいなケースも多い。ま、いずれにせよ、亡くなってしまえば意味がないよね(?)。そう、どうでもいいけれど、「親不孝通り」(p.232)というのは、東京にもあるの? 知らなかったです(たくさん飲み屋があるようなところ?)。
 

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