連作といえば連作かな(たぶん場所が共通)、短篇集『四雁川流景』(文藝春秋、2010)に収録されている一篇(7篇中の5篇目)。ひと言でいえば“お墓小説”?(違うか)。感想はといえば、どこが面白いのやらさっぱりわからず(誰か読み方を教えて欲しい)。
舞台は四雁(しかり)川が流れるどこかの地方の県。予備校の友人(=幸介)が山(風穴)に行くと言って、そのままゆくえ知れずに。ちょっとミステリー風な? 彼が置き忘れていった本(観光ガイドブック)に書き込まれていた場所は、チタンダエル…じゃなくて、「タワードエル」の13階(最上階)の一室。そこは整体院で、主人公(というか視点人物)の雄作が訪ねて行くと、白衣を着た老婆と1匹の老兎が出てくる。――その建物は、古くは古墳があり、戦争中、誤爆によって開いた穴にはたくさんの遺体が埋葬されたという土地の上に、10年くらい前に建てられたチョコレート色のマンション。文房具屋の老主人いわく、<あれは巨大な墓だ、コンクリートの塔婆なんだ>(p.124)。で、そもそも思うに「(卒)塔婆」という言葉は、別にお婆さんには関係がないよね? 「塔に婆(ばあ)」――漢字依存的な笑えないだじゃれだよ(とほほ)。“母-息子小説”としても、どうなのかな? よくわからないけれど、微妙といえば微妙かもしれない。
帯に<芥川賞作家がおくる>みたいな言葉があるけれど、なんていうか“純文学”系の小説がこんなにベタでいいの?(というか、私の読み方が浅いだけなのかな)。場所が地方であるにしても、携帯電話(「Cメール」って何?)がある世界なのに、全体的になんだか「いつの時代の話だよ?」みたいな感じもするし。ずっと1視線小説(1元小説)で、その視点を担っている雄作くんの、数年前に癌で亡くなったお父さんが美術教師とのことだけれど、お父さんの血を受け継げなかったのか、風景描写もなんだか安っぽいというか、詩ごころが足りていない感じだし。
まだ秋なのに、<センター試験が近づいた今>(p.118)。作者は、国民的行事(?)センター試験が毎年いつ頃に行なわれているのか、知らんのか?(うーん…)。雄作は、近所の八百屋にパートに出ているお母さんと2人暮しっぽい。経済的に大学進学は問題ないのかな?(余計なお世話か)。自分の部屋からは“塔”が見える。志望大学・学部は不明。行方が不明な幸介くんのほうは、獣医学部志望で、両親は健在のようだ。お父さんは医者らしい(獣医?)。「隣町」「隣町」と言っているけれど、雄作の家と件のマンションが同じ町にあって、その隣町に幸介の家と予備校があるの?(ちゃんと読み直さないとわからないな)。
ちなみに作者は1956年、福島県生まれ。別の資料(本)によれば、浪人はしているっぽい。高校卒業後、上京。予備校を経て慶応義塾大学に入学とのこと。(あ、関係ないけれど、「千反田える」というのは、米澤穂信の小説の登場人物。)
[追記]収録本はその後、文庫化される(文春文庫、2013.3)。
舞台は四雁(しかり)川が流れるどこかの地方の県。予備校の友人(=幸介)が山(風穴)に行くと言って、そのままゆくえ知れずに。ちょっとミステリー風な? 彼が置き忘れていった本(観光ガイドブック)に書き込まれていた場所は、チタンダエル…じゃなくて、「タワードエル」の13階(最上階)の一室。そこは整体院で、主人公(というか視点人物)の雄作が訪ねて行くと、白衣を着た老婆と1匹の老兎が出てくる。――その建物は、古くは古墳があり、戦争中、誤爆によって開いた穴にはたくさんの遺体が埋葬されたという土地の上に、10年くらい前に建てられたチョコレート色のマンション。文房具屋の老主人いわく、<あれは巨大な墓だ、コンクリートの塔婆なんだ>(p.124)。で、そもそも思うに「(卒)塔婆」という言葉は、別にお婆さんには関係がないよね? 「塔に婆(ばあ)」――漢字依存的な笑えないだじゃれだよ(とほほ)。“母-息子小説”としても、どうなのかな? よくわからないけれど、微妙といえば微妙かもしれない。
帯に<芥川賞作家がおくる>みたいな言葉があるけれど、なんていうか“純文学”系の小説がこんなにベタでいいの?(というか、私の読み方が浅いだけなのかな)。場所が地方であるにしても、携帯電話(「Cメール」って何?)がある世界なのに、全体的になんだか「いつの時代の話だよ?」みたいな感じもするし。ずっと1視線小説(1元小説)で、その視点を担っている雄作くんの、数年前に癌で亡くなったお父さんが美術教師とのことだけれど、お父さんの血を受け継げなかったのか、風景描写もなんだか安っぽいというか、詩ごころが足りていない感じだし。
まだ秋なのに、<センター試験が近づいた今>(p.118)。作者は、国民的行事(?)センター試験が毎年いつ頃に行なわれているのか、知らんのか?(うーん…)。雄作は、近所の八百屋にパートに出ているお母さんと2人暮しっぽい。経済的に大学進学は問題ないのかな?(余計なお世話か)。自分の部屋からは“塔”が見える。志望大学・学部は不明。行方が不明な幸介くんのほうは、獣医学部志望で、両親は健在のようだ。お父さんは医者らしい(獣医?)。「隣町」「隣町」と言っているけれど、雄作の家と件のマンションが同じ町にあって、その隣町に幸介の家と予備校があるの?(ちゃんと読み直さないとわからないな)。
ちなみに作者は1956年、福島県生まれ。別の資料(本)によれば、浪人はしているっぽい。高校卒業後、上京。予備校を経て慶応義塾大学に入学とのこと。(あ、関係ないけれど、「千反田える」というのは、米澤穂信の小説の登場人物。)
[追記]収録本はその後、文庫化される(文春文庫、2013.3)。
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