三木卓 『ほろびた国の旅』
2010年8月8日 読書
最初の単行本は、盛光社というところから1969年に出ているようだ。いま手もとにあるのは、図書館から借りてきた(検索したら1冊しか出てこなかったのだけれど)その新装版(1974年)。右上の画像は2009年に講談社から再刊(復刊)されたもの。児童文学というか「童話」であるようだ。――で、意外と面白かったです。なんていうか“戦争小説”でもあって、もともと子ども向けの本だからか、メッセージがわかりやすくなっているかもしれない。人種差別はいけないとか、もちろん戦争はいけないとか。(あ、「人種差別」と言うよりも「民族差別」と言ったほうがいいのかな。)あと、ちゃんと(?)主人公が精神的に成長していて、“成長小説”にもなっていると思う。
1954年ごろの話、大学受験に失敗した「ぼく」(=三木卓)は、ある日、図書館で本の出納台に昔の知り合いである山形さんに似た青年を見かけ、声をかけてなんだかんだで(?)もみ合いになって書棚で頭を打ってしまう。で、気がつくと、すでに滅んだ国=満州国の大連にいる、みたいな話。――過去の現実(実際)とはずれている点があるにしても、せっかく主人公が時間的・空間的に移動しているのに、大連のあとは、ずっとあじあ号(満州鉄道)に乗ったまま。やっぱり1箇所くらい途中下車してほしかったかな。あ、でも(ページをめくりなおしてみると)大連での話がけっこう長めだったんだね。(関係ないけれど、鉄道といえば、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』? いまだに読んだことがないな。というか、有名な文学作品なんてほとんど読んだことがない(涙)。)
最初のへんが個人的にちょっと好きなのだけれど、引用しても大丈夫かな、
<そのころ、ぼくは大学の入学試験を失敗して、どこにもいかなくていい毎日をすごしていました。ぼくは、星をながめて夜あかしをしたり、郊外の大きな池でプランクトンの網をひっぱったりすることが大好きだったから落第もしかたがなかったのです。(略)/落第したことがわかったとき、ぼくはなんだか、かなりくたびれていたみたいです。風景がとてもきれいに見えて涙が出てきたりしてすこし病気みたいでした。(略)>(pp.6-7)
という感じ。ま、大学受験というのは、かなりくたびれるもんだよね(?)。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
ちなみに作者も、1954年に現役で東大を受けて、落ちて1年浪人している(→早大)。でも、この人、浪人中、どこで何をしていたのかな?(年譜だけではわからない)。『柴笛と地図』(集英社、2004、のち集英社文庫)という小説の最後のへんでは(ネタバレしてしまうけれど)、東大を受けて落ちた高校3年生の主人公(=豊三)は、予備校の入学案内を見比べて(お兄さんは研数学館を勧めるのだけれど)紅露外語という予備校(?)を選んでいる。もし作者が(静岡から上京して)そこに通っていないなら、その名前を持ち出した理由が、私にはよくわからない。
1954年ごろの話、大学受験に失敗した「ぼく」(=三木卓)は、ある日、図書館で本の出納台に昔の知り合いである山形さんに似た青年を見かけ、声をかけてなんだかんだで(?)もみ合いになって書棚で頭を打ってしまう。で、気がつくと、すでに滅んだ国=満州国の大連にいる、みたいな話。――過去の現実(実際)とはずれている点があるにしても、せっかく主人公が時間的・空間的に移動しているのに、大連のあとは、ずっとあじあ号(満州鉄道)に乗ったまま。やっぱり1箇所くらい途中下車してほしかったかな。あ、でも(ページをめくりなおしてみると)大連での話がけっこう長めだったんだね。(関係ないけれど、鉄道といえば、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』? いまだに読んだことがないな。というか、有名な文学作品なんてほとんど読んだことがない(涙)。)
最初のへんが個人的にちょっと好きなのだけれど、引用しても大丈夫かな、
<そのころ、ぼくは大学の入学試験を失敗して、どこにもいかなくていい毎日をすごしていました。ぼくは、星をながめて夜あかしをしたり、郊外の大きな池でプランクトンの網をひっぱったりすることが大好きだったから落第もしかたがなかったのです。(略)/落第したことがわかったとき、ぼくはなんだか、かなりくたびれていたみたいです。風景がとてもきれいに見えて涙が出てきたりしてすこし病気みたいでした。(略)>(pp.6-7)
という感じ。ま、大学受験というのは、かなりくたびれるもんだよね(?)。
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ちなみに作者も、1954年に現役で東大を受けて、落ちて1年浪人している(→早大)。でも、この人、浪人中、どこで何をしていたのかな?(年譜だけではわからない)。『柴笛と地図』(集英社、2004、のち集英社文庫)という小説の最後のへんでは(ネタバレしてしまうけれど)、東大を受けて落ちた高校3年生の主人公(=豊三)は、予備校の入学案内を見比べて(お兄さんは研数学館を勧めるのだけれど)紅露外語という予備校(?)を選んでいる。もし作者が(静岡から上京して)そこに通っていないなら、その名前を持ち出した理由が、私にはよくわからない。
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