宮原昭夫 「やわらかい兇器」
2010年8月9日 読書
手もとにあるのは、図書館から借りてきた『宮原昭夫小説選』(河出書房新社、2007)という本。後ろのほうによれば、初出は『文學界』1967年6月号で、単行本は『石のニンフ達』(文藝春秋、1969)、文庫は『駈け落ち』(集英社文庫、1981)に収録されているようだ(できれば文庫本が欲しいのだけれど、地元ブックオフでは無理っぽい)。感想はといえば、とりあえず面白くはなかったというか、うまく言えないけれど、ちょっと微妙な小説でした(うーん…)。※推理小説ではないですが、以下、いちおうネタバレ注意です。
予備校生の団加寿夫(2浪)が自殺する。1度目は失敗、2度目に成功。1度目のあと、同学年で“友人”の白井(いまは大学生)や姉の昌子(最初の節=「一」だけその姉目線)に語っていた話は、同じ予備校にいる巽響子という女の子が男に犯されて妊娠。手術をしたけれど、あとでほかの医者に行ってみると、もともと妊娠していなかった、すなわち想像妊娠で、悪徳医者にだまされていたことがわかって…、みたいな話。昌子はそのことと自殺とがどう関係するのか、弟に問い質したりしている。仕方がなく(?)加寿夫は、響子を犯した相手が姉の恋人である高尾――大学助教授で加寿夫&響子が通う予備校の講師――であるとも口にする。で、2度目の自殺=加寿夫の死後、予備校生の巽響子(「二」から最後まで響子目線)は、学校を通じて見知らぬ女性から呼び出され、喫茶店で会って話をする。喫茶店には高校のときの1つ上の先輩で(1浪して)いまは大学生の峯篤志にこっそりついて来てもらっている。響子はその女性=昌子から加寿夫のことを聞かされたり、質問されたりもするけれど、誰のことだかわからないし、身に覚えがまったくない。……粗筋、もうこれくらいで(汗)。最後のへんでは、加寿夫ノートも登場。
なんていうか、加寿夫くんは自殺することによって、自分のことに対して無理解だった周囲の人間に対して、いちおう“復讐成功”みたいなことになっているのかな?(よくわからない、加寿夫の意図・目的が)。というか、元も子もないことをいえば、そもそも設定的に、別に2人が予備校生ではなくてもいいような。例によって何のために読んだのやらだな…(個人的な話)。そう、響子が高尾先生の授業を受けている場面がある。定番といえば定番かもしれない、六条御息所の生霊のへん(@『源氏物語』)。ちなみに、加寿夫くんと似ていておどおど(?)しているお父さんは、落ちぶれた(?)高校教師。かつて司法官になりたくて資格試験に2度落ちているらしい(落第は遺伝する?)。お母さんは亡くなっている。一方、響子(1浪)のほうは、お父さんは法曹界の重鎮で、お母さんは三ヶ国語がぺらぺら、とのこと。このお母さんは作中に登場してくる。
そう、1967年に発表された小説で、主な主人公が女子予備校生というのは、かなり早いほうだと思う(あ、作者は男性作家だけれど)。この小説は芥川賞の候補にもなっているらしいけれど、庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』(1969年、芥川賞受賞作)よりも、少し早いことにも注目しておきたい、個人的には。(よくわからないのだけれど、1967年であるとまだ、国公立大学の教授・助教授や、公立高校の教師が予備校でアルバイトをすることは、可能だった? というか、いつごろ禁止されたのかな?)
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この本(=『宮原昭夫小説選』)には、ほかに予備校講師(女性)が主人公の「変態」(『文學界』1981年4月号→『魑魅魍魎』河出書房新社、1982)や、たぶん作者の自伝的な小説である「癒える」(『海燕』1991年6月号)なども収録されている。「やわらかい兇器」よりも「癒える」のほうが面白かったけれど、まぁいいか。「癒える」の主人公(=伊庭葉二)は、高校2年のときに肺結核で4年間も休学している。で、高校卒業後、大学に入るまでに1年浪人している(たぶん作者も同じだと思う)。
予備校生の団加寿夫(2浪)が自殺する。1度目は失敗、2度目に成功。1度目のあと、同学年で“友人”の白井(いまは大学生)や姉の昌子(最初の節=「一」だけその姉目線)に語っていた話は、同じ予備校にいる巽響子という女の子が男に犯されて妊娠。手術をしたけれど、あとでほかの医者に行ってみると、もともと妊娠していなかった、すなわち想像妊娠で、悪徳医者にだまされていたことがわかって…、みたいな話。昌子はそのことと自殺とがどう関係するのか、弟に問い質したりしている。仕方がなく(?)加寿夫は、響子を犯した相手が姉の恋人である高尾――大学助教授で加寿夫&響子が通う予備校の講師――であるとも口にする。で、2度目の自殺=加寿夫の死後、予備校生の巽響子(「二」から最後まで響子目線)は、学校を通じて見知らぬ女性から呼び出され、喫茶店で会って話をする。喫茶店には高校のときの1つ上の先輩で(1浪して)いまは大学生の峯篤志にこっそりついて来てもらっている。響子はその女性=昌子から加寿夫のことを聞かされたり、質問されたりもするけれど、誰のことだかわからないし、身に覚えがまったくない。……粗筋、もうこれくらいで(汗)。最後のへんでは、加寿夫ノートも登場。
なんていうか、加寿夫くんは自殺することによって、自分のことに対して無理解だった周囲の人間に対して、いちおう“復讐成功”みたいなことになっているのかな?(よくわからない、加寿夫の意図・目的が)。というか、元も子もないことをいえば、そもそも設定的に、別に2人が予備校生ではなくてもいいような。例によって何のために読んだのやらだな…(個人的な話)。そう、響子が高尾先生の授業を受けている場面がある。定番といえば定番かもしれない、六条御息所の生霊のへん(@『源氏物語』)。ちなみに、加寿夫くんと似ていておどおど(?)しているお父さんは、落ちぶれた(?)高校教師。かつて司法官になりたくて資格試験に2度落ちているらしい(落第は遺伝する?)。お母さんは亡くなっている。一方、響子(1浪)のほうは、お父さんは法曹界の重鎮で、お母さんは三ヶ国語がぺらぺら、とのこと。このお母さんは作中に登場してくる。
そう、1967年に発表された小説で、主な主人公が女子予備校生というのは、かなり早いほうだと思う(あ、作者は男性作家だけれど)。この小説は芥川賞の候補にもなっているらしいけれど、庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』(1969年、芥川賞受賞作)よりも、少し早いことにも注目しておきたい、個人的には。(よくわからないのだけれど、1967年であるとまだ、国公立大学の教授・助教授や、公立高校の教師が予備校でアルバイトをすることは、可能だった? というか、いつごろ禁止されたのかな?)
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この本(=『宮原昭夫小説選』)には、ほかに予備校講師(女性)が主人公の「変態」(『文學界』1981年4月号→『魑魅魍魎』河出書房新社、1982)や、たぶん作者の自伝的な小説である「癒える」(『海燕』1991年6月号)なども収録されている。「やわらかい兇器」よりも「癒える」のほうが面白かったけれど、まぁいいか。「癒える」の主人公(=伊庭葉二)は、高校2年のときに肺結核で4年間も休学している。で、高校卒業後、大学に入るまでに1年浪人している(たぶん作者も同じだと思う)。
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