講談社、2010。連作短篇集。ありがちな“アパート住人小説”? すごくつまらなかったというわけではないけれど、それほど面白かったというわけでもなく、…うーん。そういえば、私は小説に関しては、基本的に“文庫派”なのだけれど、最近、単行本もぽつぽつと買って読んでいて。だから(?)しみじみ思うに1,500円(税別)はかなり高いよね…、この小説は内容から勝手に値段を付ければ、ずばり400円! という感じ。屋台のたこ焼き価格。誰か伊藤たかみの小説に対して「B級純文学」という言葉を使っていなかったっけ? それを半分パクれば、この小説は「B級エンタメ系小説」という感じかも。微妙です。微温的というよりずっと平熱な感じがする(意味不明?)。

アパートがあるのは、例によって(?)東京で、荻窪と阿佐ヶ谷の両駅から同じくらいの距離にある、住宅街のなか。小説家の加藤(202号室)、医学部浪人の藤井寺(203号室)、勤労(?)留年中大学生のフトシ(201号室)という20歳台後半の3人がメイン・キャラになっている(「キャラ」という言葉で十分だ)。で、全6篇中4篇目までが(ちょっと印象とはずれる気がするけれど)言葉で無理やり大雑把に括ってみれば、視点人物の、1人の女性との出会いと別れが描かれている、という感じ(やっぱりちょっと違うか)。「お金」や「貧乏」がちゃんとキーワード(?)になっているのも、とりあえず4篇目までかもしれない。というか、“貧乏住人”というより“貧乏ごっこ住人”ばっかりだよね?(あ、フトシくん以外は)。5、6篇目になると、ザ・ありがちな設定、アパートの取り壊しが決まっていて、3人は今後どうするのか、みたいなことでいわゆる教養小説(成長小説)っぽくもなっている(そう、3人とも20台後半という高年齢なあたりは、設定が今風?)。なんていうか、この小説(あるいは作者)、言葉に対する意識(センス)も低い気がする(しり取り、「白旗/白鳩」、「しらこ/しろこ」など)。そう、幽霊のような貧乏神とか、本の文字を食べる謎の虫とか、そういう非日常的なアイテム(?)の扱いも、なんだかぜんぜん面白くなかったよな…(私は村上春樹とか川上弘美とか小川洋子が好きなんです。…それはともかく)。あと、アパートは1階と2階で8部屋ずつだっけ? 16人くらい全員登場させればいいのにな。16人はちょっと多いか。でも、とりあえず、登場してくる住人が少なすぎだと思う。

2篇目と最後の6篇目がいちおう浪人生の藤井寺くん目線。前者は1人称で「僕」、後者は3人称で「藤井寺」。後者は(2重の意味で?)もう大学受験が終わっているので「浪人生」とは言えなくなっているかもしれないけれど。藤井寺くんは、金沢市出身、親は小さな病院を開いていて、2人の兄は医者になっている。――なんていうか、この作家も設定がぶれる人?(それほどでもないのか)。数字でいえば、藤井寺くんは一度入った大学を卒業間際で辞めて医学部浪人に、2篇目の時点で上京してもう6年、今年26歳だという。あと、<今年二十八歳になるはずの加藤氏、ひとつ下のフトシ氏>という箇所もある(p.47)。フトシ氏は(同じく2篇目の時点で)2浪3留の大学生。――それほどおかしいというわけではないか。中退した大学には実家から通っていたんだっけ?(ちゃんと読み直さないとわからない(涙))。とりあえず、上京して6年ではなく「4年」にすれば不自然ではなくなるかも。数字以外では、最初の1篇(まだ売れていない作家・加藤氏目線の1篇)を読むと、藤井寺くんは、親には受験していると嘘を付いている(要するに受験していない)みたいなことが書かれているけれど、それって、最後の6篇目と矛盾しない?(まぁどうでもいいか、考えるのがめんどくさくなった(涙))。

どうでもいいけれど、藤井寺くん(下の名前は保隆)は何浪だろう? 大学ではたぶん留年していないから、えーと…、4浪くらいかな。具体的には(?)、

 19歳~22歳 大1~大4(中退)
 23歳~26歳 1浪~4浪

(参考)フトシ
 19歳~20歳 1浪~2浪
 21歳~24歳 大1~大4
 25歳~27歳 1留~3留

という感じ。
 

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