徳間文庫、2010。ゆるそうでゆるくないというか、落語家の三題噺ではないけれど、毎度うまく話をまとめてくる感じ(←意味不明?)。※以下いちおうネタバレ注意です。

 <書評家の林雅賀[はやしまさよし]が店長の蒼林堂古書店は、ミステリファンのパラダイス。バツイチの大村龍雄[おおむらたつお]、高校生の柴田五葉[しばたごよう]、小学校教師の茅原[ちはら]しのぶ――いつもの面々が日曜になるとこの店にやってきて、ささやかな謎解きを楽しんでいく。かたわらには珈琲[コーヒー]と猫、至福の十四か月が過ぎたとき……。(略)>(カバー背より。[カッコ]はルビ)

途中から五葉くんの同級生の木梨くん(木梨潤一)も加わる。私にはあいかわらず推理小説の素養というか教養というかが欠けているのだけれど――なので、以下何かおかしなことを言っていたらごめんなさいね(?)、で、えーと、この小説は、ミステリについて語られたり(舞台が古書店だから小説の内容だけでなく「本」としての面についても語られたり)、メンバーの誰かによって持ち込まれたいわゆる“日常の謎”(とはちょっと違う気もするけれど)をみんなで解いたり……といった“ミステリ談義小説”というか。“謎”はたいてい最後には、店主(マスター)の雅さんが解決してしまうので、いわゆる“安楽椅子もの”という感じも。長さでいえば短篇というより掌篇かな、でもいわゆる連作短篇集です(全14篇)。各篇の最後には、見開き1ページの「林雅賀のミステリ案内」も付いている。そう、その「案内」の5(「長編連作とつなぎの作品」)に、

  <全何作という長編連作シリーズは必ず「刊行順に」「全部」読んでいただきたい。>(p.127)

と書かれている。この小説――長篇連作ではなく短篇連作だけれど――を読み終わったあとに、『ミステリ作家の自分でガイド』(本格ミステリ作家クラブ編、原書房、2010)という本を読んでいて、この『蒼林堂~』が“林家の四兄弟シリーズ(林家四部作)”の第3作、ということを知る。――ほんと先に言って欲しいよね(涙)。作者のファンでない人のためにも、本のどこかに書いておいてくれないと(ああ恨み節)。

  1. 『林真紅郎と五つの謎』(光文社→光文社文庫) 四男=真紅郎(しんくろう)
  2. 『六つの手掛り』(双葉社) 三男=茶父(さぶ)
  3. 『蒼林堂古書店へようこそ』(徳間文庫) 二男=雅賀(まさよし)
  4. ?

1, 2を読んでいないので内容については語れないけれど、書名を見るかぎり、数字も色も揃えたいのか揃えたくないのかよくわからないな。収録作の数が5篇、6篇ときて、次が14篇(まぁ7の2倍ではあるか)とか、タイトルに「紅」(赤)と「蒼」(青)はあるのに、第2作のタイトルは“色なし”であるとか(cf. 森博嗣『赤緑黒白』講談社文庫)。それになぜ弟(歳が下)のほうから刊行されているのか、もちょっと謎だ。

関係ないけれど、この本を読んでいて思い出した(p.53あたり)。乾くるみの『イニシエーション・ラブ』(文春文庫)を読んで面白かった人は、同じ作者の『リピート』(同)よりも、森博嗣『そして二人だけになった』(新潮文庫)のほうが面白く読めるのではないか、と個人的に思うのだけれど、どうなのかな? あ、「面白い」といっても様々な面がある…というか、いろいろな面白がり方があるか。どちらも似たような“騙された感”が得られる気がするのだけれど。個人的には。『イニシ~』が××的で、『そして~』が△△的なだけで、どちらも同じ構造……というのは言い過ぎか(というか伏字ではわからないよね(汗))。本の厚みもぜんぜん違うけれど、“恋愛”に関しても対照的な2作かもしれない(森作品のほうはロマンティックな感じ?)。(そういえば、最近、森博嗣もぜんぜん読まなくなっちゃったな…。“Gシリーズ”がまだ最初の2冊しか読めてないや(涙)。)

そう、(これもぜんぜん関係のない話だけれど)ミステリについてぜんぜん知らない人(私はそうです)には、乾くるみが文庫解説を書いている鯨統一郎の小説『ミステリアス学園』(光文社文庫)がお薦めかもしれない。本がどこかに行っちゃっていま確認できないけれど、たしか大学のミステリ・サークルだかミステリ研究会だかに間違って(?)入部した大学生が主人公で、そのサークルのメンバーが1人ずつ殺されていく、みたいな内容だったと思う。わかりやすくて勉強になった記憶が。(ミステリ好きの人には「お前はそんなレベルか!」とか言われちゃうかもしれないけれど、そんなレベルなのでしかたがない(涙)。)

本題というか。「8 鉄道模型の車庫」では、しのぶ先生が小峰元『ディオゲネスは午前三時に笑う』(講談社文庫)を売りに来る。同じ本を2冊買ってしまったという。――自分も少し前にこの作者の本を集めていたことがあるので(1か所に固めて置いてはいないけれど、たぶん揃っていると思う)、この章(というか1篇というか)は、ほんとに“あるある”で、ちょっと前のめりで読んでしまった(汗)。カタカナの偉人名などが入っているタイトルばかり――自分も重複して買っちゃいそうだったので、途中からリストを作って(紙に書いて)持ち歩いていたし。記憶力のいいマスターが思い出せなかった小峰作品の1つも、「そうそう、それがあった!」と妙に納得できてしまった(汗)。でも、持っているだけで小峰小説、まだ合計で6冊くらいしか読んでいないな…。あ、『ディオゲネス~』はたまたま読んであります。私は“列車事故”と言われるよりも、粗筋を言われたほうが思い出すな(しのぶ派です)。主人公から「チン浪」(「チンピラ浪人」の略)とあだ名される登場人物は(記憶で書いてしまうけれど)たしか東大を3ヶ月でやめていて、「浪人(生)」と言えるのかどうか、個人的にはよくわからない(なりゆきで歌手デビューしてしまうんだっけ?)。
 

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